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アートマネージメントって、なぁに?

「アートマネージメント」という言葉を最近、新聞や雑誌でよく目にする。カタカナ英語の響きがカッコよく、なんとなく知的な匂いのする言葉だ。しかし、それは一体どういう意味なのだろう?直訳してみると…

ART:芸術、美術、芸術活動、
MANAGEMENT:1・管理、処理、2・経営者、
           3・手際のよさ、手腕(手くだ)

となる。つまり、音楽・演劇・美術・映画などの芸術活動を、いかに社会と関わりを持たせ、仕事として成立させ、経営してゆくのか、そんな意味になる。今の経済社会の中で、アートが生き残るための、まさに「手腕」と言えるものだ。

そこで、新しくお送りするこのコラムでは、様々なジャンルにおけるアートマネージメントの実態をご紹介しながら、「演劇という娯楽ジャンルをいかにしてビジネスへと発展させてゆくか」、そのヒントを探ってゆきたいと思う。


●“アートマネージメント”の歴史

アートマネージメントについての問題は、実は、紀元前のギリシャ時代からあったという。具体的に生活に役立つ「モノ」を生み出すわけでない芸術家たちが、社会の中で自らの価値を見出し、どうやって生計を立ててゆくか。この問題を、人類は2000年以上もの長い間、いつも考え続けてきたのだ。

時に祭りや市に出演する巡業団となったり、時に芸術家たちで組合を組織し、教会や貴族、大商人などのパトロンから資金援助を得たりと、芸術家たちが生き残るために用いた手腕は、時代や国によって実にさまざまだ。

こうしたアートマネージメントの問題が、世界で本格的に注目されはじめ、大学などで研究されるようになったのは、これまでの文化芸術政策が世界中で大きく転換しはじめた1970年代以降のこと。社会のシステムが複雑になってゆく中で、アートを維持・存続させるには、もはや学術的な後ろ盾を得た「経営戦略」がどうしても必要になったのだ。

そして、こうした学術的な取り組みが進められたことで、アートマネージメントの持つ意味合いが、単なるアーティストたちの経済問題から、「芸術文化そのものを、いかにパブリックなものとして社会に広めてゆくか」、そんなマクロな視点で考えるものへと変わっていった。

つまり、芸術を創造する人と、鑑賞する人との間に入り、その感動を伝えてゆく、いわば芸術と社会の「パイプ役」として認識されていったのだ。


●日本での“アートマネージメント”

日本でアートマネージメントが注目されるようになったのは、1990年代に入ってから。1994年に昭和音楽大学が、全国に先駆けて「音楽芸術運営学科」に“アートマネージメントコース”を開設したのを皮切りに、全国各地の大学で、アートマネージメントの専門学科、専門学部が新設された。今では、全国46の大学、大学院でアートマネージメント教育が行なわれている。

アートマネージメントへの関心は教育現場だけではない。文化行政においても、年々関心が高まっている。

現在、日本全国に約3000もの公共の劇場・ホールがある。これらの建設に、国は70兆円もの予算をつぎ込んだ。そうして生まれた劇場・ホール、これらをいかに運営し、地域社会に芸術文化を広めてゆくか。それが今、大きな課題となっている。

そして、その課題をクリアするために、芸術運営のスペシャリストとして、アートマネージメントの専門的な知識を学んだ優れた人材が求められているのだ。


●演劇業界と“アートマネージメント”

では、こうした社会の流れの中、もう一度、演劇の世界に目を向けてみよう。

演劇の世界は、プロとアマの境界線がとても曖昧だ。そして、自らの作品をより多くの人に見てもらうためのプロデュース業務や、演劇だけで生計を立てるための経営的な戦略といった、アートマネージメント的な発想が、業界全体に乏しい。

また、演劇という娯楽ジャンル自体が、テレビの普及でその市民権を完全に失い、いわゆる「マニア」と呼ばれる固定客により支えられた市場となった。そのため、テレビや映画などの他のジャンルと比べて、明らかに閉鎖的だといえる。

そうした中、演劇という娯楽ジャンルを、より社会に開かれた広いマーケットとし、それを今以上に広がりのあるビジネスフィールドへと昇華させることが、今、必要なのではないだろうか?それは、これからの演劇文化を育ててゆく意味でも大変重要なことである。

芸術文化を社会にいかに根付かせ、活性化させるか?そんな大きな課題のもと、社会全体が“アートマネージメント”というひとつのキーワードを手がかりに大きく踏み出そうとしている。今後、この連載を通して、アートマネジメントを理論・実践の両面から、できる限り解りやすく考察してゆきたい。



(文・G)2002/11/18