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実践・4 〜マーケティング〜
継続的な芸術活動を行なうためには欠かせないアートマネジメント。 そこには次の3つのテーマがあります。 1) ヒューマン・リソース・マネジメント(人材管理・人材活用) 2) アカウンティング(会計) 3) マーケティング 今回は最後の「マーケティング」について考えていきましょう。 ■「マーケティング」って何? マーケティングという言葉はよく耳にしますが、「具体的な意味は?」と聞かれると、わからないという方も多いのではないでしょうか。 日本マーケティング協会では、マーケティングを以下のように定義しています。 「企業および他の組織がグローバルな視点に立ち、顧客との相互理解を得ながら、公正な競争を通じて行なう市場創造のための総合的活動である」 でも、これだけではちょっと難しいですよね。 ではここで、「セールス」と「マーケティング」の違いを考えてみましょうか。 「セールス」とは、「売りつける」ということ。売り手であるセールスマンが、消費者をつかまえて「買って!買って!」と商品をアピールするようなイメージです。 極端な例では、訪問販売や押し売りもセールスの1つ。突然、玄関先にやってきて、「買うまで帰らないぞ」と、モノを売りつける。しかし、こんな方法では、仮に1度は買ったとしても、もう2度と買うまいということになります。そこにあるのは、相手の都合や購入動機などを考慮せずに「自分の都合」でものを売っているのです。 対する、「マーケティング」とは、相手がどんなものを欲しがっているのか?どんな商品を作ればニーズに合うのか?など、消費者の要望をリサーチして、売り手と買い手がお互いに理解しながら、商品を販売する行為です。 一方的なセールスと違うのは、顧客満足(最近ではCSと呼ばれます)を得ることが重要であり、こうしてリピーターを獲得したり、新しい市場を開拓したりするのです。 では、マーケティングを戦略的に行おうとするときに、どんなことをチェックすればよいのでしょうか?参考になるのは、アメリカの政治家であり、学者でもあったマッカーシーのマーケティング戦略4本柱です。 1、商品・製品戦略(Product) その商品の機能や品質、デザインなど、消費者が満足する商品作り 2、価格戦略(Price) 市場動向や需要と供給に応じた適切な価格設定 3、流通チャネル戦略(Place) 販売方法(系列や代理店など・最近はインターネットも)を考慮した流通経路 4、プロモーション戦略(Promotion) 広告や宣伝などを効果的に行なう商品提供 これら、「マッカーシーの4P」と呼ばれる項目は、今や、マーケティングを考える際の“基本”として、世界中で定着しています。 4つの項目は、それぞれが相互に関係しています。そのため、マーケティング戦略行うためには、それぞれの項目をミックスした形で考える必要があります。こうして、いくつかの戦略を複合的に用いて顧客満足を得ていくことを「マーケティングミックス」といいます。 例えば、商品の色やカタチが変われば、当然、価格も変わります。販売ターゲットとなる年齢層が変われば、プロモーション方法だって変える必要があるのです。 しかしながら、アートマネジメントの扱う「商品」とは、芸術家の創り出す「芸術作品」ですので、消費者(観客)が好む作品ばかり創ることはできないでしょう。一概に「顧客満足」を求めるマーケティングをすればいいとはいえないのが、アートマネジメントにおけるマーケティングの難しいところです。 ■顧客分析から始める 多くの劇団では、公演の際にアンケートを回収しています。そのアンケートは、一体、何のために行われているのでしょうか? 観客は自由に書くスペースを与えられ、その作品を見てどうだったかを書くというアンケートが多く見られます。このアンケートは一見、マーケティングの4Pにある「商品戦略」に関係しそうですが、実際のところ、それらの意見を全て取り入れながら作品を創ることは困難を極めます。 マーケティング的に重要なのは、公演を見た観客の感想はもちろん、それ以上に「その作品を観に来てくれるお客さんはどのような人たちなのか」を調査するためのアンケートであると言えるでしょう。 例えば、演劇集団キャラメルボックスでは、公演の内容がファンタジーものであったことから、ファンタジー系のイラストレーション雑誌「MOE」(白泉社)に公演の広告を掲載しました。これは、「劇団の観客層と、雑誌の購買者層が一致するのではないか?」という仮説に基づいたマーケティング活動です。 もちろん、こうした仮説が思いつきではなく、きちんとした根拠がなければ意味を持ちません。キャラメルボックスの例は、劇団側が観客へのアンケートなどを行いながら、劇団の観客層を分析した結果のマーケティング活動なのです。 ■販売方法を考える キャラメルボックスのマーケティング術のユニークさと合理性を語る事例はまだあります。例えばそれは、チケット販売方法です。 多くの劇団の場合、チケットの販売には、各プレイガイドに販売を委託します。こうしてプロモーションしたり販売ルートを増やし、観客数の増加につなげようとします。 キャラメルボックスのような人気劇団になればなおさらのこと。プレイガイドに委託することで、制作の作業を軽減し、人件費の節約にもつながるはずです。 ところが、キャラメルボックスでは、劇団が直接チケットを販売する方法を中心に据えています。ここから、キャラメルボックスがどれだけマーケティングを重要視しているかがうかがえます。 もし、観客のほとんどがプレイガイドを利用する場合、購買者の年齢や性別、住所などがわかりづらくなります。すなわち、“顧客の顔”が見えなくなるのです。 けれども、劇団を通して買えば、少なくともその人がどこに住んでいるのか、何名で来ようとしているのかがわかります。また、過去のデータを保存しておけば、どのくらいの頻度で観に来ているのかもわかりますし、個別のダイレクトメールも出すこともできます。 また、作品によって、高校生や大学生などの若い人に観てもらいたいと思ったときに、座席の場所に関わらず低価格なチケットを設定し、各々に告知することだって可能です。 劇団側のチケット管理もかなりの労力だと思いますが、いくつかの値段設定をすることで需要の幅を広げ、劇場に足を運んでくれる観客の満足へと繋がり、リピーターの増加へと繋がってゆくのです。 今後得られるメリットとデメリットを考え、プレイガイドに委託料を支払い続ける金額を考えると、キャラメルボックスのように、多額の資金を投入してチケッティングサービスを開発することも、有効なマーケティング戦略の一つと言えるのです。 ■マーケティングは身近な視点から 演劇活動は芸術活動のひとつではありますが、作品を上演することで、観客からいくらかのお金を得るのならば、それはすでにひとつビジネスであるといえます。仮に、上演する舞台のクオリティがいくら高くても、他の要因で不快な思いをした人は、もう2度と劇場に足を運んではくれません。 マーケティングに関わらず、サービス業として最低限の「顧客満足」を考え、1つずつ実行していくことが、結果的に観客動員へ繋がるのです。 まず、「マーケティングが必要だ!」と難しく考えないで、どうやったらお客さんにとって利用しやすいサービスか、という視点を持つことから始めてみてはいかがでしょうか? |
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(文・磯崎 美奈)2003/8/18
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