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舞台を気持ち良く観るために vol.1 〜携帯電話〜
アートマネジメントの仕事のひとつとして、誰もがアートを楽しめる環境を整えることがあります。もちろん、演劇現場でもよりよい環境を作るために工夫・努力をしなければいけません。 前回(No.86 9/15発行)の当コラムで、ある美術展で起こった悲しい出来事についてお話しました。一方の「劇場」でも、同じような不幸な出来事に結びつくいくつかの問題が存在しています。例えば、携帯電話の着信音、観客同士のおしゃべり、客席内での飲食、または開演中の遅れ客の案内や、小さい子供の動きが気になった人もいるでしょう。それらの問題の多くは、公演の主催者側のちょっとした対応で減少してゆくものなのです。 今回から、劇場内で起こりうるトラブルと、その解決策について考えてゆきましょう。 ■携帯電話のマナーは世界全体の問題?! 近年、公演中のマナーと言ったとき、誰もが何よりも先に思いつくのは携帯電話の着信音でしょうか。 劇場では1つの物語のためにあらゆる計算がなされ、物語にどっぷりと浸れるような空間を、美術、音響、照明、役者、全てを使って演出しています。また、劇場にいらっしゃる方々は皆、その空間を誰に邪魔されることなく楽しみたいと思い、時間とお金を費やしてその場に集まってきているわけです。 そんな時に、もし物語とは関係ない音が鳴り響けば、その場に集まった何十人、何百人という人々は、無理矢理に現実に引きずり戻されるような思いをしますし、それまで作り上げてきた劇的空間も一気に壊されてしまいます。 読者の皆さんの中にも、このような不快な思いをしたことがあるという方がほとんどのはず。劇場での携帯電話はそれほど深刻で、誰もが困っている問題なのです。 ちなみに、これは日本だけの問題ではありません。 香港では、公共の場での携帯電話の使用を規制しようという動きがあったり、ニューヨークで、2002年12月に、公共イベント会場で携帯電話の使用を禁止する条例案が可決されたりと、世界的規模での問題となっています。 公演を行う劇団側(主催者)だけでなく、公立の会館やホールにおいても館内で携帯電話を鳴らさないのために携帯電話電波遮断装置を導入する例も見られ、劇場を管理・運営する側にも問題意識が深まってきています。 そこで私は、全国にある主要な公立文化会館(公共ホール)のいくつかに、「公演のマナーについての問題意識」について電話で質問をしました。
これらの回答から、公立文化施設としては、問題を一応把握していることがわかります。しかし、実際に問題が起こったとしても、事前の注意だけしかしていない、あるいは、できないようです。 国内のいくつかの公立文化会館では、携帯電話の電波を遮断する装置を導入しているところもありますが、実際のところ、多くの会館側の問題意識は「薄い」という印象で、これでは「劇場に入ったら携帯の電源を切る」というマナーは浸透しにくいのではないかと思われます。 ■主催側の対応策は? 残念ながら、現状では「主催者側が開演前に注意を呼びかける」ということしか、防止策はないでしょう。この呼びかけ(注意)を効率よく行うことで、現状は少しずつ変わってゆくはずです。 例えば、演劇集団キャラメルボックスでは、公演が始まる前の「携帯電話チェックタイム」によって、かなりの防止に繋がっているようです。 同劇団では、公演毎にプロのミュージシャンに依頼して「携帯電話チェックタイムのテーマ」をつくり、その音楽を聞きながら全員で電源を切るのです。ただ、「電源をお切り下さい」と堅苦しく言われるのではなく、 「携帯電話はやーめてー♪」という、思わず笑ってしまうような歌詞で楽しく、「電源を切ろう」、または、「切ったかどうかを確認しよう」と思えるわけです。 キャラメルボックスでは、この方法で公演中の携帯電話の着信音がなくなったそうです。 しかし、演出あるいは作品上、そういった事前のパフォーマンスを行いたくない劇団もあるでしょう。そういった場合は、繰り返しアナウンスをしたり、通路を歩きながら、観客に直接携帯電話の電源を切って頂けるように、伝えてゆくことを徹底してゆく必要があります。また、会場に張り紙をしたり、配布物に大きく、分かりやすく記載したりする方法もあります。 万が一、公演最中に携帯電話の音が鳴り響いてしまった場合、そのお客様に直接注意を促す、という強引な方法もあるかもしれませんが、すでにその時点で劇場の空気は壊れ、会場にいあわせた全ての人に対して、嫌悪感を抱かせてしまわないとも限りません。 まずは、劇場に一歩入った時点で「携帯電話の電源は切る」というマナーを知っていただき、「何故携帯電話を切らなければいけないのか」をきちんとご理解いただくことから始めてゆくことが大切なのです。 ■なにが現場で起こっているか さて、前回のコラムでもお伝えしたように、様々な問題について考える前に、その問題をどれだけ主催者側が理解しているか、ということが問題であると言えます。 「公演をやる」ことだけでいっぱいいっぱいになっていませんか。公演の前にあらゆるリスクを挙げていますか。そして、それを書面に残し、次に繋げていますか。 公演中に起こり得るリスクを文字として表し、それを全体で把握し、対処法を考えて、実行してゆくことが何よりも大切なのです。そして、その結果を次の対応へと繋げてゆく。たったこれだけをする、しないで、公演が「改善」されるか否かが決まります。さらに言えば、観客が増えるか減るかが決まります。それを念頭に行動してゆけば、必ずマナーは改善されるのです。 参考URL WIRED NEWS http://www.hotwired.co.jp/news/news/culture/story/20030214205.html 「嫌われ者のすすめ」 http://www.rosetta.jp/kiraware/0206.html |
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(文・磯崎 美奈)2003/10/20
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