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<最終回> 演劇人の意識を育てよう

1年半にわたり、演劇をビジネスとして成立させるために、アートマネジメントという側面から、劇団運営について考えてきました。

マーケティング、ヒューマンリソースマネジメント、アカウンティングといった劇団運営の考え方から、実際に助成金を獲得するために必要なポイント、お客様を増やすための工夫について等々、劇団の現状を考え、変えてゆかなければいけないポイントは多々あります。

しかし、「アーツマネジメント概論」というものがあるにしても、それを現場に話したところですぐに実践に移すことは非常に困難です。劇団単体がマネジメントを実践しようとする場合は、おおむね戦略的・戦術的に語られますが、それをイメージどおりに行なうためには、まず環境を整えなければなりません。これからアートマネジメントを本格的に進めようと思う人にとっては、日本の芸術文化環境を変えようという気概が求められるでしょう。

アートマネジメントにおける課題や真実は、教科書の中ではなく、現場にあります。その中で、プロデューサーや制作といった立場から次々と課題を見つけて、具体的な対策を研究し、次へとつなげてゆく必要があります。

しかし、現場にいる研究者は少なく、たとえ現場に立ったとしても、人材の不足、仕事量の多さから、課題をみつけて改善してゆくだけの時間的・精神的余裕が持てないというのが現状なのです。

また、実際に演劇制作の現場にいる人々の中には、「アートマネジメント」という考え方に対しての知識や意識があまりにも希薄で、変化をしてゆくことに対しても消極的な人が少なくありません。

「演劇をビジネスにしよう」というと、怪訝な顔をされることがしばしばあります。それは、「ビジネス=お金儲け」という認識が強く、表現活動・創造活動とリンクしてゆかないからです。

けれども、「ビジネス」とは単なる金儲けではなく、生業として成立させることであり、そのためには、社会に貢献し、人々の生活に役に立つものでなければなりません。

また、表現活動や創造活動というものは、当然ながら観てくれる人がいて、その人々に何らかの影響を与えるものでなければ意味はありません。

「演劇」という芸術が社会に貢献するためには何をすればいいのかを考え、自分たちの集団理念を持ち、外に開かれた世界にしてゆこうという意識を持つこと。社会に生きる一員としての、社会的責任を負うこと……。
一般企業では当たり前の感覚が、演劇業界では非常に希薄なのです。

「好きだからやってる」「30歳になっても売れなかったらやめる」

そううそぶく若手演劇人は少なくありません。しかし、それではいくらアートマネジメントを学んでも、実践することは不可能でしょう。

演劇という世界に飛び込んでくる時には、「好きだから」という気持ちだけでも十分ですが、演劇をビジネスとしてとらえ、継続した活動を続けてゆこうとした場合、自らが社会の一員であることを意識し、演劇業界の環境を整えながら、アートマネジメントをゼロから実践してゆくことこそが重要です。

なぜなら、現代ニッポンには、アートマネジメントが確立していないのですから。そして、演劇をビジネスとして成立させることが、困難な状況なのですから。それを変えてゆかねば、私たちの生きる道もないのです。

演劇にかかわる全ての人がアートマネジメントを実践し、互いに協力しながら、新しい文化芸術環境を作り上げたい。
そう願っています。



(文・O)2003/5/17