|
|
|
演劇で叫ぼう、平和への決意!
「演劇は、戦争に反対します」――― 2月28日、東京・新宿の紀伊國屋ホールでは700人の演劇人・演劇愛好者がロビーにまであふれ、会場に入れずあきらめて帰る人たちもあったほどの集会が開かれました。 永井愛さんや渡辺えり子さんらが会を進め、斎藤憐、三田和代、巻上公一のみなさんなど、多くの舞台関係者が、朗読・歌・演奏・講演(井上ひさし)などによって「イラク攻撃と有事法制に反対する」意思を明確に表したのです。 これは、ニューヨークの二人の女性から提案された3月3日の行動「平和のための世界規模の演劇活動」のよびかけに触発されたこともあったのでしょうか、「遅れをとった!」(永井愛)日本の演劇人が集会を「今日ようやく」開くにいたったというわけです。 日本では今やまるで戦争中かと思えるほど、テレビやラジオのニュースが毎日朝から繰り返しイラクに関わることを報道していますが、見方を変えればイラクに対する「アメリカ政府問題」なのだと思います。 そのアメリカの市民からは反戦行動のよびかけがなされ、1月18日の「ワールド・ピース・ナウ2003」には多くの国で行動が起きたようです。日本でも各地で集 会やデモなどに大勢の市民が参加して、反戦の意思表示を行いました。続いて、2月15日には世界60ヵ国で1000万人が参加して、戦争をなんとしても避けようという強い意思を示したことが、ようやく大きく報道されました。 演劇関係者も、日本では2月6日「東京新聞」夕刊に 479人が連名で、「戦争を『しない国』から『する国』になることを私たちは拒否します」という意見広告を発表しました。 そしてアメリカから、3月3日の行動のよびかけ。それはこの日に世界各地でいっせいに、アリストファネスの『女の平和』を朗読上演しようというものです。 この戯曲は古代ギリシャの諷刺喜劇として知られていますが、アテネとスパルタの覇権争いにうつつを抜かす男たちに、双方の女たちが連携して「セックス・ストライキ」を敢行し、戦争をやめさせようとするというストーリーです。 この戯曲の朗読上演をとおして、「イラク攻撃は認められない」という国際世論をつくりだそうというもので、「in a city near you(あなたの住むまちで)」、というよびかけです。すでに33ヵ国の約400のグループが応えているようです。 日本では、多くの劇団がその活動理念のなかに平和の追求をおいていると思います。かつてアジア太平洋戦争下に担わされた役回りへの痛切な思いもあるでしょうし、「憎しみも暴力も戦争も芝居で表現できます/現実にするのは悲しく愚かなことです」(俳優・平田満さんの2月28日へのコメント)という根本的な考えもあるのでしょう。そして、実際の公演にそのような主旨の舞台がしばしば見られます。 なかには、毎年夏の恒例のレパートリーとされている舞台もあります(劇団民藝のドラマティック・リーディング『千鳥ヶ淵へ行きましたか』=石川逸子詩・渾大防一枝演出、広島の女上演委員会の創作劇=村井志摩子作・演出など)。 演劇制作体「地人会」による朗読劇『この子たちの夏』(木村光一構成・演出)は、1985年の初演以来全国各地で迎えられ(全都道府県で合計622回公演)、また各地の市民グループによる上演は1990年に始まり、既に2147回(2002年5月現在)を数え、引きも切らず続いていることはよく知られています。さらに、最近ではフランス、オランダ、アメリカなど、海外でも翻訳されて上演されているようです。 そういう演劇人の行動ではないのですが、たいへんユニークなのは「基地を劇で取り囲もう!」という、沖縄県の小学校教員・宮城淳さんが1996年からよびかけ、実践している活動です。 毎年6月23日の「慰霊の日」にあわせ、沖縄戦の惨禍を想起し、平和への決意を演劇によって示すよう、あちこちの学校で劇を上演しようというのです。宮城さんはこれまで20年もの間、子どもたちと平和を願って演劇活動を続けています。時には教職員を巻き込み、あるいは父母や地域住民とともに。 なぜ劇か―――? ある年、「学芸会のために沖縄戦の劇を作りました。友達の死ぬ場面で、照れてうまく演じきれなかった子供たちが、学芸会の本番で、自分たちの劇を見て泣いているおじいさんやおばあさんを見て、変わりました。わたしは、そういう形の伝承があるのだと思いました。」 そして、「世の中が戦争戦争と騒ぎ立て、彼の心が戦争の方に流されそうになったとき、ちょっと引っかかって、おや待てよ、と思ってくれればいいと思うのです。玉結びが、ぐっと引っかかって糸がするすると抜けてしまうのを防ぐように。」と演劇による平和教育玉結び論を展開しています。 宮城さんはこの間、勤務する学校で自作の脚本を上演していますが、このよびかけに応えて。県内のいくつかの学校で上演されています。(最初の1996年には8校が上演、『演劇と教育』1997年1月号に紹介されています。) また、これも市民による小さな動きですが、毎年12月にさいたま市(大宮)で開かれている「『戦後』を無限に〜朗読のつどい〜」という催しがあります。 1995年、「日本の戦後50年」が記念譜として過ぎ去ってしまいそうな雰囲気に違和感を抱き、世界中に「戦後」をつくり広げていこうという志から始められたものです。戦争体験のある高齢者から小学生まで、また在日コリアンやアラブ人の方も参加して、戦争や平和をテーマにした小説や随筆、自作の詩などを朗読しています。 戦地に赴く若者、送り出す家族の声が365日聞こえた時代がかつてあった!ならば今、反戦の意思を示し平和を求める声を町や村から絶え間なくあげていこう、というのです。 今度の3月3日のよびかけを機に、自分がやりたいと思うこと自分たちでやってみたいと思っていることを、いつでも自分の住む町や村でやってみてはいかがでしょう? “夏が来れば思い出す、年中行事”にせずに――。 ●参考ホームページ 平和のための世界規模の演劇活動 >>>http://www.pecosdesign.com/lys/index.html 劇で伝える沖縄戦>>>http://www.ryukyu.ne.jp/~jun/ |
|||||
|
(文・日本演劇教育連盟・市橋久生)2003/3/3
|