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広げよう!アートにふれる、いろんな“場”
暗く寒い夜空に飛行機が飛んで来ます。大使館の上空です。3月末とはいえ、外は冷え冷えとしています。 ―――時も時です。イラクの人たちはどんな気持ちで夜を迎えるのだろうかと思いながら開演を待ちます。実はその下で移動野外劇が演じられるのです。桜の花がライトアップされて美しく映える庭、アスファルトの冷え込んだ中庭……。東京の在日オーストラリア大使館です。 大使館で劇。 最近、演劇や音楽をはじめさまざまな舞台芸術が、所定の劇場やホールのほかに、いろいろな施設・建物で演じられる場合が、全国各地でずいぶん多くなってきているように見えます。 神社、寺院、教会、病院、社会福祉施設、銭湯、蔵、倉庫、工場、空き倉庫や空き工場、会社のロビー、喫茶店、画廊、美術館、博物館、図書館、資料館、公民館、児童館、学校の体育館や教室・空き教室、官公庁舎のロビー、議会の議場、駅舎、民家、廃校、城跡や森林等の野外、そのほか…。 町のなかの至るところが、劇場や音楽ホールのようです。野外劇や野外コンサートもありますし、薪能は定番の人気です。話題や評判をよぶ公演がいくつもあります。一昨年にはスウェーデン大使館を会場にしての演劇祭も開催されました。 このような「劇場」の広がりは、市民にとっては舞台芸術に気軽にふれ親しむ機会が広がるということです。上演の場を求めている実演家にはその機会の広がりとともに新しい創造(実験的な試みも含め)の場になっているとも言えるのではないかと思います。 子どもたちが遊んだり学んだり、いろいろ体験できる文化施設もそのひとつです。「大阪市立こども文化センター」とか、東京「こどもの城」、「ぐんまこどもの国児童会館」など、大型の児童厚生施設が全国にあります。 なかでも、「兵庫県立こどもの館」で行われている演劇活動は全国から注目されています。 毎週土日曜や休日などに、劇や人形劇のプロの舞台公演が行われたり、アマチュアのそれらや紙芝居の上演などが行われているのですが、注目されるのは、毎年夏に、演出家の如月小春さんと劇団ノイズのみなさんが指導された中学生による「野外移動劇」です。子どもたちは、池や築山のある広い庭を場面によって移動しながら劇を進めます。観客ももちろんいっしょです。 如月さんの卓抜な指導力によって、県内各地から集まってきた中学生たちは、ひと夏の充実した演劇体験をするのですが、その過程は『八月のこどもたち』(晩成書房刊)によって多くの人たちの知るところとなりました。子どもたちが演劇活動の中でどのような変化を見せるのか、優れた教育論の実践編を見るような思いがします。 如月さんが急逝され、劇団がなくなった今も、初めからの指導メンバーである柏木陽さんらが姫路市を訪れてこの活動は続いています。 非日常的な“ハレの営み”としての舞台芸術ですが、劇場やホールには日常的な感覚で出入りします。しかし思わぬ場所での上演と鑑賞は、その非日常性をいっそう楽しめる刺激的な時空になります。 このような、演劇、ダンス、音楽、落語や語りなどの話芸、農村歌舞伎や地芝居、大道芸等々が演じられるさまざまな「場」に注目したいと思います。 すでに、特定の場で定期的に開かれている催しもあれば、1回きりのイベントもあり、また、プロの実演家が公演する催しもあれば、アマチュアの人たちが出演する催しもあります。それらのどれもが、その地域の文化的雰囲気や芸術環境を創る貴重な要素となるのだと思います。 文化芸術振興基本法が施行され、学校が週休2日制になった現在、地域における芸術・文化活動の推進に関心をもつさまざまな立場の人たちが、具体的な活動の場や方法を探し求めることが増えていくでしょう。 反面、いま大阪では劇場閉鎖が相次ぐという、たいへん残念なニュースもあります。扇町ミュージアムスクエア(OMS)が昨年末に閉館し、近鉄劇場・近鉄小劇場が来年早々に閉じるというのです。 こういう事態にめげず、逆に、実演家の創造意欲を刺激するような、市民の鑑賞機会が広がるような、劇場やホールはもちろん、さまざまな「場」が増えることを願っています。 |
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(文・日本演劇教育連盟・市橋久生)2003/4/7
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