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けいこ場のあふれる街へ
■けいこ場のある喜び! 埼玉県所沢市で活動するアマチュアの「ところざわ太陽劇団」は活動を始めて15年、市内の公民館を借りて活動していましたが、先頃、「スタヂオ」をもつことになりました。念願の自前のけいこ場です。 新しいメンバーも加わり、活動がリフレッシュされて、劇団のけいこや小公演のほかにいろいろなワークショップを企画して、地域住民の演劇体験の場にもしようとしています。 自前のけいこ場、と言っても古い民家を借りたものです。西武池袋線西所沢駅の近くですが、今から約80年前、大正年間の終わり頃に建てられたもので、しかも街中の建物ですから、演劇の「スタヂオ」として実際に使えるようにするためには、難関はいろいろあったようです。 3部屋と風呂・トイレのあった22.5坪を、1フロアに改装することは当然でしたが、何よりも気を遣うのは近隣への音のことです。防音・防火対策として、石膏ボードを床・壁・天井に張り巡らせました。それも2〜5枚の厚さにです。家主さんの理解があってのことですが、ここまでの経費はもちろん自前。 それでも長年の願望が実現したのですから、ここで何ができるか、あれをやろうこれもやろうと、構想が広がります。演劇教育に関心を抱く学校教員たちや、演劇によって自分自身を表現しようとする若者たちの、体験の場・つながりの場になるように考えられています。 うれしいことに、ご近所の団子屋のおやじさんが「お祝いに」と言って、ワークショップの参加者みんなにお団子をふるまってくれたり、芝居を見たこともない大家さんのおばさんが劇を観に来てくれたりと、地域に溶け込もうとする劇団の夢のひとつが、はや現実のものとなって喜びが倍増しています。 ■もっと、もっと、けいこ場を! さて、この「ところざわ太陽劇団」に限らず、演劇人たちの大きな悩みのひとつはけいこ場を確保することでしょう。けいこ場をそのつど探し、場所を毎日変えて活動するなどという劇団もいっぱいあるようです。 公共施設は借りるためのハードルが実にいろいろあります。予約申込みが受付けの日に運よくできるかどうかに始まり、けいこに必要な日時に押し詰まってすぐに借りられるなどということはまずないでしょう。 せっかく借りられても、翌日まで道具は置かしてもらえないとか、駐車場にはホール利用者以外のトラックは止まれないとか…。公民館などは演劇と言っただけでアウトと言われます。 では、民間の施設は…?それこそ自前のものをもたないかぎり、ほとんどないに等しいでしょう。 ところで、去る3月末、横浜で「けいこ場の現状と展望」をめぐるシンポジウムが開かれました。 演劇活動のさかんな横浜で、いっそう充実した創造をめざすには、日常活動の場・けいこ場の確保がなんとしても必要な課題であり、その課題を解決するために各地の実例を聞いてみようという、きわめて今日的なテーマのシンポジウムでした。 次の4つの報告は、いずれも自治体が設置した公共のけいこ場です。 ●北九州市立大手町練習場 昨年10回目を迎えた「北九州演劇祭」のまち・北九州市では、1995年7月に市立大手町練習場が開設された。練習室が大中小あわせて11部屋、ほかに会議室3、録音録画室がある。 ●大阪市立芸術創造館 2000年1月にオープンしたここは、演劇練習室が大中小あわせて5部屋、音楽練習室が同じく5部屋、ゲネプロやリハーサルに加えて公演もできる大練習室(椅子席180可能)がある。 ●名古屋市演劇練習館「アクテノン」 1995年12月に開館したこの施設は、実は生まれ変わりの建物。元々は、戦前1937年に建てられた市水道局の、高さ6m・直径33mの配水塔。1965年に図書館として再利用。そして今の姿に変わった。練習室の大中小あわせて8部屋と、リハーサル室、和室があり、野外劇場も付いている。 ●せんだい演劇工房10-BOX(テンボックス) 昨年6月にオープン。練習室6つと作業場工房、それに事務室まで含めてちょうど10部屋から命名。深夜は利用者の自主管理に任され融通がきいている。 4つの事例はいずれも大都市における場合です。演劇人や音楽愛好者の、行政への粘り強い運動が実ったものです。小さな市町村では恵まれない環境にありますが、これからの市民社会のありかたを考えると、けいこ場や練習場は本当に必要な施設です。 廃校を活用している例もあります。学校の空き教室なども利用できないか、いろいろ探ってみる方法はありそうです。 ローマは一日にして成らず。素晴らしい舞台芸術は全て、けいこ場での地道な作業から生まれるのですから…。 |
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(文・日本演劇教育連盟・市橋久生)2003/5/5
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