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ごまかしのない議論や評論を!

のっけから手前味噌の話で恐縮ですが、日本演劇教育連盟が編集している月刊誌『演劇と教育』が、この6月号で通算555号になりました。創刊は1954年5月号ですから、これでちょうど50年目に入ったということになります。

初めは『学校劇』という誌名でしたが、1960年1月号から、現在の『演劇と教育』に変っています。また、この間の一時、出版社からの発行ができなくなり、自主発行の止むなきに至った期間もありました。1978年4月号から晩成書房発行ということになったのです。このことだけでも、演劇教育の歴史の一面が透けて見えるようなものですが、今日の本題はそれではありません。  

このメールマガジンのこのコーナーは、演劇文化を社会に広く醸成するために、子どもの生活のなかに演劇環境を創り出そうというねらいですが、そのためにも「批評や評論活動が必要ではないか」というお話をしたいのです。


●どこにあるの?児童・青少年演劇のジャーナル

今日の社会では、何事にも批評や評論があって当然だと思うのですが、児童・青少年演劇や演劇教育をめぐる批評や評論は、それほど活発に展開されているとは言い難いのが現状です。いや、この状態はこれまでずうっとと言ってもいいかもしれません。

そのためか、だからこそかはわかりませんが、この世界のジャーナルもなかなか見つかりません。いろいろな団体や組織が発行している雑誌や通信紙の類はもちろんあります。しかし大半は組織内にとどまっていて、講読を希望する場合はその団体や組織に入ることが求められます。広く市販され、社会に発信するようなものにはなっていません。

たとえば、
・ 『児童演劇』(月刊紙) 日本児童演劇協会
・ 『季刊げき』(季刊誌) 全国児童・青少年演劇協議会
・ 『児演協』(不定期紙) 日本児童・青少年演劇劇団協同組合
・ 『アシテジ』(季刊紙) 国際児童青少年演劇協会日本センター
・ 『演劇創造』(季刊紙) 全国高等学校演劇協議会

などがあります。このほか、地域限定版のものもあります。関西で公演された劇の批評を精力的に行っている『劇場通い』=今泉おさむ&神沢和明編集の隔月刊紙=は、児童・青少年演劇についても採り上げ、他の舞台と同等に批評しています。  

また、一般の演劇雑誌『テアトロ』『悲劇喜劇』『演劇ぶっく』などにも、児童・青少年演劇や演劇教育に関わる記事は、ほとんど見当たらないと言っていいでしょう。

井上ひさし・清水邦夫・別役実+日本劇作家協会責任編集『季刊せりふの時代』(小学館)が、2001年夏号(VOL.20)において、《「現代演劇」と「夏休みこども劇場」》と題する特集をしていたのが目にとまりました。

佐藤信「面白さを見つけていく、こどもは最高の観客」や鈴木裕美「未来の演劇人を生むかもしれない責任」など、また、毬谷友子や尾藤イサオら俳優の「こどもの頃の演劇体験」が目を惹きました。

市販の雑誌ではありませんが、日本劇団協議会『join』(季刊誌)が最新号の?40で《「教育と演劇」のパートナーシップの可能性・1》と題する「アンケート報告」を掲載しています。

44劇団からの回答をまとめた資料的なもので、鑑賞教室としての公演のほか学芸会や文化祭に向けての指導、ワークショップなどを、2001年度にどれだけ行ったかのデータがならべられています。

演劇教育は教育活動です。では、教育雑誌や子育てに関する雑誌においてはどうか?と見てみても、やはりあまり採り上げられてはいません。

教育系では『演劇と教育』以外では見ることはほとんどありませんが、最近の動きに沿ってか、記事になることがときたまあるようです。?ルック『子どもと教育』(月刊誌)の最新6月号には、劇作家&演出家・古城十忍さんが中学校で行った「演劇ワークショップ」について寄稿しています。

子ども劇場おやこ劇場全国センター『るーぷる』(季刊誌)は、子ども一般に話題を広げた分、演劇そのものについての記事は減っています。クレヨンハウス『くーよん』(月刊誌)の定例記事「おすすめSTAGE」は、俳優・伊藤巴子さんが執筆しています。

概観すると以上のような現状です。


●ごまかしのない議論や評論を!

そもそも演劇教育が学校教育の中に位置づけられていません。また、劇団の公演について言えば、ややもすると都合よく「子ども」を持ち出し、劇が批評や評論の対象になることを避ける向きが感じられます。

「そう言うけど子どもはおもしろがっていた」とか、「子どもがわかりやすいように創った」とか……と。そのおもしろがりようやわかりやすさをこそ、演劇と教育の視点から論じたらよいと思うのですが。

演劇が教育のなかに正当に位置づけられるためには、教育関係者も演劇人も率直に議論することが不可欠でしょう。活発な論議、批評や評論を期待しています。ただし、感情むき出しの言い合いは決してしませんように!



(文・日本演劇教育連盟・市橋久生)2003/6/2