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演劇教育の指導者を!

これからの社会において、学校の内であれ外であれ演劇教育を進めようとするには、指導者(学校教員など)をどうするのか、どう育てるのかが具体的な課題になります。

この課題に対して、たとえば日本演劇教育連盟(演教連)では、昨年9月に「演劇教育指導者養成プログラム」をスタートさせました。あるいは、日本芸能実演家団体協議会 (芸団協)は「実演家よ、学校へ行こう!」と謳い、これまでたびたびセミナーやワークショップを行っていますが、今秋の初めにも「表現教育指導者養成講座<基礎編>」を開いています。  

さて、演劇・表現教育における指導者といった場合、2種類の指導者像が見えます。  

・演劇人などの専門家が子どもを直接指導する。
・教員や指導員が専門家に学んだうえで子どもの指導にあたる。

学校教員に関しては、現在の教員免許の制度にはこの種の資格はありませんから、有志の個人がそれぞれ研修の場を見つけて学んでいます。また、子どもたちが学校外で演劇活動をする場合は、多くはその施設なり団体なりの者が指導にあたっていますが、そのための資格をもっているというわけではありません。

つまり、指導者になろうとする者は、民間の団体なり組織なりが独自に設けている場や機会を利用して、学んでいるのが現状です。そうして今のところはその人たちが、演劇教育実践家、表現教育家、表現活動インストラクター、演劇ワークショップ・リーダー、等々と各人おもいおもいに名乗っているようです。  

「演劇教育における指導者」は、まず教育に重点を置き、その視点から子どもの活動を見つめ、支援するのです。そういう意味で「演劇の指導者」とはその役割が異なります。また、子どもたちの何を大切にしようとするのか、目的をしっかりもっていることが求められます。

そうでないと、劇の上演だけを目的に、演技や舞台の見栄えで子どもたちの活動を評価しかねません。その結果は「プロみたい!」というような評価を最高の誉め言葉と思い込みがちです。  

現在、各団体の養成活動は「求められる指導者とは?」を探りながら行われています。このなかで、専門家集団である芸団協のセミナーは「演劇教育における指導者のための」として行われています。

今秋の連続講座では「表現教育指導者として必要なこと」「やってみたい!という気持ちにさせる−学習学に学ぶ−」「子どもの多様性に向かう−指導者としての姿勢−」「(学校の)先生と授業を作りあげるコツ」という4つのテーマで、ワークショップをまじえた講座でした。これは、子どもたちとの接し方や指導者の姿勢などについて考えてみようというねらいで開かれたものです。  

また、主に教員が参加している演教連が始めたプログラムは、教員・指導者の立場に在ります。演教連は指導者養成プログラムとは別に、これまで毎夏に全国演劇教育研究集会という催しを開いていますが、今年で52回を数え、たいへん貴重な学びの場となっています。

しかし年1回3〜4日間の催しでは充分なはずもなく、演劇教育の全体像を描くなかで指導者としての必要・充分条件を系統的に学ぶ、ということから指導者養成を独自に考えてみようとなったのです。試行錯誤の途上ですが、今のところ次のように考えています。  

遊び・コミュニケーション系…… コミュニケーションゲーム・表現遊び・劇遊び
身体表現系…… ボディワーク・発声・演技の基礎・ダンス・楽器や歌唱・朗読や群読
劇づくり系…… 照明・音響・舞台装置・メイク・脚本の創作と選び方・劇指導・人形劇や影絵劇・自分自身の演技経験
理論系…… 演劇教育論・演劇教育史・演劇論・児童青少年演劇の鑑賞と批評

以上のことに関してそれぞれ一定の単位を設け、総体的に学ぶことを求めています。

しかし、これらのことを学び、単位をクリアしたからといって指導者ということにはならないでしょう。結局必要なのは、子どもへの眼差しや子どもとの関係づくり・距離感といったものを含めて、教員としての資質を研くことだと考えています。  

なにかにつけ資格がもてはやされる今日ですが、その内実こそが問われるはずです。演劇・表現教育においてももちろんのことです。そのためにも指導者養成についての経験交流を活発に行い、そもそも何を目的・ねらいにしているのかを共通にしていくことが必要だと思います。


(文・日本演劇教育連盟・市橋久生)2003/12/1