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ボランティアと文化ホールの大切なカンケイ−2− 〜劇団四季まで動かした!?たんば田園交響ホール〜 「ボランティア」という言葉には、「自己犠牲」、「無償奉仕」、「アマチュアリズム」というステロタイプなイメージが常につきまとい、その先にある大きな可能性がなかなか見出しづらいようです。しかし、ボランティアから新たな文化活動への道を切り開いた公共ホールはたくさんあります。そんなエピソードをご紹介するこのシリーズ、今回は「たんば田園交響ホール」です。 1988年3月、のどかな田園風景の広がる兵庫県篠山市に、白壁&黒レンガの蔵づくり風の800人収容ホール「たんば田園交響ホール」が誕生しました。演劇やミュージカル、クラシックコンサートなど、幅広いジャンルの催しのあるこのホールには、全国的に有名になった「たんば篠山方式」と呼ばれる住民ボランティア組織「ステージ・オペレーター・クラブ(SOC)」があります。 ステージ・オペレーター・クラブは、基本的に「ステージオペレーター養成講座」の修了生で組織されています。彼らは週1日3時間、15回の講習を受けて、クラブメンバーとなります。活動内容は、舞台美術から、照明、音響のオペレーション、大道具の搬入・搬出など、舞台の裏方全てに関わっています。照明では2級資格者が20名以上いて、知識も技術もプロ顔負けです。 また、きちんとした会則があり、慶弔やその他の手当てがでたり、講座受講料や観劇チケット代など、技術を磨くための研修に対する補助金がでたり、活動に対する謝礼がでたりと、会員が積極的に参加しやすいように、アフターフォローも万全のボランティア組織なのです。 では、この「たんば篠山方式」はどのようにしてできたのでしょうか。 そもそも、このホールの建設は県が行いました。それを篠山市に運営をあてがったため、市にすれば予期せぬものだったようです。人口も2万4千人程度で予算も少なく、常駐のスタッフを置くことが難しかったのです。とはいえ、公演があるたびに大阪や神戸からプロのスタッフを呼ぶと、公演前日のリハーサルを含めて50万〜60万円はかかり、よほど力のある団体でなければ、利用が困難になってしまうのです。 そこで、考え出されたのが裏方ボランティアスタッフだったのです。当時チーフプロデューサーをしていた向井祥隆さんは、学生時代にフォークシンガーの高石ともやさんや永六輔さんたちと組んで、「宵々山コンサート」を企画し、自前で機材を買い込んでオペレーションをしていたそうで、その時の記憶で、「市民も頑張ればできる」と確信していたのです。 早速、向井さんはホールの運営委員会にこの案件を持ち込みました。しかし、「ホールは一流なのに、オペレーションが三流では、台無しになる」と、反対の声があいつぎました。県内の劇団に相談を持ちかけた時にも、「舞台をなめている。プロにしかできない」と言われ、困難をきわめたのです。 それでも向井さんは、「プロの舞台は自前のプロスタッフを連れてくるが、アマチュアの舞台でプロを雇うには予算的に難しすぎる」と繰り返し説得を続け、根負けした関係者はようやくGOサインを出すまでに至りました。 ホール完成5ヶ月前、第1回目の講習が行なわれました。参加人数は60名。この時、向井さんは挨拶の中で、次のように語ったそうです。「皆さんは舞台の素人です。しかし、出演者には関係なく、自分が日頃一生懸命に練習してきた成果を、舞台で発表しようとしている。音響や照明がミスをすれば、全てを台無しにする。だから頑張って技術を身に付けて下さい。」 5ヶ月の講習を終え、ホール開館と同時に「ステージ・オペレーター・クラブ」が発足しました。クラブメンバーは38名。最初はプロの講師に手伝ってもらいながらのスタートでしたが、全員必死に、そして貪欲に技術を吸収していきました。メンバーたちの心の中には、講習第1回目の時の向井さんの挨拶が、しっかりと残っていたようです。「自分たちがしっかりしなければ、ホールは回らない」これが、彼らの責任でもあり、喜びでもあるのです。 今では、クラブメンバーの働きぶりが実り、彼らを気に入った劇団四季が開館以来、毎年公演を行なったり、月3〜4組、年間数百人の視察団が自治体から訪れたりするようになりました。そして、「たんば篠山方式」として、ステージ・オペレーター・クラブの活動は、全国的な広まりをみせているのです。 ホールはプロが使うもの、市民は客席で鑑賞するもの、という不文律を破り、市民を巻き込んだ運営で活動を広めた「たんば田園交響ホール」。全く知らない人が何かをやっていても気になりませんが、隣の奥さんが何かを頑張っていたら、応援したくなるもの。そして、それが楽しそうなら、自分も参加したくなるものです。 市民に文化を広めようと、押し付けの鑑賞事業を行なうよりも、ずっと効果的な文化振興の方法をいち早く取り入れていたからこその成功なのでしょうね。「どうも、若者層が集まらない」、とぼやいてる文化ホールは多いはず。「たんば篠山方式」は、きっとヒントになるはずですよ。 |
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(文・K)2002/6/17
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