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演劇創世記 vol、1
いまや、演劇のジャンルは多岐にわたり、ボーダーレス化が進んでいます。日本の状況だけをみても、商業演劇系、新劇系、小劇場系などのほか、ミュージカルや大衆演劇、フィジカルパフォーマンスなどいろいろ。もちろん、歌舞伎や狂言も日本古来の演劇の一つといえるでしょう。 これだけ演劇がたくさん存在する一方、「演劇とはなにか?」と聞かれると、その質問に即答することは困難です。 そもそも、演劇とはなんなのでしょうか? このコラムでは、世界の演劇の歴史を振り返りながら、来るべき未来の演劇のあり方を探ってゆきます。これからどうぞお付き合いくださいね。 ●演劇とはなんぞや? 演劇の歴史を振り返る前に、「演劇」とはなんぞや?と調べてみました。 実は、演劇と言うものの定義は、いろいろと論じられてはいても、「これ!」というものがないのが現状のようです。確かに、形のないものですし、観る人それぞれの感受性によっても変わってくるので、一概に定義するのは難しいのかもしれません。 日本の演劇学の第一人者である山田肇氏は、演劇を「ある時、ある所で、人間(に代わるもの)が、変わりつつあるものを見せること」だと定義し、さらに、演劇を大きく3つに分類しています。 1つは、俳優の魅力を最大の売りとする「スターシステム」と呼ばれるものです。日本の古典芸能の世界も、このスターシステムなのだそうです。ただ、それは売れっ子のタレントが出ているということではなく、「俳優の魅力」というものが、「芸の巧みさ」と捕らえられていたからです。 とは言え、最近のドラマも映画も、お芝居も、「芸の巧みさ」を重視したものというよりも、売れっ子のタレントさんを起用した、「スターシステム」が定着していて、少しずつ言葉の意味が変化してきているようですね。 2つ目は、戯曲を上演することを目的にしたものです。 キャストやスタッフが総力を挙げて、戯曲の世界を表現しようというものです。ここで言う「戯曲」とは、舞台で上演されることを目的とした文学作品のことを言います。シェイクスピアは勿論、古代ギリシャ演劇などもここにはいります。 3つ目は、演出家が創造する芸術作品としての演劇です。 ここでは、演劇に必要な要素全てを使って、演出家自身の芸術表現をおこないます。今、私たちの周りで「演劇」というと、ほとんどこの分類に当てはまるのではないでしょうか。 ●演劇の始まりは? では、これらの演劇の始まりはどこだったのでしょうか? 一般的には、宗教的な儀式から発達したものではないか言われていますが、詳しいことは分かっていないそうです。しかし、歴史を探る上で決してはずせないのが、「ギリシャ悲劇」です。 「ギリシャ悲劇」が誕生した時代は、実に裕福な時代でした。 今から約2500年前、世界史の教科書には必ず出てくる「ペルシア戦争」に勝利したアテネでは、「五十年時代」と呼ばれる平和な時代に入り、彼らの想像力が爆発したのです。 民主主義が発達し、人々は活発な意見交換を行いました。この中で、弁論術も発達し、言語表現が最高潮を迎えました。悲劇の上演も、この言語表現の一つとして発達してゆきました。 そして、驚くことに、彼らは悲劇を上演してその出来栄えを競う、「アゴーン」というコンテストまで行っていたのです。ギリシャ悲劇の三大詩人、アイスキュロス、ソフォクレス、エウリピデスは、同時代にこのアゴーンで競っていました。 しかし、この時代には、まだ今の演劇の形態はありません。 劇作家が歴史や神話を元に叙事詩を書き、それを舞台上で語る、というのが通常の上演方法でした。 そこで、アイスキュロスは、より観客に高い感銘を与えようと、2人の役者の対話形式を生み出しました。これが、現代の劇形式の走りとなるのです。 あくまでも想像ですが、この改革の瞬間を観ていた観衆は驚いたことでしょうね。しかもコンテストですから、競っていた他の劇作家も焦ったに違いありません。 これに衝撃を受けたのかどうかは分かりませんが、ソフォクレスは舞台に上がる役者を3人に増やし、自分が舞台に上がることを止め、対話を複雑化しました。2人で話しているところに、第3者の目を置くことで、より濃密な空気をかもし出し、自分の表現したいものをより強く描き出すという手法を生み出したのです。 そして、エウリピデスは、さらに役者を増やしました。また、それだけではなく、劇の内容自体にも変化をもたらしました。ライバルのアイスキュロスやソフォクレスが神話を取り上げていたのに対し、彼は人間そのものを取り上げました。これによって、自分自身の中にも潜んでいる嫉妬や憎悪といった人間的な感情を描き、より多くの人々の感銘を得たのです。 このように、彼らはより人々に自分の意見を伝えようと、その表現方法に工夫を凝らしてゆきました。これが、演劇の始まりとなったのです。 では、彼らはこの悲劇を通じて、一体どんなことを訴えていたのでしょうか?次回は、観衆を熱くし、何千年も受け継がれてきたギリシャ悲劇の内容を見てゆきます。 ※参考文献 「山田肇演劇論集」 白鳳社 「ギリシャ悲劇」 著:山形治江 出版:朝日新聞社出版局 |
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(文・O)2004/6/21
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