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ニッポン演劇むかしばなし vol.1 〜わが国の演劇創世記〜

今回の舞台はわが国、ニッポン!
古代ギリシャ時代からヨーロッパを中心に紹介してきましたが、さて日本の古代の演劇は一体どんなものがあったのでしょうか?能、狂言、人形浄瑠璃など、よく目にする日本の伝統芸能。それらを生んだ源流とはいったいどのようなものだったのでしょうか?

身近で知らない日本の古代演劇の歴史を少しのぞいてみましょう。

●そこにもここにも神様いっぱい

古来よりわが日本は神様でいっぱいの国でした。というのも、我々の祖先が、太陽、海、山、滝や湖など、様々な自然環境の姿に神を見出し、奉ってきたからでした。そんな古代の日本で、演劇の祖を見つけようとすると、やはり神様に出会います。あの有名な「天の岩戸の伝説」です。

内容は、天照大神(あまてらすおおみかみ)が弟の素戔鳴尊(そさのをのみこと)の乱暴な行為に怒り、天の岩戸にこもります。すると、世界は闇に包まれてしまいました。何とか天照大神に岩戸から出てきてもらおうと、神々は思案します。そして、思いついたのが、天の岩戸の前で楽しいお祭りをして天照大神の興味を引くことでした。

天宇受売命(あめのうずめのみこと)という女性の神様が、髪飾りと裸同然の格好で、桶を伏せたような舞台の上で踊り狂い、神々はとても楽しそうに騒ぎ立てました。外の様子が気になった天照大神は、岩戸をそっと開けて顔を覗かせます。その一瞬を狙って、天手力男神(あめのたぢからをのかみ)が岩戸を引き開け、彼女を岩戸から出し、世界に再び光が戻った、というものです。

これはあくまで「古事記」にのっている伝説であり、歴史的事実とはいい難いのですが、日本の演劇の祖としてシンボルのようなものであり、後世の日本芸能の持つ呪術的な意味合いを持った最古の芸能的行為だと言えます。

また、「古事記」には「楽び(あそび)」という言葉で演劇的行為が、「日本書紀」においては俳優の由来である「俳優(わざおぎ)」という言葉がすでにでています。つまり、神様に捧げるものが、演劇の始まりになったわけですね。

さて、その後の歴史を見てみると、それぞれの地域での祭や神事における様々な演劇的行為がある中で、5世紀から9世紀の間に大陸から渡ってきた演劇文化がもてはやされてゆきました。その代表的なものが、「伎楽(ぎがく)」、「雅楽(ががく)」、 「散楽(さんがく)」です。

●演劇、海越え時を越え

「伎楽」の伝来は612年、まさに推古天皇と聖徳太子の時代です。百済からきた味摩之(みまし)という人物が帰化する際に、仏教と共に伝えたと言われています。その内容は仮面をつけた沢山のキャラクターが列をなし、練り歩きながら滑稽な舞や寸劇を行うといったものでした。

その独特な仮面は、今も国立博物館などで保存されています。仏教に関係の深い伎楽は、奈良の大仏の開眼の儀式などでも行われていたようです。一時は国家の保護も受け育成されましたが、だんだん寺院などでのみ行われるようになり、鎌倉時代にはその形式だけを伝えるようになってゆきました。

また、のびやかな笙(しょう)の音色が有名な「雅楽」も、この時代に伝えられたものです。元々は唐の宮廷楽舞で、当時から朝廷により管轄された楽師たちにより演じられました。10世紀に完成してからは時代の皇室のもとに保護され、現在の宮内庁楽部の方まで、1000年以上も脈々と続いているんです。驚きですよね。

「散楽」は、中国では「百戯」と呼ばれており、その名の通り様々な芸を持つ集団のことでした。その芸は、曲芸、歌舞、物真似から、幻術、手品、くぐつまわし(人形使い)まで実に多岐に渡っていました。今で言うところのサーカスが近いのかもしれませんね。

ちなみに、「散楽」という名は、宮廷芸能である「雅楽」に対する俗楽という意味があります。つまりは“民間の劇”といえます。散楽も他の芸能同様、一時は国家の保護を受けました。保護の間に育成が進んだ「散楽」は、その芸の多様性から、後世の演劇にも様々な影響を残しました。

そのうちの一つ、くぐつまわしは人形を使う芸でしたが、「くぐつ」と言う専門の集団がいたそうです。彼らは季節によって水草を追って移住し、狩猟のほか人形を使うことで生活していました。そして、彼らの人形が人形浄瑠璃の遠い遠い先祖になるようです。

また、散楽が「猿楽(さるごう)」と呼ばれるようになり、発展してゆきました。特に物まね芸が発展。台本の存在もうかがえるような記述もあり、「東人之初京上(あずまびとのういきょうのぼり)」と言うタイトルのものなど、社会風刺を含むようになりました。そして、猿楽はのちの能・狂言へと続いてゆくのです。

今回は日本の演劇史を少しだけ調べました。
演劇に限らず、今現在の社会に至るまでには、色々な流れがあり、その歴史を知ることはとてもロマンチックで面白いものですね。次の瞬間、あなたの目に映ったものは、どんな流れを辿って今そこに在るのでしょう。少し新鮮に世界が見えるかもしれません。

参考文献 「日本演劇史」 浦山政雄 前田慎一 石川潤二郎 著

(文・E)2005/2/21