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ニッポン演劇むかしばなし vol.2 〜雅楽〜

前回(2月21日号)では、古事記から5世紀頃に大陸から伝わってきた「伎楽(ぎがく)」「雅楽(ががく)」「散楽(さんがく)」について、軽く触れました。これらは、日本独特の文化と交じり合いながら、長く保護され、脈々と今の時代にも続いています。

今月から数回に分けて、日本の伝統芸能の祖とも言えるこれらの文化について、もう少し深く探ってみましょう。今回は「雅楽」です。

●悠久の時を超える音楽〜雅楽〜

日本には、雅楽が生まれるずっと以前から、神楽歌(かぐらうた)・大和歌(やまとうた)・久米歌(くめうた)などがあり、歌に伴う舞もありました。そこに、5世紀頃から大陸の色々な国の色々な音楽や舞が、仏教と共に日本に伝わってきました。雅楽は、これらが交じり合い出来たとされています。

そして、645年の大化の改新によって、国家が再編成されるのをきっかけに、それまでばらばらだったそれぞれの楽舞を、左と右の楽、すなわち左方楽と右方楽に整理して、朝廷が管理をはじめました。このときの雅楽の管理機関を「雅楽寮(うたまいのつかさ)」と言います。

その後、雅楽寮から楽所(がくそ)というところに管轄が移ってからも、平安時代中期には新しい日本の楽舞が入るなどの再編成が行われ、10世紀頃におおまかな完成をみました。そして、それ以降は1000年の時を経た現在でも、宮内庁の保護のもと、ほぼそのままのかたちで伝承されているんです。
1000年!まさに悠久ですね。

●雅楽に見る、日本人の心

雅楽は、団体によって様々ですが、およそ16人ぐらいで演奏されます。また、用いられる楽器は管、弦、打楽器で15種類ほど。特に聞こえてくるのが、管楽器の伸びやかな音。代表的な3種類の管楽器をみてみましょう。笙(しょう)、篳篥(ひちりき)、竜笛(りゅうてき)です。

笙は、あの「ンファ〜」という伸びやかな音。17本の竹を束ねたような形をしています。これは、鳳凰が翼を立てて休んでいる形といわれ、古代の人々はその音色で「天から差し込む光」を表現したと言われています。

篳篥は、手のひらに収まるにほどの小さな縦笛です。篳篥奏者と言えば、東儀秀樹さんが有名ですよね。その音域は1オクターブとちょっとで、人間の男性が普通に出せる声の範囲とほぼ同じなんだそうです。古代の人々は、この音色で「人間の声」を表しました。人間、つまりは「地上の声」とも考えられるようです。

龍笛は、7つの穴がある横笛です。こちらはその名のとおり、天と地を泳ぐ、「龍の鳴き声」を表したそうです。

3つの楽器を奏でれば、そこには天があり、地があり、龍が舞う。大地に立つ古代の人々の限りない思いは、きっと限りなく天高くのびやかに広がっていったのでしょうね。

そして、面白いのが演奏される歌の内容です。先ほども書きましたが、雅楽のもとになる音楽や楽器は、仏教と共に日本に入ってきました。しかし、その内容は「古事記」や「日本書紀」などの神話に基づくものがとても多いんです。

例えば、「神楽歌(かぐらうた)」の起源は、日本神話で登場する天石屋戸(あまのいわやど)の物語。「東遊(あづまあそび)」の起源は、「駿河国風土記」の中にある、天女が舞い降りて水浴をするという羽衣伝説。「久米歌(くめうた)」は、日本書紀にある、神武天皇が即位される以前、大和を平定したときの勝ち戦を歌ったもの。などなど…。

つまり、雅楽とは、大陸からの新しい文化の良いところをしっかりと吸収し、日本古来の伝統を重んじながら発展させ、継承されてきたものなのです。そして、1000年以上も昔の形を変えることなく、今も脈々と受け継がれています。なんと、現存する合奏音楽としては、世界最古のものなんだそうですよ。

雅楽を聴くと、周りの壁や建物が消え去るような、現在を形作る全ての時空を超えて、どこかへ連れて行かれるような気になります。そこは、もしかしたら遠い古代の人々と出会える場所なのかもしれませんね。


参考文献 「日本演劇史」 浦山政雄 前田慎一 石川潤二郎 著
     「雅楽」のホームページ http://www.gagaku.net/


(文・EO)2005/3/21