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大陸演劇誕生記 〜世界文化遺産に認定された演劇〜

中国の伝統演劇と言えば「京劇」が一番に頭に浮かぶ方が多いと思いますが、実は京劇よりも歴史が古く、ユネスコの世界文化遺産に認定されている演劇が存在します。それが、明の時代に成立した「昆劇(こんげき)」です。

●中央と地方での演劇文化の成立

モンゴル民族の支配を振り払い、1368年に再び漢民族の国家を成立させたのが「明」「清」です。明の時代以降も商業的な発達は著しく、生活の面では豊かな時代を送ります。

また、社会的な階級の細分化が進みました。そのせいか、中央には階級が高く上品なものを好む観客、地方では各地の方言や民間の習慣に根ざしたものを好む観客、という風に観客層の分離が起こり、自然と演劇の内容も変わってゆきました。

清の時代になると500種類以上の地方劇が誕生します。「秦香蓮」という妻子を裏切った男の破局を描いた物語や、「白蛇伝」という中央の演劇では悪役だった白蛇が、正義のヒロインとして登場する作品が上演されていました。どちらかというと、面白い内容の芝居が多かったようです。

それに対して、中央では一流の文人たちが戯曲を次々と発表し、優雅で芸術性の高い作品が好まれました。そこで登場するのが「昆劇」です。

●昆劇の過去と未来

昆劇は600年以上の歴史を持ち、京劇が広まるまでは中国演劇のトップを占めていました。他の中国古典演劇と違い、古くからの脚本や理論書、曲譜が多く残されていて、中国演劇史=昆劇史と言っても過言ではないようです。

昆劇は独特なメロディの音楽と派手なアクションを取り入れた踊りが特徴で、役者の化粧や舞台背景、照明など全てに伝統が息づいています。また、脚本、音楽、演技のどれをとっても中国最高峰で、全てを語ろうとすると紙面が足りないほどです。

例えば、脚本の面で言えば、言葉遣いが上品で美しく、心理描写や雰囲気作りにいたるまで繊細に計算尽くされていて、文学作品としても高いレベルを有しています。

また、音楽には数千種類の節回しや伴奏があり、時代や分野を超えた曲や楽器が交じり合っていながらも、調和が取れ、爽やかで上品な趣をかもし出しています。そして曲調も様々で、喜び、悲しみ、宴会の場面、神様を祭る場面、軍隊をイメージしたもの、舞踏音楽と細かく分かれています。

演技的にも高い美学価値があり、歌・台詞・しぐさ・立ち回りを一体化して役を表現するなど、総合的芸術として確立されています。

しかし、これだけ洗練された昆劇は、現在難しい問題に直面しているそうです。それは、人材不足と現代とのギャップ。

革新を図ろうという動きもあったようですが、これだけ長い間受け継がれてきた形式や演技法、リズム、台詞、そしてストーリーを変えてしまったら、その時点で昆劇ではなくなってしまうのです。そこで、革新をする前に、文献の整理や映像や音声資料の収集と整理を行っているそうです。また、昆劇役者養成の学校を作り若い世代を育てることも計画されているとか。

保存と革新。伝統文化が必ず直面する問題ですが、600年もの長い間失われずにきたものには、そう簡単には消えない力が必ずあるはず。これからの昆劇の発展を期待したいですね。


参考文献
中国情報局:http://searchina.ne.jp/guide/
中国まるごと百科事典:http://www.allchinainfo.com/culture/xiju/
中国民衆文学史:http://kyoto.cool.ne.jp/rekiken/data/2002/020607.html


(文・O)2005/12/19