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演劇を出版で広める!〜水野久さん〜
水野久(みずの・ひさし)さんは株式会社晩成書房の代表取締役社長です。晩成書房は月刊誌『演劇と教育』をはじめ、演劇教育や児童・青少年演劇に関わる図書の出版社として地位を確立していますが、この4月、新しい雑誌『児童・青少年演劇ジャーナルげき』を発行し、いっそう信頼を高めているところです。 晩成書房は石原直也さんによって、1978年に創設されました。東京の中学校教員として演劇教育に力を入れていた石原さんが、出版の面から演劇教育を進めようと一大決心のもと、教職を辞して起こした会社です。そして、それまでタイプ印刷で自主発行していた日本演劇教育連盟の『演劇と教育』が、この年の4月号から晩成書房発行となったのです。 水野さんは当時は大学生でしたが、授業に出るよりも演劇に熱中し、仲間と劇団をつくってあちこち廻っていたといいます。そんな時に石原さんに「ちょっと手伝ってくれないか」と誘われてしまうのですが、水野さんにとって石原さんは中学校演劇部時代の「恩師」なのでした。 そうして、編集や挿し絵を描く「ちょっと手伝って」が、とうとう社長のポジションにまで引きずり込まれてしまったのです。(一般には「上り詰めて」と言うところですが、なにしろ出版の中小・零細企業、しかも演劇教育だの児童・青少年演劇だのと、お金儲けからはとても遠いところの会社ですから。) それと言うのも、石原社長が1996年3月、会社で突然倒れ、そのまま帰らぬ人となってしまったからです。あっという間もないできごとでしたから、経営体制の引継ぎに一刻の猶予も許されません。当然のように水野さんにお鉢が廻っていきました。 それからの水野さん、編集のことしか頭になかったのですから大変。編集の仕事と併行して「経営」の猛勉強。しかし、いつものさわやかな表情を変えることなく、何ほどのこともないかのように社長の仕事もしてしまっていたのです。 晩成書房は創業以来、『演劇と教育』誌のほか、子どもが演じる劇の脚本集の出版で信頼を高めてきました。脚本集はこれまでに小学生向き(1種類11巻)、中学生向き(4種類で計22巻)、高校生向き(2種類で計38巻)と多くのものを出しています。 加えて、ふじたあさや、さねとうあきら、岡安伸治など作家個人の脚本集、子ども向きのミュージカル脚本などがあります。今や「脚本なら晩成書房」と言ってよいでしょう。 また、兵庫県立こどもの館での劇づくりのドラマを描いた如月小春の名著『八月のこどもたち』、学校のみならず公立文化ホールでも貴重な手引きとされている伊藤弘成『ザ・スタッフ』、国際演劇評論家会議日本センター編集による評論誌『シアターアーツ』など、演劇と教育を結んで良質の出版物を社会に送り続けています。最新刊は、没後百年に因んだ牧原純『チェーホフ巡礼』です。 水野さんは編集・出版活動とともに、近頃は演劇教育や児童・青少年演劇についての講演を依頼されることも増えてきました。ひょんなことから踏み込んだこの世界、本当に演劇は魔物かもしれません。 |
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(文・日本演劇教育連盟・市橋久生)2004/4/5
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