|
「学習塾」の演劇祭!〜長谷川宏さん・長谷川摂子さん〜
ヘーゲルやサルトルの研究者・長谷川宏(はせがわ・ひろし)さん、児童文学の作家で研究者の長谷川摂子(はせがわ・せつこ)さん。二人は埼玉県所沢市に学習塾「赤門塾」を開いています。そこの子どもたちが出演する「赤門塾演劇祭」が今年第30回を迎え、3月下旬の3日間開催されました。 小学2〜5年生による『すばらしいコーラ』(粉川光一作)、中学生の『あまのじゃく』(加藤道夫作)、高校生にかつての塾生の大学生と社会人が加わって上演する『ハムレット』(小田島雄志訳)。プログラムはこの3本立て。同じ出し物を3日間行う催しでした。 ふだんは塾の教室が、客席数約100のミニ劇場に変っています。老若男女が集まり、村芝居を見るような楽しさです。間口2間、奥行1間程度の舞台ですが、背景に描かれた絵や小道具・衣裳の一つ一つが実に丁寧に作られています。 学習塾で演劇という珍しい活動ですが、この絵や衣裳だけでも、その活動への打ち込み方が表れていて観る者にも伝わってくるようです。 劇は言わばせりふ劇。小・中学生の2本の作品も、名作として高く評価されてきたものですが、演技は行間をよく読み取った跡がうかがえるものです。 長谷川さん夫妻は1970年代半ばに塾を開いて以来ずっと演劇活動を取り入れていますが、戯曲を読み解くことを演劇の一部というだけに留めず、ものごとを考える基本の学習としています。 ハムレットはほぼ3時間に及ぶ大作をまったく飽きもさせずぐいぐい引き付けて見せてくれました。せりふが生きているのです。演技にめりはりがあります。半端な気持ちではこれだけの舞台にならないだろうと思えるような見事さでした。終演後、「どこかで演劇をやってるの?」と思わず聞いてしまうほどでした。 さて、長谷川宏さんと言えば、ヘーゲルを平明な日本語に翻訳したり(『精神現象学』ほか)、『同時代人サルトル』などを著したりしながら、難解な哲学をアカデミズムから解放したとして、その功績はつとに知られています。 また、長谷川摂子さんは、故郷・山陰を舞台に少女の心に浮かぶ生と死の不可思議さを描いた近作『人形の旅立ち』が坪田譲二文学賞や椋鳩十児童文学賞を受けましたが、人形劇や読み語りの定番にもなっている絵本『めっきらもっきらどおんどん』の作者としても知られています。 その二人が開いている塾。ここでは演劇、美術、読書などにも時間を使います。集まってくる子どもや青年たちとの精神の対等な関係が生み出すようすは、『きのう・きょう・あす』や『日常の地平から』など、宏さんのエッセイ集からも伺うことができます。 今、学校では劇をやる時間がなかなかとれないのが実情ですが、おとながその場を保障してやれば、自分たちで工夫して楽しみます。今回も、小・中学生は授業の合間に、青年たちは1月から毎週日曜日に集まり、稽古を積み、準備をしてきたといいます。そして、OB・OG生も裏方の仕事を手伝い、客席にも大勢の人を迎え、演劇をやる・観るおもしろさを日常の中で体験しています。 こんなふうに演劇が生活の中に、自然に取り入れられているところがすてきですが、そのためのおとなの役割をあらためて想った催しでした。 ※長谷川宏 書籍 http://book.asahi.com/search/?exact=on&phase=result&author=%C4%B9%C3%AB%C0%EE%B9%A8 ※長谷川摂子 書籍 http://www.junkudo.co.jp/view2.jsp?VIEW=author&ARGS=%92%B7%92J%90%EC%81%40%90%DB%8Eq |
|||||
|
(文・日本演劇教育連盟・市橋久生)2004/5/3
|