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穏やかにおおらかに 物語がしみわたる
   〜木城えほんの郷・森一代さん〜


九州山地の南東部、宮崎県木城町(きじょう・ちょう)は静かな山里の町です。JR日豊線の高鍋駅から車で30分、その「木城えほんの郷」に、7月、フィンランドから劇団がやってきます。ヘヴォシェンケンカ劇団の『セロ弾きのゴーシュ』です。

「えほんの郷」ですから、絵本に親しむ催しや事業を展開していることは言うまでもないのですが、1996年の開設以来、毎年、海外のとてもすてきな演劇を招いて公演していることが大きな特色です。

▼スウェーデン 国立ウンガリクス劇団
 1995年(開設準備期)『小さな紳士のお話』
 1997年『小さな紳士のお話』『ドルフィン』
 2001年『マーラのおつかい』
 2002年『ふしぎなとびら』
▼デンマーク 人形劇団モネゴイル
 1996年『にじのいろ』
▼フィンランド ヘヴォシェンケンカ劇団
 1997年『走れモカシン』『雪のお城の王子さま』
 2000年『こうさぎぴょんぴょん』
▼イギリス クルーシブル劇団
 1998年『空の高さはどのくらい?』
▼デンマーク リオローサ劇団
 1999年『HAIKU』
▼イギリス ヨーク・ロイヤルシアター劇団
 2003年『おやすみなさいをいうときに』

どれもこれも、子どももおとなも一緒に楽しめる舞台です。
一度の観客は 100人程度。上演時間も1時間前後という、日本の常識とは異なるぜいたくな環境です。しかも、必ず実際の舞台を見てから招聘することを決めるなど、見識がうかがえる企画です。

今回の『セロ弾きのゴーシュ』には、舞台美術製作に「えほんの郷」の村長さんで版画家の黒木郁朝(くろき・いくとも)さんが関わり、フィンランドに何度も飛び、現地で一緒に創っています。

  この演劇のほかにも、イギリスの演出家を招いて表現ワークショップを行ったり、毎年秋、新月や満月の夜に自然の命との共生をテーマにする現代の「天の川のコンサート」を開いたりするなど、さまざまな「見る・聞く・読む・語る・作る・遊ぶ」魅力的なプログラムが、1年を通して行われています。

こんな「えほんの郷」の事務局長を務めるのが森一代(もり・かずよ)さんです。

森さんは長い間、おやこ劇場や子ども文庫の活動をしてきました。子どもへの深い信愛の情と豊かな遊びの精神で、自然のなかで育つ子どもたちを励ましています。日常の暮らしのなかに絵本やお話の楽しさが染み込んでいくように、時間をかけてこの「えほんの郷」をつくっていきたいと話します。

急いで結果を求めず、100年200年先にまで想いを描く息の長い構想は、たとえば「みどりのゆりかご銀行」と名付けられた、鳥や虫と共に生きる森づくりなどにも表れています。

この「えほんの郷」に流れる時間に身を任せていると、あふれるように想像力が湧き出てきて、なんだかおだやかな気持ちに浸れるからふしぎです。

森のこだまを聞きに行くもよし、フィンランドのゴーシュに会いに行くもよし、天の川から流れてくる音楽に誘われるもよし……。きっと心身ともに蘇ることと思います。


※木城えほんの郷
 URL http://www.mnet.ne.jp/~ehon/
 電話 0983-39-1141
 fax  0983-39-1180
※天の川のコンサート
 10月9日(出演=坂田明・平野公崇・吉野弘志)


(文・日本演劇教育連盟・市橋久生)2004/6/7