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ろう教育に演劇の種をまく〜青木淑子さん〜
福島県の高校教員・青木淑子(あおき・よしこ)さんは、耳の聞こえない子どもたちの演劇教育に力を注いでいます。 「デフ・パペットシアター・ひとみ」や「日本ろう者劇団」のように高く評価されている人形劇団や劇団もありますが、小・中学生や高校生など、難聴や聾(ろう)の子どもたちの演劇やダンスなどの表現活動も、盛んに行われています。 この8月2日には、日本演劇教育連盟主催の第53回全国演劇教育研究集会で、都立石神井ろう学校高等部の生徒たちによるダンス・パフォーマンスがオープニングを飾ります。1月に開かれた東京都盲・ろう・養護学校総合文化祭の舞台発表部門でも、胸を張り手足を伸ばし、まっすぐな視線の、若者らしいしなやかな身体の動きが、観客に熱い心を湧き起こさせたものです。 さて、青木さんは福島県立ろう学校に勤めていた15年間、生徒たちの心をひらき他者への積極的な関わりを促そうと、演劇教育に情熱を燃やしました。「劇にするような“自分”なんか何もないよ!」と、あまり意欲的になれない生徒たちを、根気強く、考えさせたり励ましたり時に挑発したりしながら、徐々に、実は「表現したい自分自身」があるのだということに気づかせていったのです。 難聴や聾の子どもの劇の場合、観客にわかるようにと、正面を向いた演技や字幕の多用に頼りがちですが、そういう「説明」よりも、今この自分たちがこれをアピールしたいのだというメッセージを全身で表す舞台でした。 ややもすれば交友世界が狭くなりがちなろう学校の生徒たちに、さまざまな人々との出会いをと、プロの演出家や俳優、ダンサーなどに直接教えてもらう機会もつくりました。そうして、生徒たちを高校演劇コンクールに出場させました。演劇部のコンクールであるこの催しに、国語の授業として行っている劇であえて「挑戦」したのです。果たして、県代表に選ばれ東北ブロック大会で上演する栄誉もしばしばでした。 生徒たちはたしかに変貌を見せました。同年代の健聴の高校生たちの心を打ち、対等なコミュニケーションを自分たちの力でつくっていったのです。 「ナイーブ10」と自分たちで名づけた高等部3年生10人の創作劇の記録『いま静かに燃えて』は、雑誌『演劇と教育』で連載が始まるや驚きと深い感動を呼びました。この劇は有志によって東京にも招かれ、高校演劇とは別の多くの人たちにも見てもらうことができました。 青木さんはテレビでも取り上げられ、テレビ東京放映「ドキュメント人間劇場」で『みちのくのサリバン先生』として紹介されています。 このような実践に刺激され触発されたかのように、あちこちのろう学校で演劇活動が行われるようになりました。しかし、教員のせっかくの意欲も、子どもたちの心が全身で表現されるような舞台がそう簡単につくれるわけではありません。そこで、そういう指導者に集まってもらい、難聴や聾の子どもと一緒に表現の体験をしてもらおうと、「表現セミナー」を始めました。これももう15年になります。他県からの参加者も多く見えます。 青木さんは今、全国のろう学校の演劇・表現活動がより活発になることを夢見ています。そのためには、基本的な考え方や指導の方法について教員の交流を図り、《ろう教育と演劇》に関する全国ネットワークをつくろうと考えています。福島で始めた表現セミナーも近い将来ほかの地域でも開かれそうです。 参考資料;ビデオ『手話劇入門』(汐文社) |
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(文・日本演劇教育連盟・市橋久生)2004/8/2
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