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仕事と児童演劇の38年間〜古内亨さん〜

福島県いわき市で、19歳の時から38年間、仕事の合間を縫って演劇活動を続けている会社員の古内亨(ふるうち・とおる)さんに、このたび、全国児童青少年演劇協議会(全児演)の特別賞が贈られました。全児演は、プロであれアマであれ児童青少年演劇に関わる劇団・団体・個人、だれでも入れる会です。毎年、会員を対象に賞を贈っているのですが、今年度は「特別賞」として古内さんを選んだのです。

古内さんは、1966年、「いわき児童劇団ポポ」の旗揚げに参加して以来、現在まで役者として、時には演出を担当して、公演に関わってきました。主に、市内の保育所を巡演しています。子どもを観客にして演じるいわゆる児童青少年演劇の、プロの劇団はたくさんあります。

が、「ポポ」のように、アマチュア劇団として子どもに向けて上演している劇団は、そう多くはありません。しかも、プロ劇団とは別の苦労や困難さがあるでしょうに、10年以上も続けているのですから……。そうやって、地域の子どもたちが舞台を楽しみ、演劇に親しむ環境づくりに貢献しているわけです。

では、古内さんは、そもそもいったいいつごろから演劇を?
「小学校の4年でした」と即座に答が返ってきました。担任の先生がよく本を読んでくれたり、学芸会などなにかといえば放送劇や劇をやったりすることが多かったのです。おかげで、引っ込み思案の古内さんも、「思いを身体で表現できる」劇にひかれたと言うのです。

長じて、地元の演劇鑑賞会(当時は「労演」)に入りました。事務局を引き受けたこともありました。観ることに親しんでいたのです。が、あるとき、自分たちも舞台に立とうということになってしまいます。しかも、それは子どもを観客とする演劇=児童演劇でした。仲間のなかに小学校の教員(今も劇団の代表を務める牧野隆三さん)がいて、誘われるままに劇団旗揚げにまで至ってしまったのでした。

しかし、演劇が、ある種のイデオロギーと結びつけて、偏見の目で見られていた時代もありました。古内さんも舞台に立つときは本名を名乗れず、会社も転々と変らざるを得なかったのです。それでも演劇の魅力と、目の前で夢中になって見ている小さな子どもたちのことを思うと、やめるわけにはいきませんでした。

そうして今では、あたりまえですが、周囲の目も変ってきています。ますます精力的に仕事と公演を行っています。学校や公民館の催しで上演することもよくあります。今年度も3月末までに市内24箇所の保育所を訪問し、民話劇『うぐいすの屁』などで子どもたちを喜ばせています。

それとともに、子どもに対しておとなとしての責任を感じると言います。「親が手をかけすぎたり、反対に、かけなさすぎたり」の時代、親子の共通の話題になる演劇をこれからも続けたいと思っています。

でも、平日に休暇をとってまでの演劇活動は家族にはどんな……?
要らぬ気遣いのようでした。お連れ合いは保育士さん。どうやら一番の理解者・協力者のようです。


(文・日本演劇教育連盟・市橋久生)2005/3/7