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地域で子育て、町に文化の風を!〜黒木至美さん〜

“子どもたちの心が町中の人に届くように”
大きな七夕飾りが今、宮崎県都農町の役場前に置かれ、風に揺れてみんなの気持ちを和ませています。町内に6つある小・中・高校の子どもたちの願いや思いが込められた七夕飾りは、子どもを見守る役職にある町の女性14〜15人が、連日学校を訪ね、一緒に作ったものです。

この「七夕交流活動」で中心になっているのが、黒木至美(くろき・ゆきみ)さんです。黒木さんは、京都で小学校の教員を務めていました。家族のつごうで、16年前に宮崎県に移住、教職は辞めましたが、以来、一町民として子どもと文化に関わるさまざまな活動に参加しています。

教員時代には、子どもたちの文化活動に力を入れ、演劇をはじめさまざまな表現活動に取り組んできました。そのためには、みずから体験し、力をつけていかなければなりません。演劇教育のセミナーや講座を求めて、横浜やら東京やらにも出かけて学んできました。学生時代には演劇部を創り、一時は俳優の道を志したほどですが、結局は教職に就いて「表現とコミュニケーション」の教育、文化・芸術に情熱を注ぐことになったのです。

この姿勢は、宮崎に移り住んでからも変わりません。こんどは、自分の町に演劇サークルをつくったり、講師を招いてセミナーを開いたりするほどです。昨年亡くなられた俳優の冨田浩太郎さんの朗読講座などもそのひとつです。

町では保育所に勤めた後、現在は児童館で子どもたちと直接ふれあう仕事をしていますが、黒木さんのドラマティックなところは、子どもは地域が育てるという信条を行動で表しているところです。“人の親”として、わが子だけでなく子どもたちみんなに温かい目を注いでいます。

その目でもって、親の立場で学校に提案し、歓迎され実現したことがいくつもあります。子どもたちへの本の“読み聞かせ”はそのひとつで、今やすっかり見慣れた光景になっています。

また、卒業式や入学式と言えば、「日の丸・君が代」で処分されるというようなおよそふさわしくない事態が憂慮されますが、主役の子どもたちはもちろんのこと、その場に集う人すべてが快く豊かな気持ちになれるような、式場のレイアウトや進行のプログラムを提案し、喜ばれています。

黒木さんは、何かをすることで人と人が出会い、心がつながっていく喜びを感じると言います。そして、無理なく人と関わる、自然体でいられる、楽に立っていられる− こういうことを、演劇教育のセミナーや講座で学び、それが身に染み込んだと言います。

今、演劇人などもさかんに教育の分野に踏み込もうとしていますが、子どもの前に立つ場合、専門の技術もさることながら、第一に求められるのはこういう資質ではないかと思います。

黒木さんと町の子どもたちは今、楽しい夢を見ています。遠くへは出かけられないお年寄りたちが寄り合う場に、和太鼓とソーラン節の踊りを届ける“トラック隊”を結成してまわろう!というものです。この夏、子どもたちのはつらつとした身体とお年寄りたちの笑顔が見られそうです。


(文・日本演劇教育連盟・市橋久生)2005/7/4