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〜エキスパートが語る演劇ワークショップの未来〜


インタビュー第3回
「芝居好きなら誰でもこの指とまれ!」
(PLAY HOUSE 花楽郷代表/
きたく子ども劇場・シアターディレクター 津田益弘さん)

PLAY HOUSE 花楽郷代表でもあり、
きたく子ども劇場シアターディレクターの
津田益弘さん。

舞台を観て、舞台で演じて、大人も子どももキラキラできる瞬間がもっと日常になれば…。そんな思いで、きたく子ども劇場でシアターディレクターとして奮闘する津田さん。
ご自分のお仕事とは別に、「PLAY HOUSE 花楽郷」という演劇集団の代表をされています。


東京都北区に「PLAY HOUSE 花楽郷(以下、花楽郷)」という、何とも愛嬌のある名前の演劇集団があります。

ここは、高校生を中心に、中学生から40代の大人まで、とにかく「お芝居をやりたい!」という人が集まって年に一度公演をし、一度やれば解散。また次の年になって、「お芝居をやりたい!」という情熱を持った人が集まってくるという、緩やかな連帯の中に、たぎる情熱を持った集団なのです。

彼らの舞台は、とにかく熱い!小器用にまとまるのではなく「面白いモノを創りたい!そして、お客さんに楽しんでもらいたい!」そんな情熱が、客席にまでビンビンに伝わってきます。

今回はその「花楽郷」の稽古場にお邪魔して、「花楽郷」の代表でもあり、きたく子ども劇場のシアターディレクターをされている、津田益弘さんに「花楽郷」の活動内容について、インタビューしました。



自主性を大切にしています。
とにかく自分達で考えて体験して発見してゆきたいんです。

〜「花楽郷」ってどんなとこ?〜


津田さんは、こども劇場の「シアターディレクター」をされているそうですが、実際にはどのようなお仕事なんですか?

舞台関係の支配人といったところでしょうか。

こども劇場は会員制なので、自分で観たいものを選んで、チケットを買いに行ったりするのとは違って、例会で決められたものを観る、という受身の姿勢になってしまいがちなんです。

でもそうじゃなくて、自分から興味を持って能動的に足を運んで観てもらいたいんですよ。なので、ただ鑑賞の機会を作るのではなく、企画の時点から色々な情報を集めて宣伝し、舞台公演までの期待を高める事を目的にしています。

舞台鑑賞に関わる、全てをコーディネートするようなものです。




「花楽郷」とは、一体どんな集団なんですか?

もともと、きたく子ども劇場にいた青年達(18歳以上の会員)と始めたもので、とにかく「お芝居をやってみたい」という人間が集まった集団です。

だから、誰がいてもいいはずなんですが、3年目位からですかね、ちょっと閉鎖的になってきたんですよ。新しく入ってきた人を「新人」とよんだり、3年間やってきた人だけのもののようで…。

でも、そういう集団には絶対に限界が訪れると思ったんです。で、思い切って解散させました。本来、演劇とは形に残らないものですからね。僕たちの集団も形に残す必要はないと思ったんです。で、やりたい人だけが集まってまたやればいい、と。

だから、とても自主的な集団です。



「花楽郷」は、きたく子ども劇場とは全く別の組織として運営されているそうですが、これを始めたきっかけは何ですか?

僕はこども劇場にいるので、何年かに1度は青年達と一緒に舞台をやってたんです。でも、お芝居ってそう甘くなくて、辛いことも沢山あって「もう二度とやりたくない」なんて思ったりするんですよね。で、1回やる度に解散してたんです。

でも、それでもやりたい!というメンバーが集まって、「皆が満足できるやり方はないのか?」と模索してたんです。

それ以外にも、こども劇場で子ども達に見せるお芝居を選ぶ時に、沢山観て、「本当に面白いものを!」と思って選んできているんですが、なかなか思うように関心が高まらないことも多いんですね。

で、自分で実際にやってみたらどうなんだろう、と思いまして。

そうすると、受身で観ていた頃よりも、実際にやってみることで演劇の面白さにどんどんと気付いていくんですね。そして、「観る」ということへの関心もどんどんと高まっていくんです。

だから、本職の延長線で始めたようなものですね。



「花楽郷」は高校生が中心になっていますが、学校に演劇部の多いところも多いですよね。演劇部の少ない小中学生ではなく、高校生に的を絞ったのはどうしてですか?

特別「高校生の集団」というわけではないんですよ。だって、僕なんかは始めた時から高校生じゃないですから(笑)。

逆に、「高校生の」と区切ると、彼らと僕との立場が違ってきちゃうでしょ。だから、別にやりたい人なら誰でもいいんです。

昨年、募集のチラシを配布した時に、年齢制限を書かなかったんです。そうしたら、中学生から、上は40歳近い人まで問い合わせの電話が殺到して、実際に今、一緒にやっています。
 

ただ、チケットにしても、何にしても全て自分達でやるので、色々なハードルがあります。勉強との両立や、親との問題…。そういったものを解決できるのは、高校生以上かな、と。

花楽郷は、全てにおいて強制はしません。芝居をやりたい人間だけが集まり、やりたくない人は自然といなくなります。

親との問題も同様で、僕はなるべく首を挟みません。自分の目的を達成したいなら、親を説得することも彼らの乗り越えなければならないハードルの一つだからです。

ただ、よっぽどもめているようならば出て行きますけどね。最終的には、本人が解決するように導きます。



高いハードルを越える中で、思いもよらない力を発揮するんです。
そして、みんなキラキラとかがやくんですよ。

〜遊びの中で、自分からすすんで発見する喜び〜


これまでの8年間で印象に残ったエピソードはありますか?

初年度の時、舞台作りをなめていて、大失敗したのが一番印象的です。

僕も舞台に立ったんですが、本当に恥ずかしかった〜(笑)。お客さんは拍手をしてくれたんすが、どうしても恥ずかしくって、思わず謝ってしまいました。で、「次回はもっとちゃんとやります!」って誓っちゃったんですよね。

2回目からは、下手でも「いい芝居」に挑戦しました。必死でしたね。戯曲選びの時点から、本当に気を配ってやりました。 周りからは無謀だと言われるものにもチャレンジしてゆきました。

その中で、「ハードルを高くすることで、自分でも気付かないくらいに凄く力が湧くんだ」という事を経験しました。とてもいい経験です。




プロの方にご指導いただいたりするんですか?

いや、そういうのは、ちょっと…(笑)

実は一昨年から、「スタッフサービス」というのをを始めたんです。役者と違って、スタッフはどうしても技術の蓄積が必要だと思うんです。

それに、自分達の表現したいものを追及していったとき、やっぱり自分達のスタッフが必要になってくるんですよね。だから、こちらは解散させない集団にしました。

ただ、プロの技術者に来てもらって講習をしたりはしません。出来るだけ自分達の力でやりたいんですよ。試行錯誤しながらも、自分で考えて、見つけてゆきたいんです。


どんなものでもそうですが、教えてくれる団体や先生の色が出てきてしまうでしょ?そうすると偏ったものになってしまいそうで…。

いつもお客として観ていて、「技術論だけじゃないだろ?」と思うことがよくあるんです。だから、余計にプロの技術に頼るのではなくて、下手なりにもがいて見つけてゆきたいんですよね。


それに、「指導」とか「教育」って言葉もあまり好きじゃなくて(笑)。何か堅苦しいじゃないですか。

遊びとしてやっていけば自由が出るし、面白ければ広がりが出る。演劇に触れて、もがいて、発見する楽しさがいっぱい味わえると思うんですよね。

あと、僕はこども劇場でいつも客として観ているから、やる側のこだわりよりも、観る側にこだわってやりたいんです。そうすると、色々な発見があって面白いんですよ。

お客さんを目の前にして初めて、「あ、お客さんってこういうものなんだ」って分かるし、またお客としてみた時、「自分だったらお客さんの為にこうしたい!」と思う。お客の立場と、やる側の立場がいい具合に循環するんですよね。



演劇を体験することは、子ども達にどんないいことがあると思いますか?




ん〜、人間関係はちゃんとできてないかもしれないですけど、自主的に楽しくやる、楽しさを見つける、そして遊びの中で仲間と真剣に向き合う、という関係が作られているのはとてもいいんじゃないでしょうか。

さっきも言いましたけど、「教育」とかって苦手なんですよ(笑)。だから、表現教育的にどうかというのはよく分かりません。

ただ、受身の姿勢の子が多い中で、遊びながらいろいろな発見ができ、目的を持って行動できるのがとってもいいと思うんです。遊びながらも、目的に向かう。

そして、その道のりで出てきたハードルを、仲間と協力しながらも自分の力で乗り越えてゆく。

そうして、目的を達成した時に、彼らはキラキラ輝けるんですよね。



普通のカラダで、普通の声で。
お芝居が日常になる世界にしたいんです。

〜お芝居が特別じゃない世界〜


今後、花楽郷はどうなっていくのですか?
いろんな垣根を取っ払って、芝居が特別なものではなく、ごくごく普通の日常になるきっかけになればいいなと思っています。

実は、ここから2つの劇団が出来たんですよ。一つはもう解散しちゃいましたけどね(笑)。

何回かやってると、自分のやりたい方向性みたいなものが見えてきますから、それを持って巣立っていって欲しいです。1つのスタイルには、必ず限界が来ますからね。そうして巣立っていって、お芝居がごくごく当たり前の日常になればいいな、って。


お芝居やってるっていうと、ちょっとひかれるじゃないですか。それに、観るのも面倒くさいとか、特別なことのように扱われる。それって、不自然だと思うんですよね。

だから、お芝居をやっていることが、普通の日常になるような世界にしたいんです。


花楽郷の新しい活動などは決まっているんですか?

いつも、北とぴあのアマチュア演劇祭に参加していたんですが、それをやめて、もっと自主的な活動をしたいと思ってます。

手始めに、今年は3月8日に花楽郷のスタッフサービスが制作を担当して、「弾'sレボリューション」に参加します。2001年に「(有)鈑金モータース」という、濃い男たちによるフィジカルパフォーマンスグループを作ったんですが、その第2回公演といった感じでしょうか。

ダンサブルですよ(笑)!勿論僕も踊ります。「ぷち親父ダンサーズ」みたいな感じです!勿論、独学です。笑えますよ!

あと、4月には自分達で小屋を借りて、全くの手打ち公演をやります。こうやって、どんどんと自主的な活動を広めてゆきたいですね。




インタビュー後記


とっても寡黙な雰囲気の漂う津田さんでしたが、「花楽郷」やお芝居のことについて話している時の目が、とってもキラキラしていたのが印象的でした。

インタビューの中で、芝居を終えて何が一番嬉しいですか?という質問に、「舞台に立ったあと、ロビーで観に来てくれた友達と話しているメンバーを見ると、とってもキラキラしてるんです。達成感ですかね。人間、一生のうちで一回くらいキラキラすることがあってもいいと思うんです。そういう機会の少ない人が今は多いですよね。だから、そんな彼らを見たときが一番嬉しいですね」と答えて下さいました。

そして、そうやって話している私と津田さんの周りには、稽古を終えたメンバー達が興味深そうに集まっていました。彼らもまた、次の舞台を終えた時、とってもキラキラと輝くんでしょうね。

花楽郷も今年で8年目。旗揚げ当初のメンバーは、すでに社会人として働いています。演劇に触れたことで彼らの人生にどんな影響があったのでしょう。それは、本人にしか分からないことかもしれません。でも、きっと今もキラキラ輝いているんだろうな。そんな風に感じる「花楽郷」でした。

3月8日のイベントと、4月5・6日の公演。是非一度、足を運んでみてはいかがですか? キラキラした彼らを見たら、絶対に自分も輝きたくなるはずですよ!




☆★☆★ PLAY HOUSE 花楽郷 公演情報 ☆★☆★

「弾’S<ダンス だんす>レボリューション」
 
   日時:3月8日(土) 18:00開演
    場所:北とぴあつつじホール
    料金:1000円(小学生以上有料)
    お問い合わせ・お申し込み:きたく子ども劇場 
       Tel&Fax 03‐3919‐2990


「パンドラの鐘」(PLAY HOUSE 花楽郷 2003 第9回公演)
    作:野田 秀樹  / 演出:高橋 江利子
    
    日時:4月5日(土) 14:30 / 19:00
         6日(日) 13:00 / 18:00
    場所:王子小劇場
    料金:1000円
    お問い合わせ・お申し込み :花楽郷☆スタッフサービス

         Tel&Fax 03‐3919‐2990(きたく子ども劇場内)


2003/2/2


「キーパーソンに聞け!」では、今後もさまざまな方へのインタビューを取り上げてゆきます。ご意見ご感想、または「こんな人を取り上げてほしい」などのご要望などがございましたら、こちらまで、どうぞお気軽にお寄せくださ い。