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〜エキスパートが語る演劇ワークショップの未来〜


インタビュー第6回
「東京発・長野行!?若手小劇団が上田市で演劇イベントをプロデュース!?」
劇団「天然工房」 / 森角威之さん(作・演出)&松田信行さん(俳優)


左:森角氏 右:松田氏

長野県上田市にある旧・上田第一中学校。学校はすでに移転し、建物だけが残されたこの場所で、東京の小劇団と地元の人々が協力しながら、演劇による町おこし「うえだ演劇体験プログラム2003」が行われています。

演劇を観る機会のまだまだ少ないこの地で、地元の方々にワークショップや公演を行って、もっともっと演劇の魅力を伝えていこうというこのプログラム。
プロデュースする劇団は「天然工房」―――。


脚本・演出を務める森角威之さんと、俳優の松田信行さんは、俳優養成所で出会って意気投合し、2000年4月に劇団「天然工房」を設立しました。

誰もが楽しめるシチュエーションコメディが評判となり、第6回公演となった2002年の池袋シアターグリーンフェスティバルでは観客動員数1,000名を突破。東京の小劇場でも注目を集める存在です。

でも、どうして東京の小劇団が長野で公演を行うことになったのでしょう?そのいきさつとは?狙いとは?公演直前の森角さんと松田さんにお話を伺いました。




「“たまたま”が重なって……。ホントに縁ってあるんですね。」 
         
   〜上田市との出会い〜
              

「天然工房」ってどんな劇団ですか?

松田:

俳優養成所で知り合ったメンバーが「芝居をやろう」と集りまして、役者5名と演出・脚本、そして制作の7名から始まったんです。2000年の7月に旗揚げ公演を行って、今ではメンバーは20人弱くらいかな。これまでに8回公演をやってます。

森角: 作風はシチュエーションコメディ的なものがメインなんですけど、最初からそういうのを創ろうと思っていたわけではなくて、『誰しもが楽しめるモノ』を創りたいと思ってやっていくうちに、だんだんこういう作風になってきたという感じですね。


今回、上田で公演を行うきっかけになったのは?

森角:
2002年の7月に、「お寺」を舞台にした作品を上演するのに、お寺についていろいろと学ぼうと、座禅修行をしようという計画がでまして。うちの合宿係がインターネットで座禅させてくれるところを調べてたんですよ。そして、たまたま上田市近隣にある長昌寺をみつけたんです。


でも、僕たち劇団員は大人数だったのでご住職1人では対処しきれないという事で、座禅会に来ていた荒井さんという方にお手伝いをお願いしたんです。そしたら荒井さんが「芝居やってるの?いいね〜」って興味をもってくれたので、僕たちの芝居のビデオを送って、見ていただいたら気に入ってくれて、そこから話が生まれたっていう感じです。

で、そのあと9月にやった東京での公演に荒井さんとご住職と有志の方5人でわざわざ芝居を観にきてくれたんですよ。そしたら、「面白いから!」って上田でも広めてくれて、人がだんだん集まってきて、今年の2月公演には、バスツアーを組んで東京に観に来てくれたんです!(笑)


2002年9月 第6回公演「まんぷく寺の懲りない面々」
:池袋シアターグリーン


今回の作品「ソプラノ」の会場は、もともと中学校だった建物だとか?

森角: じゃーどこでやろうかってことで、車であちこち市内を探してまわったんですよ。劇場とかライブハウスとか、舞台のある映画館とか。

で、ある時、上田一中の体育館が、子どもたちが芝居をやる劇場として使われているということで、そこがいいんじゃないかって、観にいったんです。そしたら、体育館の横にひっそりとあった音楽室を見つけまして、「こんなに面白い空間ない!」って思ったんです。今は地域の市民グループの方が、たまに使われるくらいのところらしいんですけど、僕たちとしては是非使わせていただきたいとお願いしました。

たまたま見つけた素敵な場所で、脚本もこの場所をもとにして書いて、すごく面白い作品になりました。今回のシチュエーションは、本当にその“たまたま”の連続で生まれたんですよね。最高のシチュエーションです。

「上田市の皆さんのパワーにびっくりです。
   僕たちの方がお尻たたかれれてます(笑)」
  〜地元の方々の演劇へのエネルギー〜



公演間近で、上田市内もかなり盛り上がっているようですね。


松田: 本当にうれしいですね。もうその一言です。正直言って、僕たちは1回だけでもお芝居ができてたくさんの方々に楽しんでいただければって気持ちだけでしたから。こんなに盛り上がっていただけるなんて、もう感激ですよ。

森角: :実は上田には演劇を好きな方がたくさんいらっしゃるみたいなんですが、演劇に触れられる機会がまだまだ少ないみたいなんです。僕たちを熱く迎えてくれたのも、そういう環境もあるのかもしれませんね。

皆さん、すごく熱心に協力してくれてるんです。パソコンの得意な方は立派なホームページを作ってくださったり、映像の得意な方、文章の得意な方、支えてくれる方のそれぞれがそれぞれの得意分野を活かして、宣伝活動してくれてるんです。いやー、すんごいエネルギーを感じますよ。実行委員会の方々は10数人いらっしゃるんですけど、他にも大勢の方が有志としてお手伝いしてくれて。
僕らはもう、刺激されっぱなしで、動かされて。逆にお尻たたかれてるみたいな感じ(笑)。

松田: それにね、長昌寺のご住職は、昔はバリバリの営業マンだったらしいんですよ。そのノウハウを活かして、実行委員会の方にチケット売りのレクチャーなんかをしてくれたりするわけですよ。僕らが、レクチャーしてほしいくらいです。

森角: そうそう(笑)。でも実際、芝居のチケット売るのって本当にたいへんじゃないですか。実行委員会の方々が、一生懸命チケット販売を全部手売りで売ってくれているとお聞きして、嬉しくて感動してます。

松田: 嬉しいって、それしか言えないですもん。

森角: 演劇って「コミュニケーション」の表現じゃないですか。演劇そのものにも、人と人をつなぐエネルギーがあると思うんです。今回だって、上田市の皆さんと僕たちのコミュニケーションが大きな力となって、さらに広がっている。演劇そのもののコミュニケーションと、それを広めようとするコミュニケーションとでリンクして、どんどんと大きなエネルギーなっていくのは、それ自体が演劇的で素晴らしいですよね。



「始まりと終わりの“顔”が、ホント、まるっきり違うんですよ!」
             
   〜演劇ワークショップの魅力〜



今回の「うえだ演劇体験プログラム2003」では、公演のほかにどんなことが行われているのですか?

松田: 4月から6月にはトークショー、といっても交流会のような感じですが。それと、演劇ワークショップです。

今回は、30人近くの方々が参加してくださいました。年齢層も幅広くて、下は中学3年生から上は40代くらいの方まで。でもそのうち半分くらいは女子高校生だったんですよ!その高校生たちは、演劇班(注・演劇部を“班”と使って言うそうです)の子たちで、実行委員会の方が顧問の先生に声をかけてくれて、それでみんなで参加してくれたんですが、若いですね〜。すんごいパワーでした。

森角: すごかったなー。もう、圧倒されっぱなし。最初は、みんな堅かったんですけど、慣れてきたらもう、「キャッキャッ、キャッキャッ」言って。

松田: サルじゃないんだから(笑)。

森角: でも、僕らも最初はすんごい不安で……。これまで東京でやっているワークショップでは、ウチの作品を好きで来てくれる人ばかりなんですけど、今回はウチの芝居を全く知らずに参加される方がほとんどという状態で、どんな風になるのかぜんぜん分からなかったんですよ。でも、最終的には事情があってどうしてもこられなかった何人かを除いて、皆さんちゃんと3回来てくれて、しかも喜んでくれたんで、僕たちも、ホント、うれしかったです!

松田: 1回目の時に、僕、宿題出したんですよ。「なんでもいいから題材を見つけて、1人で演じてみて下さい」っていうもので。こんな宿題、難しいじゃないですか。出してる自分が言うのもなんですけど、僕、苦手なんですよ、宿題(笑)。だから、「どうかなー?」って思ってたんですけど。でも、皆さん、ちゃんーと面白い作品を創ってきてて。すごいですよね。ワークショップでは、僕たちが学ぶことのほうが断然多いですよ。


どんなプログラムで行われるのですか?

松田: 3回で1コースで、1回の時間は普段3時間で行われるのですが、上田では4時間かけてやりました。ワークショップの考え方としては、「役者」のためのものとして限定はしていないんです。 “コミュニケーションのあり方”が基本にあって、その上で、発声だとか肉体訓練を使って、舞台上でもちゃんとコミュニケーションをするための表現を体験していくというものです。天然工房では「芝居作りのレシピ」なんて言ってます。

初日は、リズムを使ったゲームなどして、舞台上での役者のリズム感を体験します。2日目は、人の前に立つこと、自分自身を素直に出せるような状態を作っていきます。最後には、台本を使ったり、実際にお芝居を作る段階までやっていきます。


ワークショップの魅力はなんだと思いますか?

松田:

僕が感じるのは、誰もが自分自身で気づかないうちに、日常生活の中で溜め込んじゃってるものがいっぱいあるんだろうなって思うんですよね。そういうのって、出したいんだけど出せる場所がない。新宿の真ん中で、「わああああッ!!」って大声出すわけにもいかないし、突然「はい、じゃあ自分を出してください」って誰かに言われても出せませんよね。

そういうところを、僕らがお手伝いしてあげるというか……。安心して自分自身を表現できるお手伝いをして、環境作りをすることが、僕たちのワークショップの仕事だと思うんです。

実際、みなさん自分自身を出していくにつれて、本当に“顔”が変わるんですよ!「これからはじめます」って言うはじまりの挨拶の時と、「じゃあまた来週に……」って言ったワークショップを終えた時のみんなの表情、まるっきり違うんですよね。別人です。

森角: ただ、そこには何よりも信頼関係が大切ですね。だって、「自分自身を表現したい」って思ってても、相手が信頼できないと、安心して本当の自分を出すことってできないじゃないですか。だから、信頼関係をつくることが、ワークショップをやる上でとっても重要だと思ってます。そうすることで「自分に正直になれる場所」ができるようになるんだけど、そういう場所ってすごい大事だと思いますよ。




「演劇の力ってすごいですよ。だからこそ、小さな世界から飛び出さないと―」
         
          〜小劇団と社会とのかかわり方〜



今後はどのような活動をお考えですか?

松田: ワークショップを担当している僕個人の思いは、悩みを抱えている若者、例えば引きこもりがちの方とか、コミュニケーションをとることに悩んでいる方のためにワークショップをしたいなと思ってるんですよ。

演劇は、コミュニケーション力を高めて信頼関係を作っていくのに効果的な要素がたくさんあるので、ぜひ活かしたいですね。社会とのかかわりの中で、もっと“演劇”を活かしていかなきゃと思いますよ。でも、まだまだ演劇って社会的にはネガティブなイメージがありますけどね。


2003年5月21(水)〜26(月) アイピット目白「ソプラノ」
森角:

松田:
暗いとかね(笑)。

うん。小劇場の世界って、本当に小さいですよね。なんだか、みんながそんな中で競い合ってる気がするんですよ。社会で生活していくといろんな世界があるじゃないですか。演劇なんてその中のひとつで、社会的にも下のほうに位置づけられてるって思うんですよ。いっつも酒飲んだくれて、その辺に寝っころがっちゃってるみたいなイメージで。ま、極端なイメージですけど(笑)。

でも、社会の中にいる以上、普通に社会人の1人としてみてもらえるような生活をしなくてはいけないし、演劇がちゃんとした職業としてとらえてもらえるようにしていかなきゃいけない。ただただ、役者やりたくって「みてくれ、みてくれ」って言ったって、そうはいかないですよね。

狭い世界から自分で飛び出して行かないと。「天然工房」のモットーの1つとして、「ちゃんと社会人であれ」というのがあるんです。当たり前のことですけど、とっても大切な事だと思いますよ。

森角: この公演が成功して、もしまた上田でこういう機会がもてるならば、僕たちがまたやれればもちろんありがたいことですが、東京の面白い芝居をやっている小劇団を紹介して、そこがワークショップなり公演なりができる機会が毎年継続して持てるといいなと思いますね。

もちろん僕たち自身も、全国を回って行きたいですよ。演劇は、客席と舞台が一緒になる“人間同士”のコミュニケーションのエネルギーが本当に面白いし、最高ですよね。この素晴らしさを全国で伝えていける場を持てるといいなって思います。っていうか絶対いきたい!



長いインタビューにご協力いただきましてありがとうございます。
上田公演、成功をお祈りしていますよ!

森角: ありがとうございます!一生懸命頑張ります。お客さんあってのお芝居ですからね。初回の上演で反応みて良くなかったら、そりゃもう、徹夜で演出変えますよ。

松田: うんうん。もう、お客さんの喜ぶ顔だけ考えて、頑張ってきます!


インタビュー後記


お二人とも、さわやかでまっすぐで情熱的。「演劇や人に対する愛情にあふれている方たちなんだな」って実感しました。上田市の方々が、彼らを呼びたくなった気持ちが分ります。作品の面白さはもちろん、「また会いたい」と思わせてくれる、そんな魅力的な方々でした。


「天然工房」が目指す演劇のあり方について語っていただいている時のお2人の表情からは、「演劇が社会の中でどうあるべきか?」、「演劇を通じて何ができるのか?」というテーマをしっかりとらえて活動していこうという高い意識を感じました。

そして、「天然工房」の魅力を発見して、地域全体でバックアップして盛り上げている「天然工房を呼ぶ会」の方々の力と心意気は素晴らしい!特に小劇場演劇などは、演劇を広めたいと思っても、それに対応する受け皿がなくて、活動の場が狭められているのですから、今回のような企画は本当に貴重です。

社会との接点をなかなか見つけ出せずにいる小劇場演劇の世界ですが、「天然工房」のように社会との関わり方を模索し、一歩一歩踏み出している劇団もあるんです。若くてエネルギッシュなパワーが、もっともっと活動の場を持てるといいですよね。

(取材・構成 あーる)



◆天然工房上田公演「ソプラノ」◆

日時/6月14日(土)…19:00    6月15日(日)…14:00、19:00
料金/前売り 一般…1,500円 高校生以下…1,000円
     当 日 一般…2,000円 高校生以下…1,000円
会場/旧上田第一中学校跡地内音楽室 (全席自由)

詳細・チケットに関しては下記のホームページへ……
天然工房プロデュースうえだ演劇体験プログラム2003 

劇団「天然工房」の公式ホームページ
※東京での演劇ワークショップも6月末に開催されますので、要チェック!


2003/6/12


「キーパーソンに聞け!」では、今後もさまざまな方へのインタビューを取り上げてゆきます。ご意見ご感想、または「こんな人を取り上げてほしい」などのご要望などがございましたら、こちらまで、どうぞお気軽にお寄せくださ い。