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NHK教育テレビの企画力 Vol.1 〜大ブーム!「ピタゴラスイッチ」〜 朝の7:30から正午まで―――。 午前枠のNHK教育テレビが面白い。 午前中のNHK教育テレビというと、「学校で見せられるような子供向けのつまんない番組ばっかり」という印象を持つ方も多いみたいですね。それどころか、ほとんどの人は会社や学校に行っている時間で、なかなか見る機会がないかもしれません。でも、最近の教育テレビでは、“マニア”が誕生するくらいに人気の番組が次々と登場しています。 「教育テレビ」という名前だけに、もちろん、子どもの育成や学校授業で活用できるような番組が制作されていますが、中でも興味深いのが、「総合的な学習の時間」にも活用できる番組群。 「子どもたちの好奇心や学習意欲をかきたてるには、どんなテーマを設定しようか?」「番組を通じて、どんなことを学んで欲しいか?」など、番組の送り手側の自由な発想や、鋭い企画力が活きています。そしてそこには、演劇や教育に携わる人々にとって、刺激的で学ぶべきことが沢山含まれています。 今回は、「演劇よ学べ!NHK教育テレビの企画力」の第一回目。今、ブームを呼んでいる人気番組『ピタゴラスイッチ』を取り上げます。 ●「ピタゴラスイッチ」 〜企画者の意図と意思を鮮烈に表現する教育系エンタテイメント番組 「佐藤雅彦」さんという方の名前を聞いたことはありませんか?一瞬、「誰、それ?」と思った方も、NEC「バザールでござーる」、湖池屋「ドンタコス」「スコーン」などのCMや、「だんご3兄弟」の天才プランナーといえば、「ピン!」とくるはず。 広告最大手の電通から独立して活躍する佐藤さんは、一方で、慶応大学の教授として教壇に立つ教育者でもあります。今、巷で話題になっている「ピタゴラスイッチ」は、佐藤さんが企画を手がけた番組です。 視聴対象は4歳から6歳。番組のテーマは、あらゆるものごとの法則や構造、仕組みを面白おかしく表現するというもの。ところが、その内容を説明しようとすると、これが大変難しい。 15分間の放送枠の中には、主に7つのコーナーがあります。 〇 スタジオコーナー 〇 お父さんスイッチ 〇 フレーミー 〇 うた 〇 アルゴリズム体操 〇 何してるの?おじさん 〇 今日のスイッチ 「フレーミー」とは、フレーム(枠)だけでできた犬・フレーミーのCGアニメ。「何してるの?おじさん」は、奇妙な動作を延々とジェスチャーで表現している男性(例えばピザの生地を作る動作やカルタ取りの動作など)に「何しているの?」と問いかけるというもの。「今日のスイッチ」は、身近なモノを複雑に組み合わせて作られたオブジェのような回路に小さな玉を転がして、回路の最後に取り付けられたスイッチをオンにするまでを追ったブリッジ映像です。(←これがまるでドミノ倒しのような緊張感で面白い!) 「アルゴリズム体操」は、若手お笑いユニットの「いつもここから」が踊るへんちくりんな体操。最初は2人でそれぞれの振り付けで体操をしたあと、それぞれ1人ずつで体操します。さっきは普通に見えていた体操が、急に間抜けな印象になるのがとにかくユニークで、思わず大笑いしてしまいました。 番組を一度も見たことのない方にとって、こんな稚拙な説明では何がなんだかわからないかもしれません。ところが、番組を見たところでも、何がなんだかわからないのです。筆者も初めてこの番組に出会ったときには「???」という感じでしたが、あまりに鮮烈なイメージがあったので、早速NHKのホームページで調べてみました。するとそこには、番組の狙いが書かれていました。 NHK学校放送オンライン「ピタゴラスイッチ」 http://www.nhk.or.jp/sch/sch2002/schoolpro/youho/pitagora.html それを読むと、一見、ナンセンスに見えるコーナー群は、それぞれ「型」という法則を自由に表現するものであったことが初めてわかりました。そして、番組にちりばめられている全てのナゾが、急に理解できるようになったのです。まるで、難しいクイズの答えを知ったときのような喜び。そして最後には、こんな言葉で締めくくられていました。 「番組では、こうした“子どもにとっての「なるほど!」”を取り上げていきます。番組を見ることで頭のスイッチが入り、考え方についての考えが育つことをねらいとしています」 『“考えること”を考えさせる』という発想は、今までの教育番組にはない切り口です。もっとも、こうした自由度の高いテーマを取り上げられるようになったのは、「総合的な学習の時間」の導入をはじめとする近年の教育の流れでもあります。 これまで、国語、算数、理科、社会など、学校の時間割表の中にある授業に絡めた番組ばかりであったNHK教育が、今、学校よりも早く、その枠を飛び出しました。「古臭い番組ばかりやっていてはいけない。確固たる意思を持って、新しい道を切り開かねば」という番組制作者の強い意志があったのです。そんな時、理論的に企画を立てて、それを100%表現する佐藤雅彦さんの企画力は、とても力強い存在であったに違いありません。 そうそう、「ピタゴラスイッチ」の中には、こんなコーナーもありました。 「お父さんスイッチ」というコーナーで、四角い箱にストローをさしただけのリモコンで、子どもがお父さんを自由に操作するというものです。子どもが、「お父さんスイッチ“あ”!」といってボタンを押すと、お父さんは“あ”のつく動作を、パントマイムで動きます。例えば……。 「あ」あくびをする 「い」いのる 「う」うしろをむく 「え」えらそうにする 「お」おじぎをする まるで巨大なロボットを操作しているかのような楽しげな子どもと、照れくさそうに子どもに操られているお父さんの生き生きとした表情。これは、演劇ワークショップのエクササイズにも使われるようなゲームです。生身の人間同士が、ゲームという「型」にのっとって、コミュニケーションすることの楽しさと素晴らしさを表現しているこのコーナー。この番組を観て、「お父さんスイッチ」を試している父子は、きっと少なくないはずです。佐藤さんの企画意図と願いは、確実に伝わって浸透していると言えるでしょう。 教育テレビは、頑張っています。一方、教育のプロである教師、そして演劇のプロである役者、作家、演出家はどうでしょうか?例えば何かを伝えたいと思ったとき、それを貫こうとする「意思」と、伝えるための「企画」の力が重要であるということを、「ピタゴラスイッチ」は教えてくれているような気がします。 【ピタゴラスイッチ】(NHK教育) 放送日 水曜日 午前10:30〜10:45 (再)翌週 火曜日 午前 9:15〜 9:30 【佐藤雅彦氏HP】 http://www.masahicom.com/ |
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(文・TR)2002/07/08
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