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演劇よ学べ!NHK教育テレビの企画力 Vol.3 「川」「おこめ」 〜地味なテーマを「心」に投げかける〜 ほとんどの人が会社や学校に行っていて、なかなか見る機会の少ない教育番組。学校で見せられた“つまらない”イメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか?でも、最近のNHK教育テレビでは、“マニア”が誕生するくらいに人気の番組が次々と登場しています。 中でも興味深いのが、「総合的な学習の時間」にも活用できる番組群。「子どもたちの好奇心や学習意欲をかきたてるには、どんなテーマを設定すべきか?」「番組を通じて、どんなことを学んで欲しいか?」など、番組の送り手側の自由な発想や、鋭い企画力が活きています。そしてそこには、演劇や教育に携わる人々にとって、刺激的で学ぶべきことが沢山含まれています。 「演劇よ学べ!NHK教育テレビの企画力」の第3回目。今回は、なかなか子どもたちの興味をひきつけにくい“地味”なテーマを扱った番組をご紹介します。 ●「川」「おこめ」〜地味なテーマを「心」に投げかける〜 総合的な学習の時間の中で重要なテーマの1つとなっているのが、「自然・環境」。これは、ゲームやテレビ、コンピューターなどに慣れた現代の子どもたちにとって、興味の薄いテーマかもしれません。しかし、そんな“地味”ととられがちなテーマを分かりやすくまとめ、さらに、子どもたちの興味をかきたてるような番組があります。 それが「川」と「おこめ」。 なんとシンプルなタイトル。この番組の基本的なスタンスが、「今では忘れ去られている“当たり前”のことを新発見する」というもの。誰もが知っているはずの身近なものに、新たな視点や切り口を与えて、クオリティの高い番組を実現しているのです。 古いが新しい。そして、シンプル・イズ・ザ・べスト。でも、そんなスタンスの中で、どのようにして、子どもたちの学習意欲をかきたてているのでしょうか? ●「川」の場合― 川をテーマにした番組というと、小学校の理科のお勉強のイメージが強いのですが、それとは全く違う内容に驚きました。私が見た回では、子どもたちに川での泳ぎ方を教えるという内容で、しかも教えていた特別講師は元オリンピック選手の田島選手。テーマは「川であそぼう」でした。 “洋服を着て泳ぐことの危険性”や“強い流れに流されてしまった時どうすればいいのか”など、子どもたちと一緒に川を体験する様子は、見ている側にとって、今にも教室を飛び出してゆきたいほどの気持ちにさせてくれます。 そう、川についての「知識を伝える」だけでなく、新鮮な映像の躍動感によって、川へ「遊びに行きたくなる」ような番組作りがなされているところ、それが、従来の教育番組よりも、一歩進んだ作り方であると言えるでしょう。 また、一口に「川」と言っても、切り口さえ違えば、テーマとしてのバラエティはここまで豊かになるのかという驚きがあります。 「源流から川へ」
「川で創作してみよう」
「川の音つくりをしてみよう」
川についての知識を与えるだけでなく、川を見たときのドキドキ感を映像で表現しながら、子どもたちの心を盛り上げてゆく番組作り。そこには、「教育」という言葉の持つカタさはありません。むしろ、若者に人気の「ウルルン滞在記」のようなドキュメンタリータッチによって、視聴者と出演者が一緒に遊んでいるようなリアリティと臨場感があります。 番組を「まとめ」にしないで、「きっかけ」にする――――。 番組を見た子どもたちが、今度は自分で川に行きたくなるような作り方を徹底しているところに、「川」という番組の企画のポイントであり、最大の工夫なのです。 ●「おこめ」の場合― 一方の「おこめ」は、とても身近にあるにもかかわらず、興味・関心が少なかったものに、もっと踏み込んでいくことで、さまざまな発見や探究心を深めてゆくスタイルの番組です。 ここで工夫されているのは、「ただ知識としてお米について知る」という受動的なものではなく、お米を通して、自分の意見を持ってディスカッションしたり、実際にバケツで稲を育ててみたりと、視聴者参加型番組の方向に導いていく要素を持っていることです。 また、番組中に組み込まれている、お米作りに苦労している農家の人のドキュメンタリーでは、自分たちが食べるお米が、どれだけの苦労を経て生産されているのかを、子どもたちの心に投げかけるようにして構成されています。 こうした地味で間口の狭いテーマを扱った番組を長期シリーズ化するにあたって、企画者には、「はたして受け入れられるのか?」という不安があったに違いありません。放送する際には、大きな決断があったことでしょう。 しかし、むやみに明るく楽しい雰囲気を避けて、硬派に描いたタッチは、子どもたちにとっても新鮮に感じられたようで、放送の後には予想以上の反響がよせられたという話があります。 企画者の意図が、視聴者のココロに向けてしっかりと投げられていれば、そこには必ずリアクションが生まれるのです。 ●頭ではなく、心へ― 広いテーマを浅く扱って、さらりと流す番組作り、それが民放の作り方であるとすれば、NHKでは、狭いテーマをとことんまで深く掘り下げてゆく作り方。そしてそこに、新しい感覚を加えてゆくことで、意義のある番組を生まれさせています。 「川」も「おこめ」も、学校の教科で言えば「理科」や「社会」の分野です。学ぶテーマが屋外であったり、遠くの土地であったりすることが多いので、なかなか教室の中で好奇心を高めてゆくことは難しいかもしれません。でもそこに、まっすぐ且つシンプルなテーマを掲げ、その素晴らしさを“心”に伝えようとすれば、必ず感動を生むことが出来るはず。小手先ではない、ストレートなメッセージとたゆまぬ工夫に、NHK教育テレビの底力を感じます。 頭ではなく、心に投げかけていく―――。 そんな教育の根本的な課題に正面から取り組み、“子どもだまし”でないソフトを作ってゆくことで、視聴者の心を捉えようと工夫を重ねる姿勢は見習うべきでしょう。 感性は時代とともに変化しています。常に時代を捉えていく力、そして、いつまでも 変わらない心を信じてゆくことが、演劇界にももっと必要なのではないでしょうか? 「子どもだましのお芝居はもういらない!」のです。 |
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(文・R)2002/9/9
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