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スタニスラフスキー・システム vol.4〜想像力〜
さて、前回は「精神行動」からみた演技術の練習課題「焦点と集中力」を確認しました。今回は、その次のステップとして「想像力」についてみてみましょう。 ●想像力を鍛えよう 俳優に限らず、全ての芸術活動の源は「想像力」であるといえます。しかし、想像することが得意な人もいれば、不得意な人もいます。もちろん、才能というのはとっても大切な要素ですが、不得意だからといってあきらめる必要はありません。訓練することによって、十分想像力を鍛えることはできるのです。スタニスラフスキーは、この想像力の訓練にも力を注ぎました。 この訓練のスタートも、やはり日常生活にあります。いつもいる空間を、別のものに見立ててゆきます。例えば、会社。そこにいるのは、あなたと同僚、上司、部下。デスクと椅子があり、パソコンも並んでいます。窓の外には、他のビルが立ち並んでいるかもしれません。もし、あなたのいる空間が森だったら?あなたや他の人たちはどんな行動をしているでしょうか。パソコンが木で出来たカラクリ式の機械だったら…。森の中の小人たちが楽しく働いている様子が浮かんできませんか? もし、今の時間が朝ではなく、夜だったら。春ではなく、雪の降りしきる寒い冬だったら。大人ではなく、小学校前の子どもだったら…。モノだけでなく、時間や場所、空間全てを何かに置き換えてみると、意外と楽しく想像力を働かせることが出来るものです。こうやって生まれてきた状況を詳しくスケッチし、矛盾点や曖昧なところをなくしてゆきます。一人で想像するのも楽しいものですが、仲間と動きながらやってみると、お互いに触発されてより豊かな想像の世界が広がってきます。こうして、楽しみながら想像力を鍛えてゆくことは十分に可能なのです。 では、俳優にとって想像力がもっとも必要とされる場面どんな時でしょうか。実は台本をどう演じるかというところではありません。人物が登場する前の部分であったり、退場した後の部分を想像するなど、台本上にはない空白の部分を埋めてゆくときにもっとも想像力が必要となります。そして、これは物語を作り上げてゆく上で、きわめて重要であり必須の作業です。 怯えて登場するのであれば、何故怯えているのか理由をもたないことには、その役のリアリティーは生まれません。退場するなら、何のために退場するのかという目的がなければ、非常に不自然な行動になります。また、基本的にト書きには小説のように細かい状況の描写はありません。「森」とか「道」などといったように、非常に簡潔に書かれている場合が多いものです。この「森」や「道」がどんなものなのか、どういう時間帯でどういうお天気なのか。どんな気持ちでそこにいるのか。想像力で埋めてゆく空間は、そこかしこにあるのです。 これらの空間を、できるだけ深く綿密に想像してゆくことで、登場人物の感情は自然と動き出し、リアリティーが生まれてきます。そして、劇空間にも深みが増し、より観客の想像力をかきたててゆくことが可能になるわけです。 ●サブテキスト 人は、口に出した言葉が全てではありません。「家に帰る」と言ったら、人それぞれの「家」が頭の中に浮かんでくることでしょう。また、人が話している間、何も考えずにボーっとしている人はいません。相手の言葉や表情を読み取りながら、色々な感情がうごめくものです。人が言葉として発しているのは、感じているもののほんの一部だったりします。これらを、スタニスラフスキーは「内的イメージ」「内面のモノローグ」と呼んでいました。 お芝居に登場する人物を作り上げる上で、この「内的イメージ」「内面のモノローグ」はとても重要になります。「家に帰る」といえば、その人物はどんな家に帰るのか。明るい家庭なのか、冷め切った家庭なのか。豪華なつくりの家なのか、しがないアパートなのか。登場人物の頭の中には、その「家」の映像が浮かんでいるはずです。また、相手役が話している間には、人物なりの感情が動きます。自分の台詞のタイミングだけを計っていては、まったく会話が成り立ちません。台詞の中にある「……」も、大切なモノローグがこめられているのです。 これらを作り上げる際にも、想像力が重要になってきます。しかし、想像だけで役の内面を埋めていくには限界があります。そこで必要になってくるのが、過去の経験に基づく「情緒の記憶」というものなのですが、これはまた次回に、じっくりみてゆきましょう。まずはゆっくり、想像力を高める楽しい夢を描いてみませんか? 参考文献:演技ー創造の実際ー ジーン・ベネディー著 晩成書房出版 参考サイト:TRAINER LABO http://trainer-labo.com/index.html |
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(文・O)2006/5/8
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