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メソッドってどんなの?!
 
 
スタニスラフスキー・システム vol.8 〜言語行動

前回は、実生活を含め私たちの行動の中にあるテンポとリズムについて考察しました。このテンポとリズムは、台本の中にきちんと示されています。

最近では、自由に語尾を変えたり息継ぎをしたりして、俳優の演じたいようにさせている演出家や脚本家の方もいらっしゃるようですが、古典や綿密に計算して創られた作品を演じる際には、句読点ひとつにもその場の状況や登場人物の心理などが描かれているものです。それらを自由に変えてしまうと、登場人物のキャラクターや場の状況に狂いが生じ、作品としての軸がぼやけてしまうので要注意です。

●言語行動

スタニスラフスキーは、“話す”という行為も行動であり身振りや動作と同格にあるものとして、研究分析を行っていました。音楽家は曲を演奏する際に楽譜を読みますが、楽譜の中に書かれている記号について知らなければ、音を出すことは出来たとしても曲を奏でることはできません。

同じように、俳優は言葉をただしゃべるのではなく、戯曲に書かれた台詞をどうしゃべるべきかを、登場人物の言葉の使い方や文章の書かれ方から推し量る必要があります。そこで、スタニスラフスキーは以下の3つの視点から言語行動について分析しています。

1、句読点
2、間
3、強勢

句読点には、長い文章を区切って分かりやすくする論理的機能と、言葉遣いや息継ぎ、声の抑揚、韻律のパターンを表す表現機能の2つがあります。どちらも、聴き手の反応をコントロールするための方法です。

台本の中で使われるのは、「、」「。」「?」「!」「…」「―(ダッシュ)」などです。「、」はやや声が高めになり、聞き手は次の言葉を待ちます。「。」は声が下がり、話しの内容が終わったことを知らせます。「?」は相手の答えを期待して尻上がりに声が高くなり、「…」は考えが尻つぼみになったり、何を言おうとしているのかが分からなくなったりしたことを表現しています。「―」は、言い終わった言葉に内容を付け加えるために、「!」は命令や、強い感情表現、話の内容を厳粛に受け止めてもらえることを期待している時に使われます。

句読点は、こういった文章の情報を効果的に受け取れるように目に訴えるものとして使われます。そして、その文章が読み上げられ耳に訴える際に使われるのが“間”です。どれだけ、丁寧に句読点を意識したとしても、立て板に水のようにさらさらと読み上げられたのでは、正確な意味や感情は理解できません。

スタニスラフスキーは、このことを示す最も単純な例として「、」で2つに区切った“二段重ねの文章”を使いました。例えば―――

「僕の言うとおりにしないと、帰っちゃうぞ」

前半の文章では声が上がり聴き手の期待感を作り出します。そして、後半の文章で声が下がり警告した結果どうなるのかを示します。2つの文章の間に「間」があることで、聴き手は話の内容をよく消化できるようになるのです。そして、この「間」を“論理的間”と呼びました。

これ以外に、“心理的間”というものもあります。これは、内的な衝動や行動から生じるもので、話し手の心理状態や雰囲気の変化を示します。具体的には、「。」「?」「!」などの終止符の後ろ、注意の対象の切り替え箇所になっているところに存在します。

これらの“間”は、ともすれば単なる隙間になってしまいます。ただ理屈で“間”をおくのではなく、前回お話したテンポとリズムにのっとって、意味のある“間”を使いこなせるようにしたいものです。

そして、最後にあげている強勢は、話している意味を明確にすると共に、挙動や感情をはっきりと示すことが出来ます。例えば、「わたしはここを歩いた」という文章には3つの読み方があります。

「わたしは」ここを歩いた
わたしは「ここを」歩いた
わたしはここを「歩いた」

どこに焦点をあてるかで、面白いほど意味が違ってくるのが分かりますよね。
スタニスラフスキーは、強勢を“論理的強勢”と“芸術的強勢”に区別し、それぞれにレベルも設けました。全てをとにかく強めればいいというわけではありませんよね。全部強勢していては、文章の意味が全く分からなくなります。

そして、芸術的強勢は聴き手の想像力に生き生きとした画像を与えるものであるとして、「薪割り台と、そこに斧。それが、彼の行く手に見えたものだ」という文章を例に挙げていました。

薪割り台と、そこに斧。「それが」、彼の行く手に見えたものだ(論理的強勢)
「割り台」と、そこに「斧」。それが、彼の行く手に見えたものだ(芸術的強勢)

この強勢のおき方は、ある意味センスが問われます。ただ文章の意味を理解させるのではなく、聴き手や観客のイメージを膨らませ、生き生きとした感情を起こさせるにはどうすればいいか、その場その場で対応できるようになれば、きっと素敵な会話が出来ることでしょう。

普段何読んでいる新聞や雑誌、小説などを分析し、声に出して読んでみてください。何気ないただの情報が、生き生きと感じられてくるかもしれませんよ。

参考文献:演技ー創造の実際ー ジーン・ベネディー著 晩成書房出版



(文・O)2006/8/14