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スタニスラフスキー・システム vol.9 〜総合した演技行動
さて、スタニスラフスキーが自身の演劇人生を通して分析してきた俳優の技術を、8回に渡って見てきました。これらの技術を総動員して実際の舞台を作り上げてゆくことになります。 しかし、ただ技術だけを舞台上に持ち込むなんて事はできません。演劇には、戯曲がありテーマがあります。どれだけ技術が優れていても、戯曲のテーマに結び付けてゆかないことには何の意味もありません。俳優としての身体と心を整えたら、最後に戯曲に向かう姿勢を作ってゆくのです。 ●超課題の定義 お芝居の根底には、必ず「テーマ」があります。俳優は、まずそのテーマを定義することからお芝居作りを始めてゆきます。 その物語は何について書かれているのか。書かれた理由は何か。登場する人物が目指すべきゴールは何か。これらを、スタニスラフスキーは「超課題」と呼びました。登場人物たちは、「超課題」にというゴールに向かって「一貫した行動」をとります。そして、ゴールに向かう一貫した行動を阻止したり妨害したりする「反対行動」というものが波風を立て、ストーリーをより劇的にしてゆきます。 これら「超課題」「一貫した行動」「反対行動」は、歴史上の出来事からも見ることができます。例えばジャンヌ・ダルク。彼女の生涯の「超課題」は“イギリスからフランスを開放すること”です。その為の「一貫した行動」が“イギリスと戦い勝利すること”。そして「反対行動」はイギリス軍などの“ジャンヌ・ダルクの戦いを阻止し、フランスの勢力が大きくならないようにすること”です。分かりやすいですよね。 しかし、戯曲を紐解いてゆく時には、必ずしもはっきりと3つに分かれるわけではありません。複雑にいろいろな想いが絡まり、幾重にも構成されているものも多くあります。ですから、「超課題」を正確に見極めるために、物語の中の主なエピソードを丁寧に紐解いてゆく必要があります。それでもひとつに絞りきれない時があるでしょう。その時は、まず演じてみることです。 俳優には、大きく2つのタイプがあります。徹底的に読み込み理解してからでないと演じられない人と、感覚で読み取りとりあえずやってみる人。どちらが良い悪いということではありませんが、戯曲は小説と違って事細かな描写があるわけではありません。登場人物の心や、場の空気の流れというものは、演じてみないと分からないことが多いのです。 ですから、しっかりと読み込んだ後には、暫定的な「超課題」を定義し、それに沿って演じてみることです。今まで見てきた「身体行動」「精神行動」「相互作用」「テンポとリズム」「言語行動」など、全ての技術を投入し徹底的に演じてみた時、どうしても矛盾を感じて止まってしまったり、どうやら嘘をついているような気になってしまったりする箇所が出てくるはずです。 きっと、その部分が「超課題」を明確にするための分岐点になることでしょう。そういう分岐点に差し掛かったときに、再び戯曲を読み込み、必要であれば暫定的だった「超課題」を修正するなど、より明確にしてゆく作業をします。これが、お芝居の稽古の最も重要な作業となるのです。 ●スタニスラフスキー・システム 長い期間、スタニスラフスキー・システムを見てきました。いざ勉強しようとすると本の分厚さに圧倒されてしまいそうになりますが、よくよく中身を見てみると、とても分かりやすく日常生活の中でも試してゆけそうなことがたくさんありました。彼がまとめあげたシステムが、多くの俳優に支持され、演劇界に大きな影響を与えたことがよく分かります。 しかし、彼はこれが完成形ではないと言っています。俳優の技術も演劇の力も、常に磨かれ進歩してゆくものだと。そして彼の言葉通り、スタニスラフスキー・システムを手本としてさまざまなメソッドが生み出されています。 次回からは、スタニスラフスキー・システムから派生したメソッドを見てゆきたいと思います。どうぞお楽しみに! 参考文献:演技ー創造の実際ー ジーン・ベネディー著 晩成書房出版 |
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(文・O)2006/10/9
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