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小劇場界の雄・カムカムミニキーナ

今、日本で活動している劇団は数限りなくあります。しかし、そのほとんどが一部の「演劇マニア」とも言える熱狂的な固定客層に支えられているだけで、広く一般の人々に知られることがありません。

「学校の鑑賞教室以外で演劇を観たことがない」という人はもちろん、演劇を観たことのある人でも、「難しそう」とか「マイナーっぽい」などという印象から、ついつい敬遠してしまう人が多いようです。

日本の演劇業界が、他のエンタテイメント業界、アート業界に比べ、マイナーであり続けているには、必ず、明確な問題があるはず―――。

このコラムでは、現在活躍している劇団にアンケート取材をし、劇団の現状やそれぞれが抱えている問題点、演劇が広く社会に認識されるにはどうしたらいいのかなどのテーマを共に考え、演劇の魅力をより多くの方々へ知っていただくための方法を考察してゆきます。

第1回目の今回は小劇場界で屈指の人気を誇る劇団、「カムカムミニキーナ」です。


●カムカムミニキーナ

1990年、早稲田大学演劇サークル「演劇倶楽部」のメンバーを中心に旗揚げ、以来、主宰の松村武氏が全作品の作・演出を手がける。

めくるめく言葉遊びと、随所にちりばめられた笑い、いくつものモチーフが複雑に入り混じりながら、壮大な世界へと観客を呑み込んでゆく独特の作風が特徴。演劇ならではの表現にこだわり、大空間や群集を使ったダイナミックな演出にも定評がある。

1997年には、野田秀樹氏やラサール石井氏などを日替わりゲストに迎え、1日1話ずつ、24話1ヶ月連続公演や、99年の吉本興業との合同公演「阿呆Q」、2000年の年越し6時間公演など、演劇界に活力と旋風をもたらすべく、常に斬新な企画を打ち立てている。


●松村武さんに直撃アンケート!

小劇場界のトップリーダーとして精力的に作品を発表する「カムカムミニキーナ」、 主宰の松村武さんは、現在の日本演劇界の現状をどのように見つめているのでしょうか?「演劇タイムズ」では、松村さんに早速アンケートをお願いしました。

Q・1本の作品を上演するとき、稽古はどれくらいかかりますか?


最低1ヶ月間はかかります。1日の稽古時間は7時間。


Q・劇団の活動だけで生計を立てることはできますか?


NOです。


Q・では、それ以外にどのようなお仕事をされているのですか?


演劇関連のワークショップや、外部でのシナリオ作成、演出などが大切な収入源になっています。


小劇場界の雄、カムカムミニキーナでも、自劇団の活動だけでの生活は厳しいようです。ちなみに、劇団の看板役者・八嶋智人(やしま のりと)さんや、若手の有望株・山崎樹範(やまざき しげのり)さんは、ドラマ、バラエティー、CMなどでも活躍中。このように、劇団を代表するメンバーは、劇団の枠から飛び出た仕事が大切な収入源になっているようです。

このように、トップ級の方々は、公演以外でも、演劇に関連するお仕事があるので、まだいい方なのかもしれません。

その他、大手老舗劇団でも、出演費や外部からの仕事を獲得できるのは劇団員のごく一部というのが実情のようです。演劇の上演には多数のスタッフや俳優が参加していますが、全員に十分なギャランティを分配するには、困難な壁が立ちはだかっています。それは、日本の演劇業界全体がクリアすべき壁なのです。


Q・今後の演劇界はどうなっていくと思いますか?


今が停滞の底だと思うから、こういう時に新しいものが出現するものだと思います。だからこそ、これからもう少し盛り上がってくると思います。


演劇界全体を盛り上げるには、ただ待っていても意味がありません。松村さんは、演劇の楽しさや大切さを広めようと、また、自分自身でも色んなものを発見しようと、演劇ワークショップを開いたり講演会へ参加したりと、積極的に働きかけています。

「表現者はもっと勉強をして世界を知り、社会に向けて常にメッセージを投げ続けなければならない」

それが、松村さんの持論です。

カムカムミニキーナに憧れて、演劇界に飛び込む若手劇団も少なくありません。今後の演劇界を率いる重要なポジションにある彼の言葉に触発されて、知識と責任感を備えた“次世代の演劇人”が育つことを願います。


Q・ 近年、演劇人の間でも、文化芸術振興についての意識が高まっているようですが、これについてどのようにお考えですか?


今は特に自分でしている活動はありませんが、とにかく都市集中はダメだと思います。


Q・日本の演劇を良くするには、どうしたらいいと思いますか?


劇場としての内容を作り、育てるというコンセプトのある劇場を増やすべきです。場所などもまとめて、そこに行けば選択肢があるというような。1つの街に10劇場とか。

また、ランク分けをもっと細かく、はっきりさせる必要があるのではないでしょうか。「学生劇団」「インディーズ」「メジャー」「芸能人芝居」等々。大まかでもいいので。

初めて観る芝居が学生劇団の旗揚げ公演で、「演劇はこうか」と結論付けられるのが辛いです。「まだ未熟なカテゴリーなんだ。」という認識をはっきりさせて、逆もまた然りです。批評の不在ということかもしれませんが…。


日本の場合、演劇公演数は東京と大阪の二極集中が当たり前という状態になって おり、地方在住者は、演劇の好き嫌いを云々する以前に、演劇に触れる機会すらないという状況です。

さらに、近年注目されているワークショップなどの情報も都市に集中し、地方で文化芸術の情報を獲得するのは、想像以上に困難を極めています。

では、文化芸術が全国から集まる東京はというと……。

残念ながら、東京近辺での文化芸術振興に関わる活動は、あまり活発であるとは言 えません。首都圏内では、東京に近づくほど、「何も地元で文化に触れなくても、すぐに新宿や下北沢に出られるから誰も集まらないんですよ」と、諦めがちな公共ホールが多く見られます。

また、都心では、「これだけ人口が多いのだから、放っておいても人は来るだろう」と、アグラをかいている劇団や公共ホールが多く、松村さんの言う“劇場としての内容を作り、育てるというコンセプトのある劇場”が少ないのも事実です。

つまり、文化芸術の振興に力を入れていこうという全国の潮流から、東京だけが全くそれてしまっている状態です。この現状を打ち破るためにも、全国の劇団が一丸となって文化芸術を盛り上げ、演劇を気軽に楽しめる環境を作っていく努力が必要なのです。

東京だけでなく、全国にももっと多くの劇場ができて、演劇の魅力がもっと多くの方々に認知されるようになれば、演劇に携わっているクリエーターも、演劇活動そのものを生活の収入源とすることができますし、その結果が、舞台のクオリティの向上にも繋がってくるということかもしれません。

今回の取材で、松村さんの演劇や文化芸術に対する、「広めたい!盛り上げたい!」という意志が、とても強く感じられました。クリエーターは、常に次の時代を見据え、より良い環境を作るために考え、努力し続けているんですね。

現在、カムカムミニキーナは、今年6本目の舞台のお稽古中。今後、ますますのご活躍を期待しています。そして、ともに演劇を人々に、社会に広める努力を続けてゆきましょう!今回は、ご協力ありがとうございました!


(構成/文・O)2002/11/25