under


 
 
小劇場界を翔ぶ、bird's-eye view

日本で活動している劇団は数限りなくあります。しかし、そのほとんどが一般には知られていないのが現状です。日本の演劇業界が、他のエンタテイメント業界、アート業界に比べ、マイナーであり続けているには、必ず、明確な問題があるはず―――。

このコラムでは、現在活躍している劇団に取材をし、劇団の現状やそれぞれが抱えている問題点、演劇が広く社会に認識されるにはどうしたらいいのかなどのテーマを共 に考え、演劇の魅力をより多くの方々へ知っていただくための方法を考察してゆきま す。

第7回目の今回は、新しい演劇の創作を追及し続ける「bird's-eye view(バーズ・アイ・ビュウ)」です。


●bird's-eye view (バーズ・アイ・ビュウ)

1988年、演出家・内藤達也を中心に様々な劇団やジャンルで活躍している同世代の俳優、アーティストたちが、集団の枠を超えたユニットとして結成した。

年に1〜2回のペースで作品を発表。本公演以外でも、「Second Line」(ファッション用語で、ブランドの普及版という意味)と銘打ち、ライブハウスやカフェ等のイベントにも参加。

「現在(日常)を異なる視点からみつめる」という集団コンセプトで、現代の人々の関係性とそのリアルさを描いた作品は、同世代のみならず、幅広い年齢層からの共感を集めている。

近年では、エチュードを基盤とした集団創作のメソッドを活かし、一般を対象としたワークショップを開催している。


●演出家・内藤達也氏に直撃インタビュー

代表であり演出家である内藤達也氏の“現代”と“人”へのリアルな感覚が、繊細に、且つ強烈に詰め込まれた作品にファンが多く、結成5年目の今年は、青山円形劇場で行われる「Aoyama First Act」への参加が決定するなど、小劇場界でグングンと成長し続けているbird's-eye view。

「劇団」ではなく、「演劇ユニット」として色々なジャンルのアーティストが集まり、演劇の芸術性と自らのテーマを追求し続ける彼らの「こだわり」とは?7月公演の稽古直前に、直撃インタビューをしました。


Q・ bird's-eye viewの作品の作り方は、他とちょっと違うそうですが、どういう風にして作っているのですか?


僕たちは、脚本からは作りません。

「デバイジング」と言って、エチュードや即興のものを稽古場で実験的に繰り返して、役者と演出家との話し合いでシーンを作り上げてゆく方法を取っています。

台本は、劇場に入る4〜5日前に上がります。


Q・役者さんは大変じゃないですか?


突然台本を渡すわけではなく、役者がずっとエチュードで積み重ねてきたものを、最終的に形にするのがその時期という事なので、それほどの負担はないですね。ただ、スタッフさんにはいつも迷惑をかけています。


Q・「劇団」ではなく、「集団の枠を超えたユニット」を結成したのは何故ですか?


僕が劇団「双数姉妹」にいた時に結成したのですが、たんに「この人と何かをやりたい!」と思った人に声をかけていった結果、こういう形になりました。


Q・具体的には、どういう組織形態なんですか?


所属ではないのですが、固定の“メンバー”というのがあって、俳優が17名、スタッフが10名です。皆、各々の団体に所属をしていて、色々な分野で活躍しています。

特にスタッフは、演劇なんて観たこともないような人がほとんどです。

衣装の山本さんは、「Future eyes」というブランドを立ち上げている方なんですが、彼が東京モード学園の学生だった時に、たまたまイベントのファッションショーを見て気に入って、何の面識もないのに学校まで押しかけて行きました。

最近は、作曲家の方にも参加してもらうことになったんですが、その方も、僕がよく行くバーでかかっていた音楽が気に入って、やはり押しかけていきました(笑)。

それぞれが、自分の所属団体では出来ないようなことをやれる場として、ある程度の自由度を持ちながら、その中で責任感を持って仕事をしています。


Q・それだけ自由度の高い集団となると、まとめるのは大変じゃないですか?


はい。大変は大変ですね(笑)。僕が提示した企画が面白くなければ、誰も付いて来てくれませんから。

メンバー内の約束事として、「面白いと思わなければ、出演拒否が出来る」というのがあるんです。だから、いかに僕の企画を理解し、興味を持ってもらうか、ということにとても力を使います。

逆に、役者達も技量が足りなければ声が掛からないというプレッシャーを持っているので、お互いにとてもいい刺激になっています。

ユニット制の一番いいところですね。


Q・作品を創る上で、一番こだわっていることは何ですか?


創作の面では、演劇でしか出来ないことを、最大限に生かしてゆきたいと思っています。

台本がなく、役者とのディスカッションで作ってゆくことや、作品のコンセプトに基づいたスタッフさんのアーティスティックな部分を提示してもらって、お互いに作り上げてゆくというのが、こだわっているところです。

作品としては、日常的なテーマだったり、人間関係がテーマだったりするんですが、それをそのまま日常劇として表現するのではなく、僕自身が感じるリアルな部分を、日常とは「ちょっと違う角度」で表現してゆきたいと思っています。

そうすることで、普段は見過ごしてしまうような人間関係の微妙なところや、誰もが感じている「人との接点の難しさ」を掘り下げてゆきます。これは、映像ではなく、“生である”というところで、もっと臨場感を持ってもらえるものだと思います。


“演劇であること”“生であること”へのこだわりが、台本からの創作ではなく、「デバイジング」という創作方法になったのでしょうか。

よりテーマを鮮明に表現するためには、自分が素晴らしいと感じたアーティストに臆することなくドンドンと声を掛け、共に創作する俳優やスタッフとは、妥協することなく、長い話し合いの時間をもってテーマをとことん突き詰めてゆくのです。

「時間がかかってしまう方法なんで大変なんですが、より良いものを創るためには必要なんですよ」

ちょっと照れたように話す内藤さんですが、彼の演劇に対する姿勢からは、アーティストとしての自覚と責任感を強く感じます。

では、そんな内藤さんから見た演劇界は、一体どうなっているのでしょうか。


Q・今の演劇界について、どう思いますか?


僕たちは小劇場の中で活動しているので、他の新劇や商業演劇がどうかは分かりませんが、小劇場の中では、すごく価値観が多様化してきているのにもかかわらず、それが尊重されていないように思います。

例えば、音楽なら、ロック、ポップ、ラップ等々のジャンル分けがあって、客は自分の趣味嗜好で選べるけど、小劇場ではそれがなくて、何か一つの劇団を見たら、それが小劇場の全てであるように受け取られるんです。

笑いの中にも、コント色の強いものであったり、シチュエーションコメディであったり、話の展開の中で笑いをとっているストレートプレイ系のもの、エログロであったり、エンターテイメント色の強いものであったり、奇抜さを売っているもの。たくさんのジャンルがあるんです。

お笑いを観たい人が、お笑いをやっていない集団のものを観て「面白くない」と感じるのは当然で、にもかかわらずそれが一つの意見として成り立ってしまうというのが、レベルアップに繋がっていないんではないかと思うんですよね。

それぞれやる方向があるんで、それに対してちゃんと評価をしていかなければいけないんじゃないかと思うんですよ。


Q・評論家の不在、ということですか?


はい。

ただ、演劇をやっている僕らにも責任があると思うんですよね。

僕は、皆簡単に演劇をやりすぎていると思うんですよ。さっきの「それぞれの価値観を評価してほしい」というのとちょっと矛盾してしまうかもしれないんですけど、「プロとアマの境がない」というのもそうだと思うんです。

簡単に作品を提示してしまうという点において、観客も演劇的にいいのか悪いのか分からないというか、観客側も価値基準を持てないんだと思います。


Q・小劇場界が社会にもっと認められるにはどうしたらいいと思いますか?


もっと「こだわり」を持つことだと思います。

劇団とか作品にこだわりがなくて、「ただやっている」というのも多いと思います。それでは社会に受け入れられない、受け入れてはもらえない気がするんですよね。

僕たちはよく、おしゃれだと言われるんですけど、おしゃれにしようとしているわけではないんです。

演劇って、「格好悪いが格好いい」みたいな風潮があったじゃないですか。それがだんだん、「格好悪くてもいいじゃない」というか、「演劇ってそんなもんだよ」っていうふうになってきて、それが演劇をやっている人の中にも増えてきて、僕はそういうのが嫌なんですよ。

本当にいいと思うものをやりたいし、やるべきだし、僕はそういうことをやってきただけなんです。

ちゃんと、「コレをやろう」というコンセプトがあってやっているのであればいいんですけど、「この程度でいい」とか、「演劇はこういうものだから」、というところに表現が収まってしまっているというのが、いけないと思っています。

演劇って、やっぱりアートであって、芸術表現の一つだと思うんです。だから、作り手側に思想がなければ認められるはずはない、思想がないまま演劇が氾濫してしまっていたのでは、認められなくて当然だと思うんです。


確かに、「演劇が好き」というだけでは生きては行けないのがプロの世界。「演劇」というアートに対して責任を持ち、集団としてのアイデンティティを確立させ、社会に訴えてゆくものがなければ、評論家も生まれなければ、社会に認められることもあ りません。

「演劇だからいいや」という勘違いと、「所詮演劇はそういうもの」という甘い姿勢を正すこと、それが小劇場界がもっと社会に受け入れられてゆく為に必要なことなのでしょう。


一見物静かな印象を受ける内藤さんですが、インタビューの中で、

「演劇やってると、映画に出て活躍してね、とかって言われるじゃないですか。ぼく、そういうステップアップって違うと思うんですよね。演劇は演劇で勝負しなくちゃ。演劇の中で作品を創って、より良いものを追求してゆきたいんです」

と、熱く情熱を語ったかと思うと、

「劇場に入ったときに、僕は先手を取りたいなと思っているんですよ。入った瞬間に驚かせれば僕の勝ちだと(笑)。普通に入って開演までじっと待つよりも、入った瞬間に“あれ?”と思えれば、始まるまでの間にも“どいういうものが起こるんだろう”って興味をかきたてられるじゃないですか。そういうドキドキ感って、演劇ならではですよね」

と、いたずらっ子の様に目をキラキラとさせたりと、とても魅力的な方でした。

演劇にこだわり、現代にこだわり、人にこだわり、常に上を目指し続けるからこそ、色々なジャンルのアーティストをまとめあげ、多くの観客にメッセージを投げてゆけるのでしょう。

これからは、作品作りだけでなく、一般へのワークショップにも力を入れてゆきたいと語る内藤さん。これからの演劇界を支えてゆくキーパーソンとして、注目すべき存在です。

★☆★☆ bird's-eye view 公演情報 ★☆★☆

Aoyama First Act 参加作品

bird's-eye view #007 『campus;full』

日程:7/18(金)〜7/21(月・祝)
会場:青山円形劇場
料金:全席指定 前売 3,200円  当日 3,500円
発売開始:6/1(日)

詳しくはホームページをご覧下さい!
  >>>> http://www.b-ev.net


(構成/文・O)2003/5/26