社会を映し出す演劇を!「一跡二跳」
日本で活動している劇団は数限りなくあります。しかし、そのほとんどが一般には知
られていないのが現状です。日本の演劇業界が、他のエンタテイメント業界、アート
業界に比べ、マイナーであり続けているには、必ず、明確な問題があるはず―――。
このコラムでは、現在活躍している劇団に取材をし、劇団の現状やそれぞれが抱えて
いる問題点、演劇が広く社会に認識されるにはどうしたらいいのかなどのテーマを共
に考え、演劇の魅力をより多くの方々へ知っていただくための方法を考察してゆきま
す。
第8回目の今回は、ジャーナリスティックな演劇を発信しつづける劇団「一跡二跳
(いっせきにちょう)」です。
●劇団一跡二跳
常に問題意識を投げかけるテーマを持ち、日常を生きていく上で考えるヒントを提示
する作品を創ろうと、1986年、作・演出を務める古城十忍(こじょう・としのぶ)を
中心に結成された。
・ ジャーナリスティックな演劇
・ 「現代の気分」を描く演劇
・ 観客の想像力で成立する演劇
・ スタッフが物語る演劇
以上の4つの柱を掲げ、常に時代を映し出す鏡として、社会問題や社会現象を演劇な
らではの手法を用いて描きつづけている。
●制作代表の岸本匡史さんに聞きました
劇団一跡二跳は、時代を映す鏡としての演劇にこだわり、常に「人と人とのコミュニ
ケーションをどう築くか」というテーマを、スタッフワークにもこだわって、演劇な
らではの手法で表現しつづけています。
また、指導者のためのワークショップを制作するなど、社会に向けて常に積極的に
活動をしている劇団「一跡二跳」。彼らの活動を裏から支えている、制作の岸本匡史
さんに、劇団の活動と、制作者から見た今の演劇界についてお聞きしました。
| Q・ |
どの作品においても、深く鋭いジャーナリスティックなテーマが扱われていますが、これらの題材はどういうところから見つけるんですか? |
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古城は週刊誌とかから持ってきているようですね。あとテレビですね。
それをきっかけに、もともと新聞記者(※)だった利点を活かして直接取材をしたり、本やインターネットなどで調べて書いていますね。
書きはじめるまでのリサーチにはとても時間はかかりますが、時事問題を取り上げて書くことが多いので、何年も寝かせることはしません。 |
(※主宰の古城氏は88年まで熊本日日新聞社政治経済部の記者を務めていた)
| Q・ |
テーマとして“コミュニケーション”にこだわっていらっしゃるのはどうしてですか?
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何をするにしても、コミュニケーションが全ての根底だと思うんですね。
ただ“コミュニケーション”と言っても、手法ではなくて、お互いの意志の疎通の“ズレ”であったり、この人と話しているのにどうして話が通じないんだろうとか、そいういうところですね。
また、最近では「醜形恐怖症」というテーマがあって、周りからみたら全く普通なのに、自分では自分が醜いと思ってしまって、それがエスカレートすると引きこもりになってしまう。で、自殺しちゃったりね。そういう病気もあるんですよ。
こういう、普段の生活な中では出会わないこともたくさんありますから、「実際にはこういうこともあるんだよ、ちょっと考えてみようよ」というスタンスでやっていきたいですね。
そして、「こうなんだよ、こうなんだよ」とお客さんに押し付けるのではなくて、実際にこういう社会的症例があって、それをお芝居として楽しく観れて、観終わった後に「結局、何が問題だったんだろう」と、帰りに居酒屋なんかで話してもらえるような。
そうすると自分も回りに目が向けられるようになるし、自分のコミュニティーの中で色々と発見もできるようになりますからね。
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「一跡二跳」のホームページには、そのこだわりがぎっしりと詰まっています。
作品のタイトルとストーリーを公開しているサイトは多いのですが、こちらでは、
作品の持つテーマとスタッフワークまでもしっかりと提示されているのです。
そこからは、時代毎の社会問題や人間の心理、そして時代とともに増してゆく社会の
閉塞感をひしひしと感じ、改めて自分の生きている“現代”というものを考えずには
いられません。
次に、劇団の「制作」という立場から見た演劇界をお伺いしました。
Q・もっと気楽にお芝居を観てもらうにはどうしたらいいと思いますか?
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クリエーターは、「いい芝居を創る事」と内側を向きがちですが、僕は制作なので、お客様の視点から考えますね。
そうすると、やっぱり「事前情報」ですかね。演劇って、どういうものをやっているのか、観に行くまで分からない。思い切って行ってみても、好みに合わなかったりする。そこが1番の弱点じゃないですかね。
ところが演劇は、直前まで手直しのできる芸術ですから、事前情報を出せない、出しづらい。
それと評論というか、ガイド的なものがもっと充実してくれるといいんですね。良いところしか書いてなくてもOKだと思うのですよ。たとえばレストランとかで「Hanako」のような。
芸術的にどうなのか、演劇的にいいのかどうかという評論家や雑誌ごとの価値基準があると、ジャンル分けもしやすくなると思うんです。観る側からすると、ちゃんとジャンル分けされているほうが選びやすいですからね。
それともう1つ。レベル分け。
やっぱり、全然観たことのない人達にとっては、立ち上げたばかりの劇団と、長年の経験があって、ある程度のレベルにいっている劇団の違いが、やっている劇場とかで分けられると一番分かりやすいですよね。
ただ、分けられる方にしたら、自分も含め、たまったものじゃないですけどね(笑)。反対すると思うし。
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Q・演劇だけで生活は出来ますか?
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古城と私は出来てます。劇団以外の演劇関係の仕事をして、というのが含まれていますが。
私は日本劇団協議会からの仕事(データ誌の編集デザイン入稿まで、その他細かい仕事)や、歌舞伎関係の団体のチケット作成、はては受付まで。芸術見本市とか他劇団のとかやってます。
製作事務所の外部スタッフとして呼ばれることもあります。あ、照明も図面頂ければ吊り込めますよ(笑)
でも、役者さんはバイトしてますね。だから、なんとかしたいんです。
劇団に対する助成じゃなくても、劇場に対する助成としても出てくれればいいんですけどね。そうしないと難しいですよ。
演劇はチケット料金が高いと言われるけど、人件費を考えると、実は高くないんです。演劇がコピーの出来ない、ライブの芸術であることをちゃんと理解してもらえれば、ライブの面白さを分かってもらえれば、値段も納得してもらえると思うんです。
制作として、それをどう伝えるか、というところが難しいんですけどね。
僕らは日本劇団協議会に所属していますが、小さな団体でこつこつやっていてもなかなか上には通らない事が多いですよ。だからこそ、大きな団体に所属して、上を突き上げてゆくんです。これが1番効果的だと思います。もちろん、仕事が増えて大変ですけどね。(笑)
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今回の取材を通して感じたことは、「一跡二跳」の社会に向けられた姿勢の強さです。
劇団が描きつづけるテーマや、劇団としてのコンセプトももちろんですが、演劇が社会の中でどういうふうに存在するのか。劇団が活動を続けてゆくために、制作としてどういうふうに動いてゆくのか。内部の活動だけを考えるのではなくて、外に目を向けて活動して行くことで、自然と社会に影響を及ぼして、かつ、自分たちの成長に繋げていくわけです。
最後に、多くの仕事を抱えている岸本さんに、制作者として活動の幅を広げるコツをお伺いしました。
「自分の所だけで作業してると広い視点を持てなくなりがちです。外部の手伝いや仕事をすることで、例えばチケットの管理方法、当日受付の体勢の取り方などなど。いろんな劇団を参考に、自分の劇団にあったやり方を作っていけます。
ただぼ〜っと手伝っていてはいけません。特に、大きな所、商業系の所などでは自分では考えもしなかったことに出会えたりします。自分なりのこだわり、特徴を持つことが仕事が増える秘訣だと思います。」
若手制作者の皆さん。社会の海は、想像以上に広いですよ!
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