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粋なエンターテイメントを!
   〜スーパーエキセントリックシアター〜


日本で活動している劇団は数限りなくあります。しかし、そのほとんどが一般には知られていないのが現状です。日本の演劇業界が、他のエンタテイメント業界、アート業界に比べ、マイナーであり続けているには、必ず、明確な問題があるはず―――。

このコラムでは、現在活躍している劇団に取材をし、劇団の現状やそれぞれが抱えている問題点、演劇が広く社会に認識されるにはどうしたらいいのかなどのテーマを共に考え、演劇の魅力をより多くの方々へ知っていただくための方法を考察してゆきます。

第9回目の今回は、良質なエンターテイメントにこだわりつづける劇団「スーパーエキセントリックシアター」です。


●スーパーエキセントリックシアター(SET)

1979年、解りやすく、誰もが楽しめるサービス精神旺盛なエンターテイメントな舞台を創ろうと、座長の三宅裕司を中心に結成された。

世の中に訴えたいテーマを、笑いや音楽、アクションなどで楽しく表現する「ミュージカル・アクション・コメディー」というジャンルを確立。SETの役者たちは、笑い、アクション、アクロバット、ダンス、唄、楽器などの技を常に磨き続け、よりエンターテイメント性の高い上質な舞台創りにチャレンジし続けている。


●SETの稽古場へ突撃取材を行ないました

新作「タイツ魂」を演出している赤堀二英さん、創立以来、三宅さんの右腕として演出助手を務めてこられた八木橋修さん、制作の鈴木庸子さんにお集まり頂き、SETの活動と、今後の展望についてお伺いしました。


Q・新作「タイツ魂」とはどんな作品なんですか?

赤堀: 改まって聞かれると、ちょっと照れちゃうんですが、とにかく笑える作品です。「タイツマンズ」って名前の通り、衣装は全身総タイツのみなんです。で、例えば黒のタイツでカラスになったり、茶色のタイツで馬になって、競馬場という設定でタップダンスをしたりと、色々な身体表現を駆使した、オムニバスコメディです。こんな時代だからこそ、腹の底から笑ってもらって、幸せになっていただければと思います。


Q・10月には本公演もありますよね。

八木橋: 次回は、「戦争」をテーマにしたものです。
今年の戦争(イラク戦争)もそうですし、2年前の「9.11」からの流れですね。日本人として反戦というものを訴えていかなければいけない、という思いです。

今回は、座付きの作家ではないんですが、「こういう作品があるので、座長に読んでもらいたい」ということで出会いました。

勿論、座長は「今やらなきゃ!」という事で、決定しました。エンターテイメントでありながらも、社会にメッセージを送ってゆくことが、“表現者”としての務めですからね。


Q・作品を作る上で、一番こだわっている事は何ですか?

八木橋: 何よりもお客さんに喜んでもらう事ですね。そのためには、約2時間の作品中に、最低120個の「ギャグ」を入れること。これが、旗揚げ当時からずっとこだわっている事なんです。1分に1回笑えるという計算です。

で、その中にテーマがあってストーリーを作らなければいけないわけですから、あまり無駄なものは入れられない。それでいて、ストンと落ちて面白いものを120個以上というのを心がけています。

テーマをギャグのオブラートに包みながら、最終的には「そういうことを言いたかったんだ」と、それに感動していただきたい、というつくりなんですね。


Q・テーマを伝える手段として「笑い」を選んだのでしょうか?

八木橋: もともとお笑いをやりたいというのがあったんですよ。東京の喜劇を復興させたい、というところで劇団をつくったんです。

三宅は、生まれが神田なんで、小さい時から、映画や、演芸などのあらゆる要素の笑いに触れてます。なので、江戸っ子の粋な、決して下卑ではない笑い。お客さんを笑わせるけど、下ネタはやらない。テレビやCMネタ、客いじりをしない、ということを鉄則としてギャグをつくります。

別に、そういうのが全部悪いというわけではないんです。ただ、質の高さを保つためには、そういうカセを作ってやっていかなければいけないということですよね。

赤堀: ギャグ以外にも、京劇の人たちを呼んだり、民謡の歌手を呼んだりするんですが、劇団員も彼らに負けないように、1年がかりで必死に練習するんですよ。津軽三味線にアクロバット、ゴスペル。綱渡りを作品のクライマックスに置いた時には、木下大サーカスに弟子入りした人もいました。

「うちはギャグだけではないぞ」という座長のこだわりですよね。お笑いだけじゃない、芸もあるし、役者として肉体の限界まで挑戦してゆくし、色んなエンターテイメントの要素を盛り込んでいけるぞ、というね。


Q・お客さんを増やしてゆくために、どんなアプローチをしてきましたか?

八木橋: 僕らは、劇団員がチケットを売るのが前提ですね。それと、マスコミを両立させる、というのも基本なんですよ。

レギュラー番組を持っている人間は仕方ないですけど、レギュラーのない人間は、本番2週間前まではマスコミを優先させる、というのが鉄則なんですね。当時では、そういう小劇団はとても珍しかったです。

ただ、最近はそういうところも多いですから、僕が今思うのは、「口コミ」だと思いますね。良いものをみせて、多くの声をもらうこと。

そして、後押ししてくれたお客さんへのケアも大切ですね。DMであったり、サポーターシステムであったり、ファンクラブであったり。  

あとは、「劇団」という単位であれば、公共の施設であったり、文化庁の助成事業など、良質な舞台を作るための事業に参加してゆく、というのも大切だと思うんですよね。

今、若い人たちは、プロデュースシステムというものを盛んに行なっていますけれども、劇団という1つの単位というものも決して悪いものではないです。業界も若い力を求めてますし、そういう横のつながりを強化していけば、また新しいムーブメントが生まれてくると思うんです。


Q・今の演劇業界と昔の演劇業界の違いはありますか?

八木橋: 劇団という形じゃなくなってきたな、と思いますね。劇団であっても、客演が多かったり、劇団自体が少人数だったり。

確かに、ベストキャスティングで、よりいいものが作りやすいのかもしれませんが、昔は、人間関係や信頼関係から出来るチームワークの演技が当たり前でしたから、演劇の構造が変わりつつあるのかな?と思います。

それと、演劇業界の運営をを支えている演劇鑑賞会なんかも、時代と共にニーズが変わってきてます。観客の層も変わってきているし、観客の数が確実に少なくなってますから、今までのようなお芝居だけではなく、もっと若い人中心のお芝居を作らなければいけない時期になってきてますね。

よくCDが売れなくなったのは携帯のせいだ、なんて言われてますけど、本当に若い人たちが演劇を見ない、コンサートにも行かない、というのは、非常に素晴らしい経験を若いときに逃してしまうことだと思います。コンサートにしても演劇にしても、感受性の強い時に経験してもらいたいものなので、そういう努力をしていかなければいけないと思いますね。


Q・どうすれば若い人を劇場に足を運んでもらえると思いますか?

八木橋: それは、僕らも教えてほしいです(笑)。
売れてるタレントを出すことも一つの手段でしょうね。堂本光一君の舞台のチケットは、ファンクラブ会員しか手に入らないくらい売れてますから。

そういうところで、ライブの楽しさ、演劇の楽しさを知って、他の劇団の舞台にも足を運んでくれると良いですけどね。

鈴木: 今、ジャニーズとか、ジャニーズJr.とか、モー娘。とかを観る人はいても他に波及していかないんですよね。うちも「SETしか観ない」というお客様もいらっしゃいますけど、「舞台そのものが面白い、だから他の劇団も見てみたい」というふうに広がらないのが、本当に辛いですね。

どんどんとお客さんの年齢層が上がっていきますから、そこの若返りというのは至上命令です。

ただ、ここ数年で、「今までのような演劇鑑賞会の演目では子どもが観ない」、「もっと時代にあったものを」ということで、高校などから私たちにお声が掛かるようになりました。学校でコメディを見せるのは、これまではあまりなかったですからね。

これは、長年の草の根的な運動が実ったものです。こうやって、少しずつでも、若い人たちに舞台の楽しさを知ってもらいたいと思います。


ド肝を抜く演出と、エンターテナーとしての技がたっぷりと詰まった舞台で、常に観客を魅了し続けるSETも、「観客層の若返り」、という点では試行錯誤を繰り返しているようです。

そして、八木橋さんがインタビューの中でこう語ってくれました。

「創立メンバーはどんどんと年齢が上がり、今までのような舞台は続けられない。その分、江戸の喜劇の復興という、もともとの大きな夢に力を注ぐことも、大切な仕事です。また、劇団として蓄積してきたエンターテイメントへのこだわりは、赤堀を始め、若手の中に脈々と受け継がれています。この流れをバックアップしながら、時代の感性にあった笑いを提供し続ける。この2つが、これからのSETの大切な仕事です――」

古き良きものを愛し、その技を時代にマッチさせながら、次の新しいエンターテイメントを創作し続ける。そのために、SETの内部では、どんどんと次へ生まれ変わる努力を続けているのです。

観劇人口が確実に減っている中、「小さなパイ」の取り合いに必死になるのではなく、自分たちのこだわりを追及しながら、そこで得た要素を現代にフィードバックさせ、新しい時代を切り開いてゆくこと。それが今、劇団全体に求められているのではないでしょうか。


☆★☆★ SET公演情報 ★☆★☆

劇団スーパー・エキセントリック・シアター 第41回本公演
『究極音波兵器 〜ULTIMAT ESONIC ARM〜』

失職し、恋人にもふられ、自殺まで考えた男がやけになって身を投じた宗教団体、そこは平和運動や動物愛護などにも力を入れていた。 教祖に見込まれた男は、霊視能力を開眼して次々と予言を的中させ、教団の広告塔になる。そして教祖から与えられた指令は、某軍事大国が秘密兵器を開発していることを世間に知らしめ、平和を守るためには先制攻撃しかないと「予言」することだった…。

作/木和 語 演出/三宅 裕司
出演/三宅 裕司 小倉 久寛 劇団スーパー・エキセントリック・シアター

日時: 2003年10月4日(土)〜10月19日(日)
会場: 東京芸術劇場・中ホール

■チケットぴあ
0570-02-9999/9988
03-5237-9966 (Pコード:326-749)
■ローソンチケット
570-06-3003 (Lコード:37159)
0570-00-0403/0407(オペレーター対応:10:00〜20:00)
■e+(イープラス)
http://eee.eplus.co.jp/(パソコン・携帯電話対応)
■CNプレイガイド
03-5802-9999

お問い合わせ: SETインフォメーション
TEL:03-3420-2897 (平日10:00〜18:00)

SETホームページ>>>
      http://theater.nifty.com/set/
(構成/文・O)2003/7/28