under


 
 
世界へ羽ばたけ、日本のサムライ!〜剱伎衆かむゐ〜

日本で活動している劇団は数限りなくあります。しかし、そのほとんどが一般には知られていないのが現状です。日本の演劇業界が、他のエンタテイメント業界、アート業界に比べ、マイナーであり続けているには、必ず、明確な問題があるはず―――。

このコラムでは、現在活躍している劇団に取材をし、劇団の現状やそれぞれが抱えている問題点、演劇が広く社会に認識されるにはどうしたらいいのかなどのテーマを共に考え、演劇の魅力をより多くの方々へ知っていただくための方法を考察してゆきます。

第11回目の今回は、日本の「殺陣」というジャンルをもって世界へ羽ばたく俳優集団、「剱伎衆かむゐ」です。


●剱伎衆かむゐ(けんぎしゅう かむゐ)

1998年2月、島口、河口、真瀬の3人で結成した俳優集団。

時代劇の殺陣が低迷する中で、立ち廻りにこだわり、殺陣というジャンルをかむゐ独自のスタイルで、世界に誇れる日本の武士道の1つとして確立することを目指している。

ニュージャンルのアートとのコラボレーションも積極的に行い、海外ではラスベガスなどでのショーにも出演。また、10月に公開されるクエンティン・タランティーノ監督5年ぶりの映画「KILL BILL」の殺陣指導、振り付け、出演を果たしている。


●世界に誇る日本の「殺陣」

「剱伎衆かむゐ」は、日本文化としての「殺陣」にこだわり、「殺陣」のみでテーマを表現し続ける、日本でも数少ない殺陣俳優集団です。

今回は、「KILL BILL」の殺陣指導、振り付け、出演をされたリーダー島口哲朗さんと、河口博昭さんにお集まり頂き、日本の殺陣について、彼らのこだわりをお聞きしました。


Q・ お芝居の中の殺陣やアクションというのは多く拝見しますが、かむゐさんのように殺陣のみの表現スタイルというのは珍しいのではないですか?

河口: まれに台詞なしで殺陣だけでやっているところはあるにはあるけど、踊りに近くなっちゃうんじゃないかな。僕たちの殺陣は、「生きるか死ぬか」という、日本本来の死生観であったり、美意識であったり、そういうものを表現しているんで、他にはこういうところはないでしょうね。


Q・ 殺陣だけで表現する、そのこだわりについてお伺いしたいのですが。

島口: ダンスで言えば、振付師がいて、メインのダンサーがいて、バックを固めるアンサンブルがいて、という感じじゃないですか。

殺陣の世界もそうで、役者ではない「殺陣師」と言うのがいて、スターさんがいて、斬られ役の剣友会とかがいるという感じで、各々の専門色がどうしても強いんですね。

でも、それっておかしくないか?という葛藤があったんです。お芝居でもそうですけど、僕らは殺陣を会話として捉えていて、相手役とのコミュニケーションができなかったら殺陣は成立しないと考えているんです。ずっと話を聞くだけの人がいても辛いでしょ。

だから、かむゐでは、振り付けもするし、斬り役も斬られ役も全てやります。そして、作家が文章で、画家が絵画でテーマを表現してゆくように、僕らは殺陣でテーマを表現してゆきたいんです。

そして、かむゐ独自の立ち廻りを確立させて、日本文化として高めてゆきたいんですよ。歌舞伎とか能とか日本舞踊とかと同じように、「殺陣」という言葉はあるけど、協会だとか殺陣というもので表現している人っていうのはほとんどいないんです。だから、「殺陣」というジャンルを確立して、日本文化として世界に発信してゆきたいんです。


Q・ 日本文化の1つに高めるというのは容易なことではないですよね。

河口: うん。僕らの世代だけでは無理だね。だから、僕らが繋げてゆく作業というのもやってゆきたいんですよ。

昔の人って「見て盗め」って言うじゃないですか。でも、若い人ってそうもいかなくて、なかなか伝わって行かないんだよね。だから、殺陣の世界で言うと、昔バリバリやっていた凄い人たちがいて、パッカリと中間層が抜けてアクションの人たちがいる、っていう感じなんだよね。

それに、時代劇って、すごく少なくなってきたでしょ。だから需要も少なくなってきた。その分何を売るかと言ったら、Vシネや洋服を着てやるようなアクションドラマがが出てきたりして。そういう頃に育った人たちが、日本らしい殺陣ができるかというと、なかなかできなかったりするんだよね。

島口: でもね、ハリウッド映画、「KILL BILL」の撮影に行った時に、マトリックスのアクションコーディネーターとかジャッキー・チェンの「酔拳」の監督をやった香港の巨匠で、ユエン・ウーピンっていう人がいたんですけど、そこのチームの人たちっていうのはすごく身体能力があるんですよね。今の日本のアクションの人たちが行くと話しにならないですよ。

でも、僕たちはいつもやっている当たり前のことをやって、お互いにすごく共感しあって映画を作ることができたんです。

何故かって言うと、すごく漠然としてしまうのかもしれませんけど、空気が違うんですよね。香港アクションっていうのは、同じリズムで、テンポ感で見せてゆく「振り」なんですよね。

それに対して、日本刀でも空手でも究極は一撃必殺じゃないですか。僕らの殺陣も、「1回当たったら死ぬ」っていう感覚でやっているんで、生と死のはざまの究極の状態での芝居なんです。1つ1つが命取りになるわけですよ。だから、目線とか、刀を抜くまでの空気からしてすでに違う。侍独特の、日本の死生観、美意識というか、空気感っていうか、間とかいろいろ。全てがもっと深いはずだっていう、そういう感性というのをすごく共感しあって作ったんですよ。

僕たちも歌舞伎とかやってなかったら分からなかったかもしれないけど、やっぱり、それが日本の伝統芸能の中に息づいているんですよ。独特のものが。

それが日本の良さであって、決してアクションではないんですよね。一見遅く見えても、居合いの達人のおじいさんなんかはすごく早いですしね。もっと深いものなんですよ。でも、そこに目がいかないから向こうの人に見向きもされない。アクションやらせたら、香港の方がすごいじゃん、って言われるんですよ。

そういう意味でも、僕らのやっていることは間違っていなかったな、と改めて思ったし、これを伝えてゆかなければいけないと思いましたね。


Q・ 映画での振り付け、出演以外に、どいういった活動をされているんですか?

島口: かむゐオリジナルの舞台であったり、何かのイベントのゲストとして出演したりしてます。それ以外に面白いのがコラボレーション。邦楽とか、和太鼓、三味線、落語、ハードロック、テクノ、トランス、シンセサイザー…。そいういう音のジャンルと組んで、その感覚をお互いに楽しんだりとか。かなり幅広くやってますね。

他にも土地の伝説とか。地方に行った時に、その土地の伝説に沿って立ち廻りを作ったり。国も地方も問わないし、台詞もいらないですから。日本に限らず、海外の騎士道を武士道で表現してみたりね。無限だと思いますよ。

そして、そうやって地方に行った時に、殺陣教室とかを開いたり。僕たちの立ち廻りを見るだけではなくて、触れて、体験して楽しさを知って欲しい、文化を知って欲しいっていう活動ですね。


Q・ 今後のかむゐさんの展開を教えてください。

島口: プロの養成をしてゆきたいですね。

河口: かむゐの形を残してゆくっていうのが最大の目標なんで、かむゐのワークショップも、もう3年以上やってるんだけど、そろそろレベル分けをしていかないといけないですよね。で、日本人がバレエをやっているように、海外で殺陣を習えるようなスタンスを作ってゆきたいですね。

島口: ハリウッドの俳優もやりたがっているんですよ。ただ、教えてもらえるところがないから香港アクションをやっているんですよ。青龍刀を日本刀に持ち替えて動いている感じですからね。海外に侍を伝える人がいないですから、かむゐがやっていることをそのまま持っていきたいですね。

河口: で、やっぱ逆輸入かな。うちらが殺陣を文化として確立して行こうとしても、現状では逆に時間がかかったり、いろいろと障害が多かったるするんでね。

島口: 本当の殺陣がなくなってきているこの現状を嘆くよりも、誰かが変えるしかないですよね。で、誰かが変えるんであれば、自分達が頑張って、カタチを残すしかないですよね。言ってるだけじゃ仕方ないんで。逆輸入も含めて、土壌作りからはじめて、僕らが変えたいですね。この世界を。


北野武監督の「座頭市」がベネチア映画祭で「監督賞」を受賞。10月にはクエンティン・タランティーノ監督の「KILL BILL」の公開。12月には、トムクルーズ主演の「ラスト侍」が公開。と、ここ最近、日本のサムライがにわかに世界中で盛り上がっている中、改めて「日本文化」「日本の心」「日本の美」を考える方も多いのではないでしょうか。

島口さんは、「KILL BILL」の撮影を通じて、次のように語っていらっしゃいます。

「日本の現代アクションに見向きもしなかったハリウッドの俳優やスタッフが、僕の振る剣、『殺陣』を食い入るように見てくれました。単なる斬り合いの形ではなく、ある意味究極の精神状態の中の芝居、生と死のはざまの一瞬の美、それを表す日本の『殺陣』に誇りを持ち、これからも創り続けてゆきたいです。」

日本の良さを見つめなおすことは、自分を見つめなおすことでもあるのではないでしょうか。人に夢を与える仕事だからこそ、常に振り返り、自分たちの良さを磨き、誇りをもって進んでゆくことが大切なのです。

日本の文化を世界へ伝える「若き侍」たちに、今確実に、世界からの注目が集まってきています。これからも目が離せませんよ!


☆★☆★ 剱伎衆かむゐ情報 ★☆★☆

●映画 「KILL BILL」
2003年10月25日公開

監督 : クエンティン・タランティーノ
出演 : ユマ・サーマン
      ルーシー・リュー
      ダリル・ハンナ
殺陣指導・振り付け・出演 : 島口 哲朗 (剱伎衆かむゐ)
殺陣指導・出演 : 真瀬樹里 (剱伎衆かむゐ)

☆島口さんが全ての振り付け・指導をしたクライマックスシーン「雪の庭での1対1」は必見です!

KILL BILL 公式ホームページ http://www.kill-bill.com/
日本語版公式ホームページ  http://www.killbill.jp/


●出演 「あっ!とおどろく放送局」

2003年10月〜 毎週金曜日 21:00〜22:00
「WAじゃ。〜We Are Japanese〜」

ドラマ&映画チャンネル 「KAMUI IN SHIBUYA BOXX」

詳しくは、「あっ!とおどろく放送局」を御覧下さい。
  >>> http://tandm.tv

剱伎衆かむゐホームページ
  >>> http://www.k-kamui.com/

(構成/文・O)2003/9/22