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「演劇の楽しさ」を広めるためには?〜亜細亜象演劇卸売市場〜

日本で活動している劇団は数限りなくあります。しかし、そのほとんどが一般には知られていないのが現状です。日本の演劇業界が、他のエンタテイメント業界、アート業界に比べ、マイナーであり続けているには、必ず、明確な問題があるはず―――。

このコラムでは、現在活躍している劇団に取材をし、劇団の現状やそれぞれが抱えている問題点、演劇が広く社会に認識されるにはどうしたらいいのかなどのテーマを共に考え、演劇の魅力をより多くの方々へ知っていただくための方法を考察してゆきます。

第13回目の今回は、「亜細亜象演劇卸売市場」です。


●亜細亜象演劇卸売市場(あじあぞう・えんげき・おろしうりいちば)

1999年、寺師良克(てらし・よしかつ)氏を中心に旗揚げされた小劇団。

テレビの技術職に就いていた寺師氏が、映画や音楽が同じ娯楽文化でありながら、演劇というジャンルだけがマイナーである事に疑問を持ち旗揚げされた。この先演劇が一般化され、窓口が広がっていく為に、誰もが受け入れ易く、笑えて泣けて、それでいて質の高い作品づくりを目指している。

映画から、社会現象まで、あらゆるジャンルをヒントにし、寺師氏独特の人生観を盛り込んだヒューマンコメディーを、年に1〜2本ペースで発表している。劇団メンバーには、市川猿之助のスーパー歌舞伎の出演メンバーや、海外公演の経験を持つメンバーなど、実力派が揃っている。


●代表の寺師良克さんにお話を伺いました。

多彩な経歴を持つ劇団員を抱えた「亜細亜象演劇卸売市場」。ホームページを拝見すると、トップページから、かならず「劇団趣旨」にページが飛ぶように設定されています。そして、そこからは「ほかのジャンルに比べてマイナーな演劇を、一般的にするんだ!」という強い意志が感じられます。

そこで今回は、そんな「亜細亜象演劇卸売市場」の演劇業界に対する思いと、実際の活動内容を直撃インタビューしました。


Q・ 劇団趣旨をまず拝見して、「演劇業界をもっと一般に広めたい!」という強い意志を感じたのですが、このように思われたきっかけは何ですか?


お芝居をやっていらっしゃる方のほとんどが、中学や高校で演劇部に入っていたり、大学時代に劇団に入ったりして、早い頃から演劇というものに馴染んでいるでしょ。でも、僕が演劇の道に足を踏み入れたのは、本当に遅かったんですよ。

僕は、子どもの頃からテレビドラマが好きで、なんとなく「演技」や「役者」というものに憧れてはいたんです。でも、「演劇」に関する情報が少なくて触れる機会がありませんでしたし、「演劇」という言葉を知ってはいても、ピンときてなかったんですよ。

高校や、大学でも、演劇をやっている人が身近にいたりはしたけど、特別やりたいとは思わなかった。というよりも、付き合いで仲間の発表会を観に行くような感じで、他のものを観てみようとかっていう気にはなりませんでした。

なんといっても高いし、何やってるかわかんないし。そんなところに何千円も使うんだったら、映画を見てたほうが楽しいと思ってました。

でも、あるお芝居に出会って変わりました。「こんなに面白いものがあるんだ!」と感動しまして、「これをやりたい!広めたい!」と。で、遅ればせながら上京して劇団を旗揚げしたわけです。
30歳の時でした。


Q・ 普通の生活をしていて、30歳で演劇の道に方向転換するのは、すごく勇気が必要だったと思うんですが、実際に演劇を始めてみて、どうですか?


予想以上の経済的な苦しさを感じました。演劇という世界の市場があまりにも狭すぎるし、情報も少なすぎる。生活費を捻出する為に、バイトをしなければいけないし、そうなると劇団のことを考える時間が減ってしまう。     

はじめに抱いていた希望を実現するというよりも、まず、自分たちの足元を固めることで精一杯になってしまって、次のことに進んでゆけないことがもどかしくて仕方がないですね。

僕はまだいいんです。でも、こういう状況がこの先ずっと続いて行くのは本当にまずいと思うんです。だからこそ、次の世代の人たちが、もっと良い環境でお芝居ができるように、今、僕らが頑張らなきゃいけないと痛感します。

僕は、たまたま30歳まで普通のサラリーマンとして、外から演劇界を見ていました。だから、お客さんであったり、演劇をあまり知らない一般の方々と同じ感覚を持っていると思うんです。そういった感覚で演劇界のことを考えると、本当に危機を感じるんです。

なので、「どうやったら演劇を一般的にしてゆけるか」ということを、演劇をやっている側の感覚ではなく、演劇界を外から見ている側の感覚で考えて行きたいですね。


Q・ 演劇の何がネックだと思いますか?


「値段」ですかね。

やっぱり、演劇は高いと思いますよ。確かに、ライブで人が生きて演じていることへの価値って大切でしょうけど、何億円も掛けて作った映画が1,800円で観られるのに、演劇は2,500円以上取るところがほとんどですから。

もっと安くなってくれば、もっと普及しやすいと思うんです。


Q・ でも、実際の制作費を考えると、チケットの値段ってそれほど下げられないんじゃないですか?


ええ、そうですよね。劇場費だけでもばかになりませんから。

悪循環だと思います。値段を下げたい。しかし、お金がかかる。値段を下げれば大きな赤字になる。公演回数が減る。観客への情報が減る。観客が増えない。演劇が広まらない……。

だからこそ、国や地方、劇場、劇団が手を合わせてどうにかしてゆかなければいけないと思うんですよ。劇場費が安くなるだけでもかなり違うでしょ。助成金だって、大きな劇団がごっそり持って行ったりしてるけど、本当に必要としているところに助成されているかとなると、疑問があります。

劇団だけが頑張ったって、限界があります。でも、実際に現場でお客さんに接している劇団の人間が声を上げてゆかないと、どうにもならないですよね。そして、その声を国や地方団体に、真剣に聴いて欲しい。

劇場を建てるのはいいけど、実際に使う人間の声を尊重しているとは思えない部分って多いと思うんです。だから、もっと劇団の人間を受け入れて、話をして、一緒に質が高くて、安価な演劇をお客さんに提供してゆけるようにしないと、この苦しい現状は一向に変わらないと思いますね。


Q・ 演劇を一般に広める為の活動として、どういったものをお考えですか?


正直、自分たちの劇団の動員数を増やすことが先決になってしまって、特別に次の展開を迎えることをしていません。というよりも、出来ないのが現状です。理由は、時間とお金。

公演をするとなると稽古に2ヶ月間はかかるので、年に2〜3本が限界です。そして、小劇団のほとんどがそうであるように、公演のない時期には僕たちもバイトをしています。そうなると、次の展開を考えていても、実行にうつす時間が全くなくなってしまうんです。

稽古期間を短くできればいいのかもしれませんが、それではクオリティーの高いものを目指せなくなってしまう。質を落とす事は絶対に許されませんからね。

本当は、公演をドンドンとやって、まずは観てもらえる機会を作りたいんです。我々も趣味の枠を超えプロという意識でやる以上は最低限の料金を徴収することは必要です。ただ、私が過去に書いた作品に関して必要として頂けるならばどんどん提供して、更に多くの方々の目に触れる機会を増やしていゆきたいし、それが役目だと思っています。

種まきみたいな感じですかね。とにかく、まずは観てもらって、「演劇の楽しさ」に気づいてもらう。そうすれば、必ず演劇が一般的になる日が来ると思うんです。

そして、それがどんな分野であろうと、作家も役者も勉強し、常に万全の体勢を作っておくこと、演劇という垣根を取り払って、自由に外へ行き来できる環境を整えること、そこへ向けての努力を惜しまないこと、それが演劇の発展につながると確信しています。

ただ、そういった活動をするには、小さな劇団という単位では無理です。国や地域のバックアップがないと。観てもらえれば、必ず楽しんで満足してもらえる自信があります。だからこそ、僕たちの声をもっともっと真剣に聴いて欲しいですね。


日本に数多くある劇団のほとんどが、公演機会の確保と財政難を問題にしています。これは、観劇人口の少なさが大きな原因となっています。有名タレントを起用した演劇公演が増えたことで、観劇人口も増えてはきているようですが、それが必ずしも演劇業界の底上げには繋がっていません。

多くの公共ホールでは、特に、20〜30代の観客層の確保が課題となっています。しかし、20〜30代の方々が演劇を決して観ないというわけではなく、有名なタレントさんが出演している舞台は観るけど、演劇に対する興味をもつまでには至っていないというのが問題なのです。

寺師さんがインタビューの中でおっしゃっていたように、何をやっているのか分からない劇団に何千円も払いたくない、という心理が大きく作用している可能性も高いでしょう。この問題を解決するためには、低料金の演劇公演を数多く行い、「演劇の楽しさ」を知っていただくことからはじめることも、1つの案なのかもしれません。

勿論、演劇が広まるまでの、今まで以上につらく厳しいイバラの道と、チケット料金と、人件費を含む制作費とのバランスとの戦いが待ち受けています。また、国や地方団体を動かすための日々の努力が必要でしょう。しかし、そこに力を注げるだけの時間とお金の確保という問題が、またしても大きくのしかかってくるのではないでしょうか……。


★☆★☆ 亜細亜象演劇卸売市場 第8回公演決定! ☆★☆★
  『夜逃げ前』

4月9日(金)〜11日(日) 麻布die pratze

昔ながらの風情が色濃く残る東京は下町、現代版一心太助の様な男、林田寛治とその妻琴乃は借金の返済に行き詰まり夜逃げを決行しようとするが、二人を頼って様々な人間が悩み事を持ち込んでくる。夜逃げはしなければいけないが皆も助けたい、それが災いしてもう林田家はしっちゃかめっちゃか…。前代未聞、大ドタバタ人情喜劇の究極編!


詳しくは、亜細亜象演劇卸売市場HPを御覧下さい!  
>> http://www.ajiazou.com
(構成/文・O)2003/11/24