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演劇空間に輝きを!〜トリのマーク(通称)〜

日本で活動している劇団は数限りなくあります。しかし、そのほとんどが一般には知られていないのが現状です。日本の演劇業界が、他のエンタテイメント業界、アート業界に比べ、マイナーであり続けているには、必ず、明確な問題があるはず―――。

このコラムでは、現在活躍している劇団に取材をし、劇団の現状やそれぞれが抱えている問題点、演劇が広く社会に認識されるにはどうしたらいいのかなどのテーマを共に考え、演劇の魅力をより多くの方々へ知っていただくための方法を考察してゆきます。

第14回目の今回は、「トリのマーク(通称)」です。


●トリのマーク(通称)

1991年に活動をスタート。ネーミングが「通称」と表記されているのは、ドードーというトリのイラストが彼らの劇団名。観る人の想像力に任せて、好きに呼んで欲しいという想いで名づけられた。

上演することによって、その場所が輝き、場所の新たな魅力を見る人たちに伝えることができたなら…。 そんな想いから、場所に合わせて、作品を書き下ろしている。

美術館やギャラリー、歴史のある建物、そして野外など―。 おもしろい場所を見つけ、そこからイメージしてひとつの世界をつくりあげることを得意とする。


●トリのマーク(通称)にインタビュー

もともとは劇場でお芝居をしていたのが、劇場という密閉された空間に違和感を感じ、太陽の光の当たる、野外やギャラリー、本屋さんなど、いろいろな場所に演劇空間を求めて飛び出したトリのマーク(通称)。

今回は、主宰の山中正哉さんと、製作兼メインキャストの柳澤明子さんにお集まりいただき、トリのマーク(通称)の活動内容と、今後の展望についてお伺いしました。


Q・ ホームページを拝見すると、小さなカフェやギャラリーなど、いろいろなところでやっていらっしゃいますが、トリのマーク(通称)の作品のコンセプトはどういうものですか?

山中: 「日常を演出する」と言うか、こういう日常があってもいいんじゃない?と思えるような作品を目指しています。

居心地のいい夢ってあるでしょ。でも、その夢っていうのは全く非日常な出来事ではなくて、日常に近いものが出てきていて、でも現実世界よりも何だか居心地がいい。

居酒屋で友達と飲んでいる時だって、レストランでおいしい料理を食べている時だって、日常だけどちょっと違う日常で居心地がいい。

劇場やお芝居を観る空間も、そんな居心地のいい日常であって欲しい。それがコンセプトですね。


Q・ 実際に営業している本屋さんや造船所、観光名所なんかでもやられてますけど、お稽古はどうやっているんですか?

柳澤: 会場となる場所は、通常お店や会社として営業していらっしゃるので、そんなに早くから入れません。たいてい2〜3日前に現場入りするんですけど、いろんな変更をしてゆきます。

それに、普通に人が通行している場合もあるので、思いもかけないようなハプニングも続出で、常に稽古場ではトラブルシュミレーションをしていますね。


Q・ 今年は、「ギロンと探偵の12ヶ月」と題して、12ヶ月連続公演をされましたが、その中には「郵便での公演」がありました。これは、どういうものなんですか?

柳澤: 地方にお住まいで、なかなか東京まで観にいらっしゃれないお客様も多くいらっしゃいますので、そういった方々にも楽しんでいただこうと企画したんです。

公演日から2〜3日に1度、ハガキが届くんです。そして、それら全てを並べると1つのお話になっているわけです。

山中: ここにもトラブルがあって、「家族がDMと間違えて捨ててしまったので、もう一度送ってください」という問い合わせをいただいたりしました。(笑)でも、とても好評でした。お客様を身近に感じられて、自分たちも面白かったです。


Q・ 都心だけでなく、広島などの地方でも公演をされていますが、営業はどのようにおこなっているのですか?

山中: 自分たちがやりたいと思った場所へ交渉にいくんですけど、それが結果的に営業になっているのかな。ここでやらせて欲しい!と言って通っているうちに、何だか予算を組んでくれたり…。だから、営業らしい営業はしたことがないんです。

柳澤: それ以外は、全て口コミで広がっている状態ですね。ありがたいことに、来年もそういった形でいろんな所から公演のご依頼を受けて、もうスケジュールがいっぱいになっちゃって。なので、今は営業をする時間がないのが現状ですね。


Q・ こども劇場でのワークショップや地域とのかかわりなど、アウトリーチにも力を入れていらっしゃいますが、トリのマーク(通称)さんから見て、今後の演劇界はどうなってゆくと思いますか?

山中: ワークショップも、アウトリーチと呼ばれる活動に関しても、もともとはこちらからお話を持ちかけたのではなく、たまたま僕たちの活動が街や施設の活性化に繋がるということで、お話をいただいたものだったんです。

ただ、実際に公演をやらせていただいて、地域のいろいろな方々が動いて協力してくださったり、会場に観にいらっしゃった方が、「この建物にはこんな魅力があったのか!」と発見をして下さっているのを目の当たりにして「自分たちのやりたい場所だけではなくて、どんな場所であっても公演をしてゆけるようにならなければ」と思いました。

そうやって劇場以外でやることで、演劇を観たことのない人たちの目に触れる機会が増えると思うんです。そうすれば、もっともっと演劇が日常の中の居心地のいい空間になってゆけるんじゃないかと思っています。

柳澤: 今、私たちの公演を見て、「私たちもやってみたい!」と、ギャラリーやおもしろいスペースなど劇場以外での公演をするようになった劇団もいくつかあります。そうやって、いっぱい真似てくれると、すごく嬉しいです。

1人でも多くの方の目に触れて、1つでも多くの場所や街を元気にしてゆきたい。そうすれば、きっと演劇ももっとたくさんの人に観てもらえるようになると思うんです。

山中: 課題は、飛び出してきた「劇場」をもう一度見直して、劇場での公演でも「居心地のいい日常」を作り出すことですね。


口コミだけで確実に活動を広げていっているトリのマーク(通称)。それは、よっぽどお客様の感動を得ないことにはできないことです。

山中さんは、インタビューの中で次のように語ってくださいました。

「劇場の真ん中に立っている柱や、上演中は消灯される非常灯など、人が嫌がるものを別の視点から見ると、とっても面白くて、素敵になるんです。古びたお寺や、地元の人が行かなくなった隠れた名所、めったに人の入らないビルの屋上…、全てに輝く可能性が秘められているんです。

それらを掘り起こし、光を当ててあげたい。そして、居心地のいい空間にしてあげたい。それが演劇にはできるんですよね」

ただただ自分のためにお芝居をするのではなく、人を生かす、モノを生かす、空間を生かす…。そんな、他者を引き立てる作品だからこそ、口コミで広がることができたのではないでしょうか。


☆★☆★ トリのマーク(通称)公演情報 ★☆★☆

4月11日(日)日暮里◎諏方神社の社務所内広間 
タイトル等々、詳細は未定です。
随時、トリのマーク(通称)ホームページでお知らせしています。

トリのマーク(通称)ホームページ
  http://www.bananawani.org/tori/
(構成/文・O)2003/12/22