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演劇に新しい風を送りこむ 〜しずくまち♭〜

日本で活動している劇団は数限りなくあります。しかし、そのほとんどが一般には知られていないのが現状です。日本の演劇業界が、他のエンタテイメント業界、アート業界に比べ、マイナーであり続けているには、必ず、明確な問題があるはず―――。

このコラムでは、現在活躍している劇団に取材をし、劇団の現状やそれぞれが抱えている問題点、演劇が広く社会に認識されるにはどうしたらいいのかなどのテーマを共に考え、演劇の魅力をより多くの方々へ知っていただくための方法を考察してゆきます。

第15回目の今回は、「しずくまち♭」です。


●しずくまち♭(シズクマチフラット)

1991年、学習院大学在学中のナカヤマカズコが「にゃおにゃおProject」を旗 揚げ。2000年、シアターグリーン賞を受賞。2002年に「しずくまち♭」に改名した。

旗揚げ当初より、ライブ感を高めるために音響を使用せず、全て生演奏を用いてい た。改名を機に、より芝居と音楽を中心にした表現集団として生まれ変わる。常に生 の言葉と音楽で観客の想像力を喚起するスタイルが特徴である。


●代表のナカヤマカズコさんに、直撃インタビュー

結成当初より、まったく録音音源を使わない「しずくまち♭」。最近では、劇場だけではなく、カフェなどの小スペースでの活動や、子どもたちへの公演活動なども積極的に行っています。

今回は、代表でもあり、作・演出・出演もこなすナカヤマカズコさんに、生演奏へのこだわりや、子どもたちへの公演活動の魅力、今後の演劇界への展望をお聞きしました。


Q・まったく録音音源を使わず、生演奏だけを使用するのは、どうしてですか?


私は、演劇と言うのは「全ての時間を、その場で作って提供するもの」だと思うんです。お客様と一緒に、同じ時間を作り、過ごすためのイベントなんですよね。能や歌舞伎だって録音音源は使わないでしょ。昔から演劇は、同じ時間をともに過ごすイベントだったんですよ。

舞台で過去に録音された音楽を流す場合、「過去という時間が絡む」ということ自体に意味を持たせなければいけないと思います。またそれを意識した上で、録音音源を使うのか生演奏でゆくのか、ということを選びとらなければいけない、という風に考えています。

だから、生演奏が格好いいとかそういうことではなくて、物語も、空間も、音も、全てその場で作り出したい。それで、常に生演奏なんです。


Q・ 幼児にむけて、音楽児童劇(※)なども手がけていらっしゃいますが、これはどういったきっかけで始められたのですか?


私たちの作品の作り方のせいか、音楽関係の方からよく声がかかるんですよ。児童劇も音楽団体の方から、「一緒に何かやらないか」ということでお話を頂きました。

内容としては分かりやすいものを作るとか、きれいなお話にしようというつもりはありませんでした。観たときすぐには分からなくても何年後かに、「ああ、あれはこういうことだったんだ」とハタと気付くようなものにしたいなあと思って作りました。

一緒に時間を作って、一緒に過ごすことで、彼らの心の糧になって、いつか化学変化を起こして彼らの人生に何らかの影響を与えられれば、これほど素晴らしいことはないですよね。私たちの活動の醍醐味だし、それが活動の意義だと思いますから。


Q・ 昨年の11月には「Art Session 2003」と題して、様々なジャンルのアーティストとコラボレーションをされましたが、これはどういうイベントだったんですか?


とある詩を題材にした作品を募集したんです。そしたら、たくさんの方が作品を送ってくださいました。絵画に、衣装、オブジェ、舞台装置、ぬいぐるみ、その他色々。

その作品を見て私が物語を作って、作曲家が音楽を作って、小さなカフェでアーティストの作品を鑑賞しながら、朗読と音楽で味わってもらったんです。

うちのお芝居の作り方っていうのが、私が物語の構想を話すと、作曲家が音楽を作ってくるんです。で、その音楽を聴いて、また私が物語を作る、というように、台本と音楽が互いに影響を及ぼしあって一つの物語作品に仕上がってゆく、つまり常にセッションしているんですよ。

それと同じ手法で、他のアートとも色々とセッションがしたくて始めました。


Q・ 演劇と他のアートとのコラボレーションと言うのは、珍しいんじゃないですか?


そうですね。
演劇をやっている人って、映像とは絡むけど、それ以外のジャンルとの絡みがないですよね。劇団同士の交流はあるけど、それだけじゃ広がりが出ないというか、風通しが悪いと思うんですよ。

私たちは、演劇もアートという世界の1つの表現方法だと思っているので、いろんな表現方法がお互いに影響しあって、新しい表現が生まれるのが面白いと思うんです。

他のジャンルのアーティストって、結構気軽に他のジャンルとのコラボレーションをするんですよね。でも、演劇とのコラボが少ない。これって、すごくもったいないと思います。せっかくアートに興味を持っている方がたくさんいるのに、演劇には興味を持ってもらえない訳ですからね。


Q・ たくさんの人に演劇に興味を持ってもらうにはどうしたらいいと思いますか?


街角のギャラリーにフラッと立ち寄って、絵を見たり、オブジェを見たりするのって、それほど特別なことじゃないと思うんですよ。でも、劇場にフラッと立ち寄って演劇を観ることってないですよね。やっぱり、演劇がすごくマニアックな、閉鎖的なイメージがあるからだと思うんです。

よく、「演劇界は小さなパイの取りあいだ」と言われているようですが、私たちはその取り合いに参加するつもりはないんです。

いろんなジャンルの方とコラボレーションをして、普段絵画しか見ないお客様が、これを機会に演劇に興味を持ったり、普段ダンスしか観ないお客様が演劇を観るようになれば、もっと広がりが出ると思うんです。

私たちは、もともと音楽家と一緒にお芝居を作ってきているので、それが自然と行えているんですけど、この方法を敢えて戦略として行ってゆく劇団が増えれば、さらに新しい分野が開拓されてゆくだろうと思いますね。


「私たちの作品って、救いがないんですよ。」と明るく語るナカヤマさん。人よりもちょっと低いところから、ちょっとすねながら、でも大きな憧れを持って世の中を見上げているのが「しずくまち♭」の作品なのだそうです。

そのちょっと低い目線から演劇界を見上げたとき、助成金をもらってチケットの手売りをしなくなっている劇団や、自分たちの世界に閉じこもって新しい風を受け付けない老舗劇場、その他たくさんの演劇界の悪習が見えてくるようです。

「役者が手売りをしたくなるような作品でなければ、一般のお客様は入らない。手売りをやめてしまえば、自然と力が落ちてゆくもの。役者が手売りをしたくなる作品を作り、そういう作品を作れるような環境を整えてゆかなければ、演劇も、劇場も潰れますよ」

ナカヤマさんの言葉からは、「守るな!閉じこもるな!」というメッセージが感じられました。それは、「世の中救いがない」という作品のテーマからくる、ストイックな姿勢ではないでしょうか。狭い場所に留まらず、ストイックに新しいものを開拓してゆくこと。その姿勢が、いつか演劇界に「救い」をもたらすことを期待します。

※音楽児童劇:「魔女のミーミ」
  作:ナカヤマカズコ
  下記のURLで音楽が聴けます。
  http://www.linkclub.or.jp/~takumi/C-R/webconcert.html

※しずくまち♭「Art Session 2003」の音楽と作品が楽しめるページ
  http://www.sizukumachi.com/rireki/live/art_session_2003/art_2003.html

☆★☆★ しずくまち♭公演情報 ★☆★☆

しずくまち♭ 本公演
 5月中旬に予定しています。
 詳細が決まりましたら、しずくまち♭ホームページにて公開します。
 どうぞお楽しみに!
  >>http://www.sizukumachi.com/index.html

(構成/文・O)2004/1/26