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挑戦はいつまでも終わらない!〜TEAM発砲・B・ZIN〜

日本で活動している劇団は数限りなくあります。しかし、そのほとんどが一般には知られていないのが現状です。日本の演劇業界が、他のエンタテイメント業界、アート業界に比べ、マイナーであり続けているには、必ず、明確な問題があるはず―――。

このコラムでは、現在活躍している劇団に取材をし、劇団の現状やそれぞれが抱えている問題点、演劇が広く社会に認識されるにはどうしたらいいのかなどのテーマを共に考え、演劇の魅力をより多くの方々へ知っていただくための方法を考察してゆきます。

第16回目の今回は、「TEAM発砲・B・ZIN」です。


●TEAM発砲・B・ZIN(チーム・ハッポウ・ビジン)

1992年日本大学芸術学部卒業生を中心に結成。
シチュエーションコメディとSFアクションにこだわり、“大の大人が笑って泣けるヒーローもの”を展開する。

作・演出は全て、主宰“きだつよし”が手掛け、遊び心満載のアニメやヒーローもののフォーマットに、ドラマをミックスさせる独特の世界観とスピーディな演出には定評がある。


●きだつよしさんに直撃インタビュー

演劇界では若手劇団の中に入る「TERM発砲・B・ZIN」。しかし、結成12年目を迎え、小劇場界のリーダー的存在としてその活動は多岐にわたっています。今回は、主宰でもあり、作・演出・出演もこなすきだつよしさんにインタビューをし、劇団のこだわりや、今後の展開についてお伺いしました。


Q・ 「大の大人が笑って泣けるヒーローもの」というコンセプトですが、ヒーローにこだわる理由は何ですか?


ヒーローものといっても、うちのヒーローは決して強くもなければ格好よくもないんですよ。ただ、人間って精神的に成長する瞬間って必ずあるでしょ。その瞬間って、すごく格好いい。別に変身できなくたって、自分の前の壁を克服しようとする瞬間は、誰もがヒーローになれるんだ、っていうのを伝えたいんです。

勿論、始めたばかりの頃は、ヒーローものを知らない人にはわからないマニアックなネタがあったり、コスプレ的な見た目の派手さにこだわってた時期もあったんですが、それって誰にでも笑って泣けるものじゃないでしょ(笑)。

より多くのお客さんに笑って泣いてもらえる大人のヒーローものにするには、普段の芝居より、よりドラマの部分を面白くしなくちゃいけないんだって事を、ここ数年で改めて思うようになりましたね。


Q・ ヒーローものっていうと、どうしても映像と比較する人が多い気がするのですが、印象はかなり違うんですね。


はい。僕は子ども番組のパロディーをやるつもりはないですから。
僕には「映像は絵を作るモノ、演劇は空気を作るモノ」っていう持論があるんですけど、そういう意味では、演劇という表現方法をとっている時点で、すでに映画やテレビのヒーロー物とは一線を画していると思います。

例えばシチュエーション作りにおいて、映像だと小さなクリップ一つでさえ絵に写り込むものは全て表現しなくちゃいけない。それが映像の「場」の作り方なんですけど、演劇のディテールの作り方は、そこに存在する「人間の息吹」、そのリアリティじゃないかと思うんです。

演劇は、役者の息づかいの一つ一つがその「場」を作る。それさえあれば、世界はお客さんにちゃんと伝わるんですよね。

「間」って言葉があるでしょ。僕は今まで「間」っていうのをタイムとしてしかとらえてなくて、セリフの間をつめてテンポをあげる事を追求してた時期もあるんですけど、最近「間」には、ものすごく広くて深い意味があるって事がわかってきたんです。

そういう意味では、劇場という空間も「間」。人と人と気持ちのやりとりも「間」。「間」ってホントはすごく立体的なんです。演劇って実は、そういうイイ意味での間がいっぱいある表現方法なんですよね。んでもって、その「間」がお客さんのイマジネーションを膨らませるんです。

昔は、衣装や小道具のクオリティーをあげる事が、僕らのSFチックな世界の完成度につながると思いこんでたんですけど、SFというイマジネーションの世界だからこそ、この「間」を生かさねばと最近は強く思います。

これから、今まで以上に色々挑戦して、発砲の世界観をもっと深いものにしたいですね。


Q・ 挑戦と言えば、昨年のエジンバラ演劇祭への英語での参加決定と、突然の中止という事件が思い浮かぶのですが……。


いやあ、本当に大変でした〜。(笑)
僕たち、中止の連絡を集合先の空港で知らされたんですよ。「お金がない。だから行けない」って。

海外公演には劇団の制作とは別に、僕らを海外に連れて行きたいっていう、言い出しっぺの外部プロデューサーがいたんですけど、出発直前にスポンサーとトラブルがあったみたいで資金が降りなくなって…。

まあ、その外部プロデューサーのつめが甘かったと。といっても、僕らもただただ被害者面する気はないです。英語の勉強や練習に必死で、制作サイドに全く触れず、任せっきりにしていたのもいけなかったと思いますし。

でも、プラスに考えれば、学ぶところがたくさんあって、英語で芝居を作るというのは、結果的にイイ勉強になりました。

英語って、文法が全部違うじゃないですか。言葉のアクセントとか全然違うんで日本語風味を消すのに随分苦労しました(笑)。一見早口でしゃっべっているように聞こえる英語にも、実は大事に言葉をたてているところがいっぱいあって、改めて言葉の表現の難しさについて考えることができましたね。


Q・ 海外への進出は考えているのですか?


行きたいですね。劇団員はもう懲りたって言ってますが(笑)。
日本人って、自分たちが海外で認められるものを持っていることにあまり気づいていない。でも、日本のアニメって海外ですごく認められているでしょ。殺陣だって独特の世界観をもっていて、それに対する評価っていうのは高い。

僕らの芝居に対して、実際にどういう評価が下るかは分からないけど、僕らの世界観がどれだけのレベルにあるのかを知りたいんです。
だから、また挑戦したいんですよ。ただし、今度行くなら自力でお金を貯めてね(笑)。


Q・ 今の小劇場界についてはどう思いますか?


飽和状態ですね。小劇場っていうジャンル自体が崩壊してて、「小劇場」「小劇団」っていうと、小さなところでやっている人たち、っていう意味になってきちゃってる。

要は、演劇をやりたい人ってたくさんいるんですが、「演劇で何がしたいのか」がはっきりしている劇団が少ないのかなと思います。演劇は手段であって、演劇というものを使って何を表現して、どう存在してゆくのかっていうのが重要で、売れてる先輩劇団には、皆それがあると思います。

昔の小劇場ブームの頃は、そういうポリシーがきちんとあったと思うんです。でも、それを観て育った世代は、そのブームへの憧れだけで演劇を始めてしまったから、新しいムーブメントが起きるはずがないんですよね。ま、そういう僕もそんな世代の一員なんですけど(笑)。

ただ僕の場合、芝居が好きで芝居を始めたわけじゃないんです。何かを創る事がしたかった、で、その方法として近くにあったのが、ただ演劇だっただけなんで。そのくらいの演劇に対する憧憬のなさがかえって幸運だったのかも知れません(笑)。

自分たちだけの枠組みに収まって安心しちゃったり、何となくの憧れだけで芝居を続けていたら、必ず潰れますよね。テーマを持って、常に追及して、常に挑戦して、動き続けないと、お芝居自体がなくなっちゃう。逆に言えば、そういうものを持っているところだけが生き残れると思います。


「今までは、ヒーローものっていう“枠組み”の中で様々な挑戦を続けて来ましたが、これからは、ヒーローものを“軸”に、もっと色んな事を広げて行きたい」と語るきださん。常に何かを追求しようという姿勢からは、結成12年目とは思えないほどの初々しさと、すがすがしさを感じました。

自分たちの掲げるテーマに向かって、常に動き、チャレンジし、追及し続けることは、クリエイターとしての当然の仕事。しかし、その当然の仕事をしていない劇団が多いことも事実でしょう。

演劇をやっていることに満足していてはいけない。常に成長し続けなければいけない。当たり前のことではあっても、実行するのは難しいことかもしれません。しかし、だからこそ努力し続けてゆくことが大切なんだと、改めて感じました。

きださんは、演劇ぶっく社が運営する「ENBUゼミナール」の講師も勤め、若手俳優の育成にも力を注いでいらっしゃいます。滞ることなく、ますます成長し続ける彼らが、次の世代のお手本になってくれることを願います。


☆★☆★ TEAM発砲・B・ZIN情報 ★☆★☆

■「ENBU☆フェスタ〜ENBU[演劇&映像]ゼミナール
    2003年度演劇科クラス公演〜」
 きだつよしクラス「ダァメン」  作・演出きだつよし
 2004年4月3日・4日@天王洲アイル・スフィアメックス
 問)ENBU[演劇&映像]ゼミナール 03-5366-7588

■TEAM 発砲・B・ZIN vol.24「新作予定」
 2004年7月2日〜11日@本多劇場 (地方公演あり)
 問)TEAM 発砲・B・ZIN 03-3205-2875
 http://www.happou.net/

(構成/文・O)2004/2/23