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信念が世界を変える!〜劇団青年座〜

日本で活動している劇団は数限りなくあります。しかし、そのほとんどが一般には知られていないのが現状です。日本の演劇業界が、他のエンタテイメント業界、アート業界に比べ、マイナーであり続けているには、必ず、明確な問題があるはず―――。

このコラムでは、現在活躍している劇団に取材をし、劇団の現状やそれぞれが抱えている問題点、演劇が広く社会に認識されるにはどうしたらいいのかなどのテーマを共に考え、演劇の魅力をより多くの方々へ知っていただくための方法を考察してゆきます。

第18回目の今回は、「劇団青年座」です。


●劇団青年座(げきだん せいねんざ)

1954年5月、当時、俳優座の準劇団員であった若者たちが、俳優座からわかれて作った劇団。『創作劇の青年座』として創立以来数々の書き下ろし作品を上演しつづけてきた。

旗揚げ公演の作家・椎名麟三(しいな・りんぞう)以来、時代と共に新しい劇作家を迎え、マキノノゾミ、鐘下辰男、坂手洋二、永井愛、松田正隆という新世代の劇作家との舞台を次々と発表している。

今年で創立50周年を迎え、小劇場のメッカ下北沢の5つの劇場において、5作品同時上演企画が始動している。


●座長・森塚敏さんに直撃インタビュー

今年で創立50周年を迎える「劇団青年座」。50年という長い年月を支え続け、今も尚現役で活躍している青年座・座長、森塚敏(もりつか・びん)さんに、創立当時のご苦労と、今後の展望についてお聞きしました。

Q・ 創立50周年を迎えられましたが、創立当初には色々とご苦労があったんじゃないですか?


当時は、もう芝居をすれば客が入る、という時代ではなかったね。ちょうどテレビの民間放送が始まった頃で、海外の映画も流行し始めてきてた。お芝居の世界も、海外の作品ばかりでね。オニールとか、アーサー・ミラーとかね。僕がいた俳優座も、10本中8本は海外の作品をやってたんだよ。

日本にはまだ戦後の傷跡が残ってて、暗い時代が続いてたんで、作家の中に創造の種がなかったんだろうね。日本人作家の戯曲は、つまらないものが多かったし、ほとんどの作家が新しいテレビの世界に流れていって、戯曲を書く人がいなくなったんですよ。

でもね、僕らは日本人作家に、もっと芝居に興味を持ってほしかった。だから、同世代の作家を育てないと!日本人は日本人作家の戯曲で芝居をつくらねば!とね、熱くなったんです。

初めの頃は、俳優座内で運動を始めたんですよ。でもね、若い無名の作家の芝居なんかじゃ人が入らない、それじゃ駄目だ、ということで、なかなか受け入れてもらえなかったんですね。それで、俳優座を出て、仲間10人と青年座を立ち上げたわけです。


Q・ 独立する時にためらいのようなものはありましたか?


怖かったですよ。
俳優座は、社会的に信用のある大きな劇団だったから、あそこにいれば俳優としての仕事はきちんと入ってきていましたからね。周囲からも無謀だと言われたし、日本人作家の創作劇なんかやっても、絶対に続かない、すぐ潰れると、いろいろなところから批判されました。

旗揚げ作品を書いてくれる作家もなかなか見つからなくてね。これは!と思える本を書く人はほとんどいない。素晴らしい人は、戯曲を提供する劇団が決まっている。色々と悩んだり、断られたりした挙句、花形小説家に目をつけたんですよ。椎名麟三(しいな・りんぞう)さんという、当時映画のシナリオなんかも書いてた若手人気小説家でね。彼は快く承諾してくれて、やっと旗揚げ公演が出来たんです。


Q・ 今では創作劇が当たり前のようにありますが、当時の青年座の運動はすぐに受け入れられたんですか?


十数年かかりましたよ。
旗揚げの時なんか、全ての新聞に酷評されました。「第三の証言」という、社会風刺の効いた素晴らしい作品だったんですが、作品の内容よりも、役者の力量ばかりを取り立ててね。まだ20代の若造がやってるんだから、そんなに素晴らしい演技が出来るわけないのにね。旗揚げ公演以降も、何かといえば批評家たちの批判の的になりましたよ。「あれは駄目だ」「すぐ潰れる」ってね。

でも、僕達は若かったし、熱く燃えていてね、自分たちの信念を貫いて活動を続けてたんです。

そうするとね、だんだん社会が変わってきた。
創作劇が定着してきて、われわれのファンも増えたし、「創作劇の青年座」なんて呼ばれるようになった。ある時、フランスの面白い作品があったんで、それを上演したら、「創作劇じゃないから失望した!」なんていわれる位に、僕らの創作劇へのこだわりは社会に浸透していったんですよ。

今、当たり前のように創作劇があるっていうのは、僕らの運動が成功したって事かな。嬉しいね。


Q・ 今年、50周年記念として、下北沢の5つの劇場での同時公演がありますが、これはどういった企画なんですか?


自分で自分の首を絞める企画だな(笑)。
5つの作品を、全く同時期にやるわけだから、お客様もどれを観ようか迷うだろう?でもね、劇団内の若い人の中から出てきた企画だし、面白そうだから良いんじゃないかな。

うちは、全員が企画を提出して、その中から選ばれた物をやるシステムだし、僕は権限のあるところにはもういないんだよ。全部若い人に任せてる。この期間に、総勢78名の青年座の俳優が舞台に立つという斬新な企画だから、必ず次へのステップになるよ。

それに、新しい作家を2人迎えるんだよ。
色々なところから評判を聞いたり、企画として出てきた作家の作品を観たりして関係を築いてゆくことは、とても大切だからね。勿論、一緒にやってみて、作風が合うとか合わないとかって言うのは出てくるだろうけど、何事もやってみないと結果なんて分からないからね。

僕も、別役実さんの作品に出演するけど、今回の企画は全てにおいて新しいチャレンジになると思うね。


Q・ 年に一度、「ステージワーク・シュミレーション」「フィリップ・ゴーリエ演劇ワークショップ」などのワークショップをやっていらっしゃいますが、今後、育成面でも大きく力を入れていかれるのですか?


助成をいただいているもの以外に、うちの俳優が地方に行ってたくさんのワークショップをやってるよ。今、本当に増えてきてるね。でも、そういうのは一般対象だったり、一般とプロが入り乱れていたりするだろう?

僕は劇団協議会の会長をやってるんだけど、こないだ会議があってね。プロを養成する機関をつくらなくちゃ、という話だったんだよ。

どんなに素晴らしい講師を呼んでも、キャリアのある人と若い人が混ざっているとやり辛いんだよね。だから、きちんと区別をして、「初心者向け」とか「プロ10年目」とかコースを作って、もっと効果的に指導できる体制を作りたいんだよね。

海外との差があまりにも大きすぎるし、文化的に日本は低すぎる。こういう基盤整備は、劇団協議会の仕事だからね。今年はまだ難しいかもしれないけれど、来年あたりからは本格的に動き出したいんだよ。

年1回というのも駄目だね。それじゃ意味がない。本当は、ちゃんと継続してゆける研究所が欲しいんだよ。昔はね、こういうことには色々なところから批判が出て動きづらかったけど、今は考え方が変わってきてるから、チャンスだよ。

それとね、若い人たちに言いたいのが、世界中にあるいいものをうんとたくさん観てもらいたいってこと。僕も今、オペラをよく観に行くんだけど、海外のものは本当によく出来ているし、俳優もよく訓練されているよ。力量が違うし、「なるほど!」という発見がいつもある。

そういうものを観て、日本との違いや、日本の文化レベルの低さを実感して欲しいし、触発されて、もっと素晴らしい舞台を目指してもらいたいね。


今回の取材に当たって、特別に、青年座旗揚げ公演「第三の証言」の初版パンフレットをお借りしたのですが、その中には若かりし時代の三島由紀夫氏、内村直也氏、安部公房氏らから寄せられた応援メッセージや、劇団員たちの熱い想い、期待、不安がびっしりと詰まったものでした。

「若手の無名の作家の芝居なんて誰も来ないとさんざん言われていた頃は、僕らは芝居で食ってゆけるとは思っていなかったし、食ってゆこうとも思っていなかったんだよ。とにかく日本の劇作家を育てようという運動に燃えていたからね。かなり長い間親のスネをかじってたなー」

と、笑いながら話す森塚さんは、御年78歳。青年座の座長が?!という驚きと同時に、とても親近感を覚え、また、勇気をもらいました。

劇団を立ち上げる時の不安は、どんな人でも同じなんですよね。そして、日本の演劇を取り巻く環境にも、大差はありません。ただ違いは、劇団員達が信念を持ち、それを貫き通すことが出来るか否か、ではないでしょうか。

ノリや憧れだけでお芝居をしている人も、決して少なくはありません。
「何故、演劇をやっているのか?」「演劇をやってどうしたいのか?」
根本的なことではありますが、演劇をする上でのしっかりとした柱を持ち、その柱を貫き続けることは、並大抵のことではありません。

目的を持ち、継続することが、未来を切り開くためには重要なことなのではないでしょうか。


※フィリップ・ゴーリエ演劇ワークショップ
   http://www.seinenza.com/performance/workshop/20030728/index.html

※ステージワークシュミレーション
   http://www.seinenza.com/performance/workshop/index.html


☆★☆★ 青年座 公演情報 ★☆★☆

●劇団青年座創立50周年記念公演第2弾
 「夫婦レコード(めおと・れこーど)」
  作:中島淳彦  演出:黒岩亮
  日程:5月26日(水)〜6月9日(水)
  会場:青年座劇場
  チケット:一般 4,000円・ゴールデンシート 3,200円
       ユニバシート 2,800円・チェリーシート 2,000円

●劇団青年座創立50周年記念公演第3弾
 「下北沢5劇場同時公演」
  日程:11月25日(木)〜12月5日(日)

・諸国を遍歴する二人の騎士の物語
  作:別役実  演出:伊藤大
  会場:駅前劇場

・桜姫東文章
  作:鶴屋南北 演出:鈴木完一郎
  会場:OFF・OFFシアター

・友達  作:安部公房  演出:越光照文
      会場:「劇」小劇場

・深川安楽亭
  原作:山本周五郎 脚本:小松幹生
  演出:高木達 会場:ザ・スズナリ

・空  作:福島三郎 演出:宮田慶子
    会場:本多劇場

詳しくは劇団青年座ホームページをどうぞ
  >>>http://www.seinenza.com/index2.html

(構成/文・O)2004/4/26