under


 
自分たちへの「危機感」を大切に 〜劇団うりんこ〜

日本で活動している劇団は数限りなくあります。しかし、そのほとんどが一般に知られていないのが現状です。日本の演劇業界が、他のエンタテイメント業界、アート業界に比べ、マイナーであり続けているには、必ず、明確な問題があるはず―――。

このコラムでは、現在活躍している劇団に取材し、劇団の現状やそれぞれが抱えている問題点、演劇全体が広く社会に認識されるにはどうしたらいいのかなどのテーマを共に考え、演劇の魅力をより多くの方々へ知っていただくための方法を考察してゆきます。

第23回目の今回は、「劇団うりんこ」です。

●劇団うりんこ

1970年に「児童劇研究会」を発足し、3年の準備期間を経て、1973年、名古屋市を中心に8人の若者が集まって旗揚げ。うりんことは、「猪のこども」という意味。

現在は、愛知・岐阜・三重の東海三県での学校公演だけでなく、おやこ劇場・こども劇場、公立文化施設の主催事業、教育委員会、児童館などで、全国的な公演活動を展開している。

又、ホームグラウンドとなる劇場、「うりんこ劇場」を運営し、劇団公演以外にも、地方や海外からの優れた公演を招聘して、地域への文化振興の一翼を担う活動も積極的に行っている。

●創設メンバーの田中美代子さんにお話を伺いました

昨年、創設30周年をむかえた「劇団うりんこ」、その活動のスピードと勢いは、今もどんどんと増しています。今回は、劇団うりんこの創立メンバー・田中美代子さんに、劇団のこれからについてお伺いしました。

Q・ アトリエや稽古場を持っている劇団は多くありますが、劇場を作ろうと思ったのはどうしてですか?


最初は、ご近所に迷惑をかけないで夜中まで稽古ができる「防音のついた稽古場」の発想でしたが、劇団発足以来10年ぐらいして、子どもたちに芝居を見せてゆく時に、「舞台の鮮度を保ってゆくにはどうしたらいいんだろう」って考えたんです。

なぜ私たちは舞台にしがみついて生きようとしているのか?なぜ観客は舞台を観に劇場へ足を運ぶのか?人が暮らしている地域に劇場があって、そこに劇団がある。この「当たり前のこと」に挑戦したんです。

劇場と稽古場の違いは、地域に開かれているか否かの違いがあると思います。他者との出会いの場をしっかり持つことが、舞台の力に繋がると考えました。

うりんこ劇場は、スポンサーがいるわけではなく、劇団員が少しずつ積み立てて、多くの方のご支援をいただいて、1986年に定員173名のホールとリハーサル室、会議室を備えた3階建ての劇場としてオープンしました。


Q・ この劇場を中心に、地域に向けた活動をされているそうですが、具体的にはどういうことをされているんですか?


先程も言いましたけど、“劇場”って名前であるということは、常に地域に開いた状況を作っておかないと存在意義がないですよね。

ここは住宅地で市内からも離れているので、ここに来る人はご近所の人がメイン。そこで、クリスマスにはイベントをやったり、会議室を開放したりして、ここに足を運んでもらうような働きかけをしてきました。

それと、公的なホールじゃないので、自分たちに刺激になるような面白い作品もどんどんと自由に招聘して公演しています。海外の劇団を呼んだり、他のジャンルの公演やコンサート、大人向けの企画なんかもやってます。


Q・ うりんこ以外の企画プロデュースや、招聘公演などをやるとなると、大変ではないですか?


今までの苦労というのはあんまり考えなかった。とてもラッキーにやってこられたと思います。

問題はこれからかな。
地域に開かれた劇場であれば、観客がいつ劇場に足を運んでも必ず何かを上演している、という事が理想ですが、全くそうはならないんですよね。子どもたちが舞台に出合う空間として170名は理想ですが、小屋のキャパシティーが小さいだけに、何を上演しても採算は取れないんです。

今、公的資金が減らされて、補助金がものすごい勢いでカットされてるんです。劇場に公的補助金が出ないかぎり、劇団が企画費を持ち出して穴埋めしたりして、+−ゼロになるように労力を惜しまずにやってます。

とは言っても、生身の人間がやっている仕事ですからね。もともと保障されていたレッスン日を削ったり、お休み返上で仕事を入れたり…。役者の身体を酷使しなければいけないのは辛いですね。

それでも「私たちが住んでいる街に小さなうりんこ劇場があってね」と、住民が自慢できる街になることを願って、少しでも多くの企画を打ち続けています。


Q・ 「児童劇団」というと、「子どもがやってるお芝居?」という誤解や、「小学校でやってる劇」として一般の方々に観てもらえる機会が少ないと思うのですが、そういった世間の認識についてどう思いますか?


児童劇団は「子どもたちが演じて、子どもに見せる」劇団ですが、児童青少年むけの作品を上演している劇団は、児童劇団とは言っていないと思いますよ。

どこの劇団も、鑑賞対象年齢の下は3歳からとか6歳からとか区切っていますが、上の年齢は大人まで見せている劇団がほとんどです。劇団うりんこも創立期から大人向け作品もたくさん上演してきました。ただし、「劇団うりんこは子ども向けね」というイメージが強いのは確かで、大人向け作品の観客動員はいつも苦労していますよ。

大人中心で回っている社会で、子どもはいつも下に見られている状況の中で、児童・青少年向け作品の市民権の低さはひしひしと感じています。

しかし、舞台にしがみついて舞台だけで生活をしたいと思うと、おのずと学校公演の依存度が大きくなるんですよね。特に、小学校・中学校のスクールシアターで上演している作品に、芸術的レベルがあまりにもひどい劇団が数多くあるのも気になります。

「アルバイトをしないで舞台だけで生活したい」という思いと、「作品のレベルアップ」の両方を考えていないと、大きな落とし穴にはまってしまうんじゃないかな。

「舞台で食べる」事に必死になるあまり、子どもへの向かい方がうすっぺらになったり、どこかでごまかしてしまったり…。そういう「落とし穴」にはなってはいないか、とう危機感を持って、いつも自己点検していないとやってゆけない仕事だと思います。


お伺いした日、ちょうど「うりんこ劇場」では次回公演の稽古をされていました。約170名のキャパシティーの小ぢんまりとした劇場ですが、天井が高く、使い勝手のよさそうな、なによりも温かみのある劇場です。

「この劇場があるからいろんな実験的な作品も作れるし、いろんなジャンルの演出家と出会える。自分たちの鮮度を保って、地域にいい作品を提供し続けるためにはとても重要な拠点なんです。でも、補助金がなくなって、労力ばかりが出てゆくようになると、ちょっとずつ気持ちが細ってゆくのが怖いですね。今までは若さでやってこれたけど、これからの20年は心配です」

田中さんは、そう不安を漏らします。

確かに、ほとんどの自治体では、文化に対する予算が削られ、芸術団体にとっては過酷な時代が訪れるでしょう。しかし、そんな状況の中で残るのは、地域や観客に鮮度のいい、優れた作品を提供し続けることの出来る団体です。

田中さんの言う「危機感」を自分たちに突きつけ、追求する姿勢。それが本当に求められる時代になってゆくはずです。


☆★☆★ 劇団うりんこ 公演情報 ★☆★☆

クリスマス公演2004
「不思議の国のアリスの 帽子屋さんのお茶の会」
作:別役実 演出:和田紀彦

帽子屋さんのお茶の会は、いつもお客様でいっぱい
太った市長さんもいれば、
魔法使いのお婆さんもいれば
アリスもやってくる……。

日程:12月22.24.25.26.27日
会場:うりんこ劇場
チケット:前売り 2,300円
     当日  2,800円
      ※大人、子ども同一料金 4歳以上有料
      ※20名以上は団体割引料金適用
お問い合わせ・お申し込み
  劇団うりんこ TEL:052-772-1882
         FAX:052-771-7868
         Mail:info@urinko.jp

詳しくは、「劇団うりんこ」ホームページをご覧下さい!
>>http://www.urinko.jp/

(構成/文・O)2004/9/27