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出来ることからバリアフリーを 〜劇団6番シード〜

日本で活動している劇団は数限りなくあります。しかし、そのほとんどが一般に知られていないのが現状です。日本の演劇業界が、他のエンタテイメント業界、アート業界に比べ、マイナーであり続けているには、必ず、明確な問題があるはず―――。

このコラムでは、現在活躍している劇団に取材し、劇団の現状やそれぞれが抱えている問題点、演劇全体が広く社会に認識されるにはどうしたらいいのかなどのテーマを共に考え、演劇の魅力をより多くの方々へ知っていただくための方法を考察してゆきます。

第24回目の今回は、「劇団6番シード」です。

●劇団6番シード

1992年末に結成。1年半の準備期間を経て、1994年に旗揚げ公演を行う。以来、年間3〜4本のペースで新作を発表。2004年度池袋演劇祭において、アゼリア賞を受賞する。

「舞台芸術を通して、心の糧となる良質の物語をより分かり易く多くの方々に届けたい」というコンセプトのもとに活動。2002年からは、障害者にも気軽に観劇して欲しいという願いから「ミニシアターバリアフリー」を実践し、話題を呼んでいる。


●主宰の久間さんにお話を伺いました

今年度の池袋演劇祭においてアゼリア賞を受賞し、演劇専門誌「テアトロ」では、「今月のベスト3」に選ばれるなど、その舞台の質の高さが評価されている「劇団6番シード」。良質の演劇を上演するだけではなく、身障者の方々にも観て頂ける環境を整えようと、「ミニシアターバリアフリー」という活動を行なって、演劇関係者や劇場関係者にも影響を与えています。

今回は、劇団の脚本・演出を手がける主宰・久間勝彦(ひさま・かつひこ)さんに、「ミニシアターバリアフリー」の活動についてお伺いしました。


Q・「ミニシアターバリアフリー」を始めたきっかけは何ですか?


たまたま、うちのスタッフが観に行ったお芝居に、車椅子のお客様がいらしてたんです。で、「うちの芝居には車椅子のお客様は入れないの?」と聞かれたんですよ。

別に「入れない」という規定があった訳じゃないんですけど、いらっしゃった時に対処する手段を講じていなかったんですね。ただ、おいでになった時に「何も出来ません」では、基本的にお断りという形になっちゃうのかな、と思ったんです。

小劇場の劇団であれば、1人でもお客様が欲しいわけですよ。で、そういう感じでやっているのに、興味のある方がいらしても、劇場の設備の問題とか、劇団員の人手の問題とか、お客様から見たらお芝居を提供する側の都合で観れないということがあるわけですよね。それはおかしい、それは改善してゆかなければいけないんじゃないか、ということから始まったんです。


Q・具体的には、どういったことをやっていらっしゃるんですか?


ご予約を頂く時点で、目の不自由なお客様や、足の不自由方お客様にお申し出頂きまして、ご来場時には、劇場最寄りの駅までお迎えにあがります。本当はクルマで送迎が出来れば良いんですが、うちも人手不足なので、徒歩でお迎えにあがるんです。

その他、区の福祉施設やボランティアの方にお願いして、点字パンフレットを用意したり。

また、目の不自由なお客様には、開場時間よりも少し前に劇場に入って頂き、舞台に上がって、舞台装置に実際に触れて頂きながら、「こちらが上手(かみて)で、どんな道具があります。ここがセンターで、奥にはタンスがあって、役者がここから物を取り出します」と説明をさせて頂くんです。

そうすると、目が不自由でも、舞台上で何が起きていて、今、役者がどういう行動を取っているのかが分かるんだそうです。

それと、前回好評だったのが、「声のパンフレット(リーディングテープ)」ですね。役者がテープに「○○役の、○○です」と吹き込んだものを、開演までの時間に聞いて頂いたんです。そうすると、視覚に障害がある方は、聴覚がとても優れていらっしゃるので、声で役柄が分かって、人間関係がとても分かりやすかったみたいですね。


Q・ これだけの活動を、一つの劇団単位で進めてゆくには、とてもご苦労があるんじゃないですか?


「出来ることしかやらない、無理はしない」という開き直りの(笑)姿勢でしたら、それほど負担ではないですよ。

他に「バリアフリー」に関する活動をしているところがほとんどないでしょ。何でだろうと考えた時に、“設備の問題”と、“責任の問題”があると思ったんです。

設備に関しては、劇場に階段しかないとか、トイレがバリアフリーに対応していないとかって、僕達の力の及ぶ範囲じゃないでしょ。責任の問題に関しては、やはり素人ですからね。何か事故が起こった場合に責任を取ることが出来ないですから、どうしても臆病になってしまうと思うんです。

でも、待ってても変化は起こらないですからね。だったら、責任は取れないし、こちらが大きな変化を急にもたらすことは出来ないけれども、出来ることから始めてゆこう、と。そうすると、長い目で見たら変化が起こるかも知れない、と。

で、おいでになるお客様には、「出来ることしかできません」ということをお伝えするという姿勢で始めたんですよ。ただ、実際にやってみると、「出来ること」って意外と多いものだなって気づいたんです。


Q・今後、この活動をどう展開していかれるのですか?


ずっと考えているのは、勉強会を開きたいと思っています。
恥ずかしい話なんですが、今までも何件か問い合わせはあったんです。でも、僕達もまだ始めたばかりでしたし、勉強したくても資金的に難しくて、自力で試行錯誤していた時期だったので、特にお返事も出来ないままになってしまっている団体があるんですね。

なので、そういった興味を持って下さっている方々と集まって、どういうことができるかというディスカッションや、僕達のやってきたことをお伝えできる勉強会を開きたいと思ってるんです。

そして、今後劇場を改装したり、新築したりされる劇場主さんに、「バリアフリーに対応して欲しい」という請願書をお送りしたいと思っています。僕達だけでは、とても力不足なので、劇団の垣根を取り払って、連名で提出できればいいな、と。

このことを、どうやって他の劇団に呼びかけてゆくかが、今後の課題ですね。


「ミニシアターバリアフリー」の活動を始められて、約3年。「まだ出来ることしか、やれてないんです」と謙虚におっしゃる久間さんですが、健常者ですら観辛い環境の多い小劇場で「バリアフリー」を展開しようという活動は、とても大きな1歩ではないでしょうか。

作品作りへの影響はありますか?という質問には、「全くないです」とのお言葉。

「1人でも多くのお客様に、演劇の楽しさを知って欲しい。その為に工夫を凝らすのと同じです。ただ、今まで考えが及んでいなかっただけ。小さなことでも、出来ることから始めることが大切なんです」

どんなに小さな劇団であっても、アイディア次第で「バリアフリー」を実現できる。そのことに気付き、始めることが何よりも大切なんですね。この活動に賛同してくれる劇団や劇場が増え、よりよい観劇環境が整うよう、これからもぜひぜひ応援してゆきたいですね。


●バリアフリーインフォメーション
障害をお持ちの方1名様につき、付き添いの方1名様まで無料でご入場頂けます。また、車椅子の方へのお席の優先確保、目の不自由な方へ点字パンフレット、リーディングテープの配布、駅からのガイドなどを行っています。詳細は、お気軽にお問合せ下さい。
詳しくは「劇団6番シード」ホームページをご覧下さい
 >>>http://www.6ban.com/index.htm

(構成/文・O)2004/10/25