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本物に触れられる環境作りを 〜人形劇団むすび座〜

日本で活動している劇団は数限りなくあります。しかし、そのほとんどが一般に知られていないのが現状です。日本の演劇業界が、他のエンタテイメント業界、アート業界に比べ、マイナーであり続けているには、必ず、明確な問題があるはず―――。

このコラムでは、現在活躍している劇団に取材し、劇団の現状やそれぞれが抱えている問題点、演劇全体が広く社会に認識されるにはどうしたらいいのかなどのテーマを共に考え、演劇の魅力をより多くの方々へ知っていただくための方法を考察してゆきます。

第25回目の今回は、「人形劇団むすび座」です。

●人形劇団むすび座

1967年、愛知県初のプロの人形劇団として創立。全国で年間300,000人を超える子どもたちに人形劇を提供している。

子ども向けだけでなく、大人を対象にした作品にも力を入れ、狂言様式の「わわしい女」(脚本・木村繁/演出・ふじたあさや)、人形と人間の共演「寒い母」(脚本・演出/木村繁)、人形パフォーマンス「おいしい眠り方」(作・演出・振付/知念正文)などを制作し、自治体の自主文化事業・フェスティバルなどで、常に高い評価を獲得。

また、カナダ、旧ユーゴスラビアでの公演、中国人形劇俳優との「セロ弾きのゴーシュ」など、海外交流にも積極的に取り組んでおり、まさに、日本を代表する人形劇団としての地位を確かなものにしている。


●制作の安藤勝司さんにお聞きしました

来年で創立38年を迎える「人形劇団むすび座」。創立当時、たった2人で始めた人形劇団が、今では45名もの劇団員を抱え、年間約1,200ものステージをこなしています。

今回は、制作の安藤勝司(あんどう・かつじ)さんをお迎えして、普段はなかなか見えない人形劇の裏側やご苦労についてお伺いしました――――。


Q・ 全国に約100団体の人形劇団がありますが、それらを取り巻く環境の問題点などはありますか?


劇団の数は、アマチュアを入れるともっと多いでしょうね。
「演劇人の地位の向上」なんて言われてるけど、世間的には人形劇の地位っていうのは、一般の演劇人以上に低いですね。人形劇を仕事としている人がいるっていうことを、知らない人が多いんですよ。

むすび座として幼稚園とか行ってやるでしょ。で、終わったら、「お仕事は何されてるんですか?」なんて聞かれるんですよ。「いや、これがお仕事ですけど?」「え?これがお仕事なんですか?」なんて具合にね。他にお仕事があって、ボランティアで人形劇をやっていると思われてるんですよね。

それはアマチュアでやっている人が多いせいもあるのかもしれませんけど、仕事としてなかなか理解されにくいんですよね。


Q・ 実際に人形を触ってみると、人形を使った演技って本当に難しいので、逆にプロの技術として認知されやすいと思っていましたが……。


やったことのある人だったら、プロの技をみて「なるほど〜!」って思うことはありますけど、観ているだけの人にはわからないですよ。もちろん、人形劇で、そういう“いいもの”に出会っている人が少ないのかもしれないけど。

アマチュア人形劇団に時々あるんですよ。けこみの裏に台本張り付けて、人形を適当に動かしながら台本を読むだけっていうの。観ている人はそれを「人形劇」って思っちゃう。一般的には、それくらいの認識しかされてないかもしれませんね。もちろん、誰もがみんな、というわけじゃないですけどね。

でも、そういう作品を観る人は「人形劇ってつまらないんだな」ってなっちゃう。そういうところが問題ですよね。
「人形劇とは何ぞや?」って、そういうことが、なかなか伝わりづらいんです。

人形劇の楽しさって皆知ってるはずなんですけどね。昔はみんな、人形で夢中で遊んでいたわけなんだから。みんな誰もが知っているはずなのに、大人になると忘れちゃう。動いていないものが動いているように見える、生きていないものが生きているように見える、そういう想像する力がね。

お芝居は、もともと動いている人間の身体から何を表現するか?が問題。それは、脚本だったりテーマ性だったりしますけど、人形劇の場合は、本当は生きていないモノが、舞台の上では生きているっていうのが楽しい。ただの人形が、生きているように見えるっていのが楽しい。そして、その先に何を表現するかっていうところですからね。


Q・ 「人形劇とは?」ということを理解してくださる方を増やすために、ワークショップなどはやられてるんですか?


我々は講習会と呼んでいますが、ストレートプレイの「ワークショップ」とはちょっと違って、人形の作り方や扱い方などを伝えています。生涯学習センターとかでやって、そこで受講したチームがアマチュアでやったりして、それで広がったりはします。

でも、通常の演劇ワークショップみたいに、「自分を表現してみたい」とかっていうのじゃないんですよね。人形を作りたいとか、人形を触ってみたい、ちょっと動かし方を教えてもらって、子どもたちの前でやってみたいっていう想いで参加される方が多いので、どうしても表面的なカタチ重視になってしまって、本質的な中身まで行き着かないっていうもどかしさ、がね。

人形を作るのにも時間がかかりますから、人形を作ったりするだけで終わっちゃったりして、「人形劇って、“芝居”なんだ」ってところになかなか行き着かないんですよ。子ども向けのアトラクションととらえられているのかもしれません。


Q・ そういう意味では、大人向けの人形劇をたくさんの人に観てもらいたいですね。


一番の問題は、「大人が人形劇を知らない」っていうところだと思うんです。文楽なんかもそうだけど、本当は子どもだけじゃなくて、大人が観ても面白い。
大人にもちゃんとした“文化”として観てもらいたいですね。

むすび座も、大人向けの人形劇は20年くらい前から始めたんですよ。今は小型の作品が多いですけど、100人くらいの劇場でやったり、アトリエ公演としてやったりね。


Q・ どういった反響がありますか?


やっぱり、一番多いのは「子どものものだと思っていたけど、大人も楽しめるものだということが発見できた」という、驚きのような反響が多いですね。

芝居とかだと、普段観ているTVドラマや映画などから、なんとなくイメージできるものってあるでしょうけど、人形劇の場合は、生の舞台をなかなか目にする機会が少ないでしょうからね。

漫画やアニメで人形劇を扱っているものがあるんですけどね、その中で人形劇をやっているシーンを見ると、僕らからすれば「そんなもの人形劇じゃない!」って思うことばかりですよ。

ホント、ありえない状態なのに、それを平気で描かれていたりして。それほど人形劇の技術や本当の魅力って知られていないんですよね。

だから、まだまだ地道ではありますけど、ちょっとずつでも理解してくれる大人が増えるようになっていけばいいな、と思います。


人形を触ってみると分かるのですが、役者が心の中で感じた気持ちを、自分の身体から離れた人形を使って表現するのは、大変な技術と訓練を必要とします。
そして、その訓練によって、生きていないはずの人形に、ようやく命が吹き込まれてゆくんです。

子どもたちにとっては、たとえ拙い技術であったとしても、お母さんや幼稚園の先生をはじめ、身近な人たちが自分のために演じてくれる人形劇は、とっても嬉しく楽しいものです。

でも、その魅力をより強く深く実感してもらい、可能性を信じてもらうことは、“本物のプロ”にしかできないことです。

むすび座は、国内では数少ない“本物のプロ”です。

だからこそ、その技と想いを、子どもはもちろん、たくさんの大人たちに知って欲しいと思います。そのためにも、優れた人形劇を見せられる環境から整えていかなければならないんですね――――――――。


☆★☆★ 人形劇団むすび座 公演情報 ☆★☆★

冬休み人形げきじょう2004
「あかちゃんゴリラのゴリゴリ/さわってみたら‥‥」
 04年12月23日〜26日、05年1月4日5日
 会場/損保ジャパン人形劇場ひまわりホール(名古屋市中区)
 前売2,000円/当日2,300円(3歳以上有料)

大人のためのアトリエ公演
「春一番!!―お花畑にようこそ―」
 05年2月12日 10時30分/14時30分
 会場/損保ジャパン人形劇場ひまわりホール(名古屋市中区)
 前売1,500円/当日1,800円(小学生以上有料)

「うみぼうやとかぜばんば」原作・山下明生
 05年3月20日 10時30分/14時
 会場/電気文化会館(名古屋市中区)
 前売2,300円/当日2,600円 ペア券(前売のみ4,000円)(4歳以上有料)

アトリエ公演(大人向け)
「夜叉ヶ池」(仮題)作/泉鏡花 演出/天野天街
 05年5月3日〜5日
 会場/七ツ寺共同スタジオ(名古屋市中区)
 前売2,800円/当日3,000円

詳しくは、人形劇団むすび座ホームページをご覧下さい。
 >> http://www.mc.ccnw.ne.jp/musubiza/

(構成/文・O)2004/11/22