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こころを震わすマジックを!〜オフィス214エンターテイメント〜

日本で活動している劇団は数限りなくあります。しかし、そのほとんどが一般に知られていないのが現状です。日本の演劇業界が、他のエンタテイメント業界、アート業界に比べ、マイナーであり続けているには、必ず、明確な問題があるはず―――。

このコラムでは、現在活躍している劇団に取材し、劇団の現状やそれぞれが抱えている問題点、演劇全体が広く社会に認識されるにはどうしたらいいのかなどのテーマを共に考え、演劇の魅力をより多くの方々へ知っていただくための方法を考察してゆきます。

第27回目の今回は、「オフィス214エンターテイメント」です。

●オフィス214エンターテイメント(おふぃす・つーわんふぉー・えんたーていめんと)

TBS愛の劇場「天までとどけ」シリーズで、長男・正平役を演じていた高尾晃市(たかお・こういち/本名・佐藤)が代表を務めるエンターテイメントチーム。

気軽に楽しめるマジックのライブステージとして、従来には無かった手品の要素に、演劇ストーリーを持たせたライブエンターテイメントを展開。全国各地の小中学校や公共文化施設でのショーを精力的に行っている。

その他、様々なアミューズメント・パークのショーの演出やマジック的要素を持った道具のプロデュースを手がけている。

●高尾晃市さんに直撃インタビュー

高尾さんは、俳優としてテレビやCMなどに出演する一方で、ゲスト(お客様)に本当に感動してもらえるマジックを目指し、様々な活動を続けてきました。そして、辿り着いたのが「ストーリーイリュージョン」という形式です。

これは、不思議なマジックを観て驚くだけのショーではなく、演劇的な要素を組み込むことで、子どもにとっては“今思っている”、大人にとっては“子どもの頃に思い描いていた”「ああなったらいいな。こうなったらいいな」を、マジック(魔法)を通して体験することのできるイリュージョンです。

「より多くのゲストに“魔法”を体験してもらい、日常とは違った時間を過ごして楽しんで欲しい」と語る高尾さんに、マジックの現状と舞台表現へのこだわりについてお伺いしました。

Q・ マジックの世界は、他の舞台表現に比べても謎の部分が多い気がするのですが、何か特別なルールなどはあるんですか?


勿論、あります。
大前提として、考案者の許可なしに種を明かしちゃいけないです。マジックって無形で、音楽や絵画のように形に残るものじゃないから、著作権のように守られる制度がないんですよ。同じ現象を見せたとしても、その方法に違いがあれば主張し合いになっちゃってね。

でも、マジシャンにとっては命のようなもので、一生懸命に研究して生み出した財産だから、これを侵害することは絶対に許されることじゃないんです。色んなホールに行ってショーをするけど、現場のスタッフさんすら舞台裏には入れないし、秘密を漏洩しないという契約を結ぶほどですから。大前提であり、最低限守られなければいけないルールですね。

だから、マジシャン同士で情報のシェアはするけど、本当に信頼の出来る数名のプロマジシャンとしかシェアはできないです。

Q・海外と日本のマジック業界には、違いはあるんですか?


海外に比べて、やはり日本は保守的ですね。上下関係も厳しいし、新しいものを受け入れたがらない空気がある気がします。

日本には、“手妻”(※)と言って、江戸時代から続く古典芸能があるんですよ。芸も巧みだし、素晴らしい芸能です。そういうものを守ることも勿論必要だけど、それを発展させて、さらに新しく、楽しめるものを作ってゆくこともすごく必要だと思うんですよ。日本では、そういう意識がちょっと薄いというか、新しいものをドンドンと取り入れて発展させてゆこうという姿勢が弱いんじゃないかな。

よく、海外のマジシャンと話していて「日本のマジシャンは手先が器用で、芸も細かくて素晴らしいんだけど、エンターテイメントとしての面白さに欠ける」って言われるんですよ。要は、マジックの“技術”を習得することには長けているんだけど、“魔法”を楽しんでもらう感覚がないっていうか、そのための創意工夫が少ない気がしますね。

Q・ そんな中で、高尾さんは“ストーリーイリュージョン”という新しいカテゴリーをつくられました。このきっかけは何だったんですか?


マジックは、大きく4つのカテゴリーに分かれるんですよ。テーブルを囲んでトランプを使ってやるようなクロースアップマジック、数十名のゲストに向けてやるパーティー(サロン)マジック、ステージ上で大人数のゲストにむけるステージマジック、そして、規模の大きなイリュージョン。この4つですね。

で、どれも不思議な現象を見せて楽しんでもらうものなんですけど、僕はそこに必然性を感じないというか、不自然な感じがしてたんです。ハンカチから鳩が出てきてビックリするけど、でも、そのハンカチの意味はなんなの?イリュージョンで、箱の中に人が入って胴体が分かれるのなんて有名でしょ。でも、なぜ箱に入るの?ってね。そこの動機の部分がないのがすごく気持ちが悪かったんです。

演劇だって、始まりがあって終わりがある。そして、その中にドラマがあるでしょ。料理だって、前菜があってメインがあってデザートがある。でも、メイン料理ばっかり食べさせられたんじゃ疲れちゃうし、料理を楽しめないじゃないですか。

僕は俳優としても活動をしていたから、その活動から得たものをショーに活かすことで、もっと楽しめるものになるんじゃないかって思ってたんです。そこで始めたのが演劇的な要素を取り入れた「ストーリーイリュージョン」だったんです。

Q・この活動を続けてゆく中で、どんなご苦労がありますか?


ん〜。ステージングに関しては、自分の好きなことをやっているので苦労らしい苦労は感じてないんですよね(笑)。ただ、下の子がなかなか育たないっていうのが辛いかな。すぐに根をあげちゃうんですよね。

イリュージョンって、本当に道具も多くて、舞台設営から全部自分たちでやるんですよ。そして、その中には絶対に漏らしてはいけない秘密もたくさんあるでしょ。だから、本当に最小限の人数編成でやってるんですよ。そうすると、おのずと一人一人の負担が多くなってくるわけなんだけど、それに耐えられなくなっちゃうんですよね。

それと、マジシャンというもののあり方をなかなか理解できないでいるんですよ。僕がいつも言っているのが「ゲストとコミュニケートしろ」ってことなんですね。ただ黙々とマジックをしていても仕方ないと思うんですよ。マジシャンっていうのは、ゲスト同士がコミュニケートするきっかけとなる存在じゃないといけないと思ってるんです。

つまり、AとBという2人の面識のないゲストがいたとして、そこにマジシャンが入ることで、Aとマジシャン、マジシャンとBという関係が生まれる。すると、その場からマジシャンが退出した時に、自然とA・Bの2人の間に「すごかったですね〜」なんていう会話が出てきて、交流が生まれる。そんな存在であれ、と。

演劇だってそうでしょ?同じ舞台を観ることで、お客さん同士が会話をすることはないかもしれないけれど、同じ時間、感動を共有し、劇場全体がグルーブする。そういう交流が出来るのって、やっぱり生の舞台だけだと思うんですよ。映像じゃ、そうはならないでしょ。

そのためには、優れたマジックの“技術”を見せ付けるんじゃなくて、マジックの技術を借りた“魔法”でゲストに感動を与えないと。俳優は台詞で人を感動させ、ダンサーはダンスで人を感動させ、マジシャンは“魔法”で人を感動させるものなんですから。

そういうことを、しっかりと理解して続けられる人が、本当に少ないのが一番の苦労かもしれませんね。

ステージでは、ユーモラスな温かい口調でゲストを“魔法の世界”へ連れて行ってくれる高尾さんですが、いざショーの演出となると、机をひっくり返すほど厳しくなるそうです。

「人に喜んでもらうっていうのは、本当に大変な仕事なんです。生半可な覚悟では勤まらない。だから、中途半端に、役者になりたい、マジシャンになりたい、なんて言って欲しくないんです。ステージに立ちたくても立てない人はゴマンといる。その中から選ばれて、ステージに上がるからには、それ相当の責任が生まれてくるんですからね」

高尾さんは、マジックをしている時の少年のような目からは一変して、演出家の目となって熱く語ってくださいました。演劇もダンスもマジックも、舞台にあがる上での覚悟は皆同じ。技術を磨き、身体を作ることは勿論ですが、一番大切で、一番大変なことは、“こころを磨く”ということなのかもしれませんね。


※手妻(てづま):奇術。いわゆる手品のこと。「手を稲妻のごとく早く動かす」というところに由来する。
   >>http://www.nhk.or.jp/hot/onair_old/20050107/20050107b.html

※高尾晃市オフィシャルサイト
   >>http://www.koichi-takao.com/

☆★☆★ 高尾晃市 情報 ★☆★☆

志摩スペイン村パルケエスパーニャ、コロシアムステージにてオープンしたキャラクターミュージカル「The Brave and Ture アレハンドロの真実の勇気」の演出とマジック監修をされています。

テーマは、「友情」「勇気」…。
目に見えない事の大切さ。
いつも目にするものほど、失ってからその大切さがわかる。

…さて、この物語はこんなところから始まります。

「ある年の晴れた日。村の広場は、1年に1度の花のお祭り、フラワーカーニバルの準備でにぎわっていました。」
そこへ突如のハプニング!アレハンドロが「友情」と「勇気」に気付いた時、そこに見えるものとは…。

しかし、さらにもうひとつ、何かが足りません。それは、あなた自身が持っている「魔法の力」。ぜひあなたの持つ魔法で、この物語を完成させてください。

みなさんの気持ちがひとつになった時、さらに素敵な世界へと誘うことでしょう。

是非是非、ご覧下さい!!

http://www.parque-net.com/index.html

(構成/文・O)2005/1/31