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これからが期待の正念場!! 〜人形劇団プーク〜

日本で活動している劇団は数限りなくあります。しかし、そのほとんどが一般に知られていないのが現状です。日本の演劇業界が、他のエンタテイメント業界、アート業界に比べ、マイナーであり続けているのには、必ず、明確な問題があるはず―――。

このコラムでは、現在活躍している劇団に取材し、劇団の現状やそれぞれが抱えている問題点、演劇全体が広く社会に認識されるにはどうしたらいいのかなどのテーマを共に考え、演劇の魅力をより多くの方々へ知っていただくための方法を考察してゆきます。

第30回目の今回は、「人形劇団プーク」です。

●人形劇団プーク

第1次世界大戦後の1929年(昭和4年)、「人形クラブ=LA PUPA KLUBO(プーク)」の名で活動を開始。

しかし、メンバーの多くは大学生であり、誰も人形劇を生涯の仕事と考えている者はなく、第4回公演を最後に社会人となって劇団から離れ、さらにまた翌年秋に、中心メンバーであった川尻東次も病で亡くなり、劇団の解散は自明のことと なった。しかし、東次の弟で、劇団員になっていた18歳の川尻泰司(かわじり・たいじ)の「劇団を引き継ぎ活動を続けたい」との強い希望が入れられ、プークは川尻泰司に託され存続することとなる。

第2次世界大戦後の1946年、日本初のプロの人形劇団として再建。劇団名を正式に「人形劇団プーク」とする。以後、常に日本の人形劇界をリードする存在となる。

●代表の栗原弘昌さんにお話をうかがいました

創立当初から劇団を率いてきた川尻さんは、1994年、この世を旅立たれました。戦前・戦中・戦後の実体験を、もうおうかがいできないのがとても残念な気がします。

今回は、川尻さんとともにお仕事をされたことのある劇団部代表の栗原弘昌(くりはら・ひろまさ)さんに、プークの今までとこれからについておうかがいしました。

Q・第1次世界大戦後に現代人形劇を始められたきっかけは何だったんですか?


第1次世界大戦が終わった1920年代に、ヨーロッパを中心に芸術運動が始まったんですね。それは国家主義からの解放運動ともとれると思います。で、その頃から人形劇への注目が高まって、日本にもその流れが来たんですよ。

日本にも、文楽という人形を使った伝統芸能はありましたが、糸で操るマリオネットのようなものはありませんでした。で、現代人形劇の魅力に取り付かれた若者たちの間で、いわゆるサークル活動のような形で始まったようです。ただ内容的には、やはり社会運動的な、「対世の中」「対権力」といった、政治的な色合いが強かったようですね。

Q・ 人形劇に限らず、戦時中にそういった芸術活動をするのは、大変困難だったそうですが、何かエピソードなどをお聞きになったことはありますか?


そうですね〜…。色々聞きましたね。
やはり、人形劇そのものがまだ芸術として認められていない時代でしたから、それを生業にすること自体が、すでに困難だったようです。

それに、治安維持法で劇団の強制解散や活動停止なんかもあって、公演が何度か上演中止になったこともあったようですね。そんな時代ですから、それこそ地下活動のように劇団名を何度も変えて上演していたらしいです。突然、警察が部屋に入ってきて、本棚に赤色の背表紙の本があっただけで逮捕されちゃったりしたらしいですよ。

それと、これは笑い話ですけど、僕が田舎から東京に出てきたばかりの頃に、川尻さんが「戦争中のごちそうは、カツライスとオムライスなんだって言うんですよ。僕は、やっぱりこういう人は良いものを食べてたのかな、と思ったら、カツライスは“鰹節をかけたご飯”で、オムライスは“醤油(紫)をかけたご飯”だったんです。

今じゃ考えられないメニューですけど、それ程苦しい時代を人形劇一本で生き抜いてきたんですから、本当に頭が上がりませんよね。

Q・ それほどまでにして、人形劇を続けられたのは、どうしてなんでしょう?


人形劇を認識して欲しいという思いが強くあったようです。
先ほども言ったように、まだ芸術として認められていませんでしたし、人形劇というジャンルそのものがありませんでしたからね。彼は「伝統を学ばないと、新しいものは生まれない」という考えを持っていたので、日本中を飛び回っては伝統芸能を徹底的に学んで、海外に出向いては新しい技術を吸収して帰ってきていたようです。

初めは糸操りのマリオネット中心だったものから、片手使いの人形を作り、両手使いの人形を作り、人形操者が隠れて演じていたものを、人形操者自身も舞台上に出るスタイルを生み出したり、色んな試みをしてゆきました。

そして、第2次世界大戦後の公演で大成功を収めて、やっと人形劇というものが世間に定着したんだそうです。

Q・ そうすると、日本の人形劇界の大きな第1歩を生み出したと言っても過言ではないですよね?


いや〜、僕の口からは、おこがましくてそこまでは言えませんよ(笑)
ただ、とても大切な1歩であったことは間違いないと思いますね。

Q・ プークは今年で76年目を迎えますが、これだけ長く続けてゆく秘訣というのは何かありますか?


いろいろありますが、1つ大きなところで言えば、「プークの3本足」という考えがあるんです。“3本の矢”のお話じゃないですけど、1本だけでは何か失敗した時に全てが壊れてしまうけど、3本あれば、どれか1本がこけても他の2本で補えるっていう考え方です。それで、「舞台」と「テレビ」と「映画」という3本の足で歩んでゆこう、と。これは現代のビジネス理論では当然ですが、プークではかなり昔から言っていることのようですね。

今では、多少セクションが変わって、「劇団部(舞台)」「劇場部(劇場経営)」「スタジオノーヴァ(映像)」の3本足になっていますが、変わらず続けていることですね。

それと、もう一つは川尻さんのカリスマ性でしょうか。“カリスマ”という言葉は軽く聞こえるかもしれませんが、本当にエネルギーの塊のような人で、人形劇にかける愛情や信念、芸術家としての探究心、運動家としての行動力、全てにおいて徹底的な人でした。

とにかく求心力があるんです。僕は、晩年の7〜8年しか一緒に仕事をしていませんが、そのパワーには圧倒されましたし、70歳を過ぎてもそれだけのパワーのある人だから、30代・40代の川尻さんはどんな人物だったんだろうと、考えるだけでも怖いですよ(笑)。

逆に今は、その川尻さんがいなくなった劇団プークがどうなってゆくのか、一番の正念場ですし、一番試されている時期なんだと思いますね。

Q・この過渡期に、力を入れていこうと考えていることはありますか?


経営的には、プークは日本の経済成長と共に大きくなり、経済の低迷と共にピンチになってきてるんです。作品的にも、本来は「3歳から88歳まで楽しめる人形劇」というスローガンで上演をしていたのが、今は小学校低学年以下の子どもたちがメインになっているんですよ。

なので、10〜20代の若者層や40〜60代の中高年層にも、もっと人形劇を観てもらうための作品作りやアピールの仕方を探っているところです。プークの劇場で上演をして、評判の良かった大人向けのものを他の劇場へ出していったり、色んなアーティストとコラボレーションをしたり。その方法はまだまだたくさん考えられると思います。

それに、川尻さんが手を出さなかった表現方法や、経営方法がきっとあるはずなんですよね。だから、あえて“反川尻”的な方法での可能性を探ることも必要だと考えてます。

それと、人形劇界で言えば、質の問題がとても気になっています。一昨年、香川県に日本唯一の人形劇専門の学校が出来たので、そこへの期待も勿論ですが、僕らや他の老舗の人形劇団が、もっともっと技術的なリードをとって、皆を引っ張って、裾野を広げてゆく必要があると思いますね。


プークは、主宰者をおかず、代表者には任期があり、常に会議によって代表者を選出するというシステムがあるそうです。それでも川尻さんがご健在だった頃は、他に代えがたい存在感があり、川尻さんの考え方が色濃く出る形になっていたようです。

しかし、「カリスマがいなくなった今が過渡期、正念場です」という栗原さんの顔には、言葉とは裏腹に、新しい可能性へ向かおうとするワクワクとした明るさが見えました。そんな栗原さんが紹介してくださった川尻さんの言葉に、こういうものがありました。

「真っ直ぐに大きな道を歩きたい。道の消点の先に広がる世界は分からないが、真っ直ぐに歩いてゆきたい。」

この言葉に、人形劇団プークの歩みと川尻さんの生き方全てが詰まっているような気がして、思わず鳥肌が立ちました。この言葉は、きっとプークの中に息づき、そして延々と受け継がれてゆくことでしょう。今後の活動を、しっかりと見守ってゆきたいと思います。


☆★☆★ 人形劇団プーク 公演情報 ★☆★☆

●「こやぎと狼」「スカーフのファンタジー」
   〜中央児童福祉審議会特別推薦作品〜
  日時:5月3日〜6月26日までの土・日・祝日
  会場:プーク人形劇場(新宿南口徒歩7分)
  料金:3000円(3歳以上均一・団体割引あり

●「エルマーと16ぴきのりゅう」
   あおぞら高原のほら穴に閉じこめられたりゅうの家族たち―――
   エルマー少年の救出大作戦がはじまります!
  日時:6月4日(土) 14:00〜
  会場:エコルマホール(小田急線狛江駅前OdakyuOX狛江店4F)
  料金:当日・2800円/前売・2500円/団体・2000円


詳しくは、人形劇団プークホームページをご覧下さい。
 >>>http://www.puk.jp/
(構成/文・O)2005/4/25