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世界を動かす台風の目 〜毛皮族〜

日本で活動している劇団は数限りなくあります。しかし、そのほとんどが一般に知られていないのが現状です。日本の演劇業界が、他のエンタテイメント業界、アート業界に比べ、マイナーであり続けているのには、必ず、明確な問題があるはず―――。

このコラムでは、現在活躍している劇団に取材し、劇団の現状やそれぞれが抱えている問題点、演劇全体が広く社会に認識されるにはどうしたらいいのかなどのテーマを共に考え、演劇の魅力をより多くの方々へ知っていただくための方法を考察してゆきます。

第31回目の今回は、劇団「毛皮族」です。

●毛皮族(けがわぞく)

立教大学演劇サークルでの活動を経て江本純子、町田マリーを中心に2000年9月に結成。エンターティメント性溢れる、聖俗取り込んだエロバイオレンスな熱狂的狂騒舞台を繰り広げ、旗揚げより急進的に観客動員を伸ばし続ける歌劇団。

また、「ジュンリー」こと主宰・江本純子のCDリリース、東京ファンタスティック映画祭でのレビュー公演、写真家とのコラボレート写真展開催など、各メディアに向けても勢力的な活動を行っている。

2004年は、東京都下北沢にある駅前劇場史上初の一ヶ月公演で動員4000人を突破。旗揚げ5周年にあたる今年は、3月に大阪でのレビューライブ、7月に本多劇場初進出公演と8月に大阪公演が控えている。

●主宰の江本純子さんにお話をうかがいました

今年、結成5周年記念として、DVDの発売や、本多劇場進出、初の大阪公演など、まさに破竹の快進撃を見せる小劇場界の台風の目「毛皮族」。

ニプレスをつけた上半身裸の女性たちが踊りまくり、エロバカ全開!と聞くと、ちょっと「???」と思う方もいるかもしれませんが、「一度観たら病みつきになる!」と彼女たちのステージに魅了される人々は確実に増え続けいています。

今回は、主宰の江本純子さんにインタビューして、毛皮族の爆発的な躍進の裏側について探ってみたいと思います。

Q・ わずか数年で目を見張る勢いの成長ですが、手ごたえを感じたのはいつ頃からですか?


大学の演劇サークルで何度か公演をやっているうちに、単純に「これはいける」と思ったんですよ。漠然とした勝算があったというか。いい作品を作って、お客さんを増やしてゆけば、チケット収入で運営してゆけるんじゃないかってね。

ただ、何年かやっているうちに、演劇というものが社会の中で非常に低い存在であるという事をうすうす感じるようになってきて、考えがかなり変わってきましたね。

というのは、小劇場の世界で観客動員数を増やすやり方って大体決まってると思うんですけど、100〜1000人、1000〜2000人と増やして行くのって、いい作品を作って、それを一人一人に伝えて、地道に自分たちで宣伝していけば出来るんですよね。

でも、3000人を超えようとすると、メディアとの繋がりであったり、自分たちだけではない社会との関わりっていうのがすごく大事になってくるんだってことを感じるようになってきたというか、考えが少しずつ変わってきましたね。

Q・ 具体的にどういう変化があったんですか?


エンターテイメントを求める人の心とか、作る人の心って、平和じゃないと生まれないと思うんですよ。戦争が起こって、一番最初に排除されるのがエンターテイメントだと思うし、ただ、戦争が終わって一番に求められるものもエンターテイメントだと思うんですよ。

結局エンターテイメントっていうのは“愛”というものに集約されるんだと思っているんですね。小さなところで言えば、隣の人を愛する心であったり、家族を愛する心であったり。でも、その“愛する”っていうものをずっと辿って行くと、結局自分の“欲望”“煩悩”っていうものに戻ってきちゃう。愛と欲望の間をグルグルと無限に回っているものだと思うんです。

で、演劇の中で自分のやりたいことだけをやるって、“煩悩”だと思うんですよ。でも、表現者の資格っていうのかなぁ。自分のやりたいことだけをやるのは、社会との関わりの中では違うと思うし、ただ楽しませるだけがエンターテイメントではないんじゃないかって考えるようになってきたんです。

でも、自分の煩悩を全て捨てて、人々に愛を与えるなんて、神様のやることでしょ。神様を目指すなんて、人をドキッとさせちゃう言葉だし、誤解を呼んでしまいそうなので、あんまり大きな声では言えないですけどね(笑)。ただ、いつからか、そういう存在を目指すようになってきましたね。

世の中って「聖」と「俗」とが融合して成り立っているでしょ。人は綺麗なものを好むけど、汚いものを観たい気持ちも持ってる。皆、「聖」と「俗」との間で揺れ動きながら闘って生きていて、苦しいことも勿論あるけど、そこで生きていること自体が素晴らしいこと。創作的にも、そんなことに気付いてもらえるような作品を目指すようになってきましたね。


Q・ 旗揚げ5年という短い間に、CDデビュー、大阪進出、、DVDの発売と、ビジネス的にもかなりの成功を収めていらっしゃいますが、小劇場界では珍しいパターンですよね。江本さんから見て、今の小劇場界をどう思いますか?


面白い人が集まってこないというか…。
演劇が好きな気持ちは強いんだけど、妙に優しくて合理的じゃない人が多いように思いますね。それに、優しさに甘えちゃって、抜きん出る気持ちが足りないというか。

私は、お金や人をいかに動かしてゆくかっていうのがビジネスだと思ってるんですよ。CDにしろ、DVDにしろ、写真集にしろ、作りたいと思ったから作ってるわけなんだけど、そうすると毛皮族以外の多くの人が動くでしょ。そして、一つの作品が出来上がって、誰かの手に届く。その動きが楽しいし、重要だと思うんですよね。

アングラなところでアングラな事をやり続けることは簡単だと思うんです。でも、地上に出て、高尚過ぎずにいかに全員の目線で作品を作って人を動かしてゆけるかってところに目が行っていないんじゃないかな。要は、煩悩が強すぎるんじゃないですかね。

Q・ 今後、どのように展開してゆこうと考えていらっしゃいますか?


初めの話に戻りますけど、観客動員数を1000人前後のレベルで増やしてゆくことは簡単だと思うんです。ただ、5000人から1万っていう単位になってくると、結構大変ですよね。今だと教育だったり、地方との繋がりっていう道があるでしょ。でも、それ以外にも何かあるんじゃないかって思うんですよ。まだまだ切り崩してゆけるところがあるっていうかね。それを模索している段階ですね。

そして、毛皮族自身が「メディア」になるっていうのが最終目標なんです。テレビを見るか、雑誌を見るか、毛皮族を観るか、みたいなね。これって、あまりにも大それたことなんですけど、メディアとして発信する立場になりたいんです。

もちろん、今も演劇という小さな枠の中で発信はしていますけど、それを突き抜けた世界の構築というのかな。勿論、私たちがやっているのは演劇というライブなので、お客様一人一人に手渡しできる生の舞台にこだわりを持った、毛皮族というメディアの構築ですね。

そして、そうやって私たちが進んでゆく中で、ちょっと戻って小劇場を巻き込んで、動かしていければ最高ですよね。

独特な個性を漂わせる江本さん。その中からも、冷静で合理的なビジネス的思考と、エンターテイメントに対する強い情熱がチラリチラリと垣間見える、強烈なオーラを感じました。

今年の大阪公演も、世界進出への第一歩。「毛皮族がメディアになる」というのも、ただの目標では終わらないのではないか、そんな期待が沸いてきます。

そして、演劇界に限らず、全てのメディアの台風の目となって様々な人と価値観を突き動かしながら、新しい世界を構築してくれるのではないでしょうか。


☆★☆★ 毛皮族 公演情報 ★☆★☆

     祝5周年記念公演
ヌッポンドエロイナ偉人歌劇 『銭は君』
   作・演出・出演 江本純子

★一般前売開始 6月11日(土)AM10:00 START!!

ニッポンのようでニッポンでない架空の情熱大陸“ヌッポン”。
そこで繰り広げられる、銭に支配される人々、銭を支配する人々、人間の銭に対する異常な欲望。そして煩悩。人間の欲望という欲望がありとあらゆる形で巡りまくるこの世界。 銭とは?愛とは?欲望とは?

東京公演:7月23日(土)〜7月31日(日)@本多劇場
大阪公演:8月6日(土)〜8月7日(日)@IMPホール

詳しくは、毛皮族ホームページをご覧下さい!!
 >>> http://www.kegawazoku.com/top.html

(構成/文・O)2005/5/23