under


 
全ての存在を引き立てる名脇役
   〜クラウンファミリープレジャーB〜


日本で活動している劇団は数限りなくあります。しかし、そのほとんどが一般に知られていないのが現状です。日本の演劇業界が、他のエンタテイメント業界、アート業界に比べ、マイナーであり続けているのには、必ず、明確な問題があるはず―――。

このコラムでは、現在活躍している劇団に取材し、劇団の現状やそれぞれが抱えている問題点、演劇全体が広く社会に認識されるにはどうしたらいいのかなどのテーマを共に考え、演劇の魅力をより多くの方々へ知っていただくための方法を考察してゆきます。

第34回目の今回は、「クラウンファミリープレジャーB」です。

●「クラウンファミリープレジャーB」

1994年結成。メンバー約30名。全国でも珍しい、クラウンのみのパフォーマンス集団。

専用スタジオにおいて、アトリエ公演、ワークショップ、市民講座などにも力を入れ、東海地方を中心に、アミューズメントパーク、ショッピングセンター、ホテル、幼稚園、施設等、様々な場所にも出演。今年の愛・地球博では、世界中のクラウンを集めた「ワールド・クラウン・フェスティバル」をプロデュースした。

また、モンゴルを始めとした海外公演も多数。アメリカのクラウン競技会で金賞を受賞するなど、その活動は世界でも認められている。

●リーダーの大棟耕介さんに伺いました

名古屋を中心に全国で活躍するクラウン集団プレジャーB。その活動は、世界的に見ても話題になるほど精力的で、多岐に渡っています。

今回は、クラウンファミリープレジャーBのリーダー「K」でもあり、有限会社プレジャー企画代表取締役でもある大棟耕介(おおむね・こうすけ)さんに、活動の内容とクラウンそのものについてお伺いしました。

Q・ クラウンが集団になって会社を作っているのは珍しいと思うのですが、会社にしたのは何故ですか?


創立メンバーは、もともと同じ教室で学んだ卒業生だったんですけど、もっと勉強したくてチームを組んだんですよ。僕は当時サラリーマンをしてたんですけど、せっかく集団になったんだから会社にした方が社会的な責任も信頼もできるし、いいんじゃないかって思って、それで勤めていた会社を辞めて、クラウンの会社を作ったんです。世界的に見ても珍しいようで、海外でも話題になりました。

クラウンやってる人って、みんな個性が強いのでバラバラで活動することが多いんです。でも、こうして集団になることで、メンバーでいろんな情報を持ち寄れるんですよね。

やっぱり、技術は日々進歩しますから、僕たちもいろんな情報を集めて勉強するんです。個々でやっていると、なかなか多くの情報を得ることって難しいですけど、集団であれば1人が持ってきたものを全員で共有できるでしょ。

クラウンの最新の情報や技術は、アメリカやヨーロッパから発信されることが多いんです。それを、1人が海外に行って学んだら、日本に持ち帰って全員に伝えることができる。そうやって、共に向上してゆけるっていうのは、集団の最大のメリットですね。

それと、やっぱり仕事としても、チームとしてなら活動しやすいです。クラウンの仕事って、小さなデパートのイベントから、大規模なショーまで本当にたくさんあるんです。力のあるクラウンにはたくさんの仕事をまわしてゆけるし、まだ若いクラウンには小さな所から始めさせたり、熟練のクラウンの助手として場数を踏ませたりすることもできますからね。

技術の共有と向上、そして社会的な責任と信頼。これが大きな理由ですかね。

Q・ 一般のクラウン・ショー以外に、病院でも活動をされていますが、これはどういうものなのですか?


ケアリング・クラウンという分野で「ホスピタル・クラウン」とか「ナーシング・クラウン」とも言うんですけど、病気に入院している子どもたちのところに行って、一緒に遊ぶんです。日本では、ロビン・ウィリアムス主演の『パッチ・アダムス』という映画を思い出してもらえれば分かりやすいかな。

先進国では当たり前の活動で、オランダは特に進んでいます。アメリカでもクラウンの3分の1がケアリングをしています。ただ、日本にはクラウンという存在自体が定着していないので、まだまだ未開発な分野です。僕たち1年半前から定期的に活動しています。

病院って、大人が行っても嫌なところでしょ(笑)。そこにずっと長い間入院している子どもたちには、どうしても遊びがないんです。治療が優先で、子どもらしい振る舞いが許されない環境ですから、どうしても内向的になってしまったり、無理に大人びた態度をとってしまったりするんです。

だから、病院に行って、子どもたちと一緒に遊んだりしいたずらしたりながら、子どもの“能動性”というか“子どもらしさ”を引き出してあげるんです。そうすることで、彼らの心が解放されて、病気に立ち向かう力というか、生きるエネルギーが沸いてくるんですよ。

Q・ 他のエンターテーナーではなく、クラウンであるというところが面白いですね。


多分、他のエンターテーナーでは難しいでしょうね。
クラウンっていうのが、日本には誤解を持って入ってきてしまっているので、どうしても道端でおどけてる人とか、風船をくれる人っていうイメージが強いですけど、本当はそうじゃないんですよ。

クラウンは、決して人の上には立たないし、前に出てくることもない。私は、常に脇で支えている存在だと思います。マルチな名脇役と言うか、常にへりくだって、周りを上の存在として引き立ててあげるのが役割なんです。そして、その場の空気や環境、心を浄化してゆくんですよ。そこに、悲しみがあってはいけない。その場にいる全ての人をハッピーにさせられなかったら、クラウンは必要ないんです。

例えば、道端で風船を配っているクラウンがいるでしょ。もし、その場にいる全員に風船を作ってあげられなかったら、クラウンは出ないほうがいいんです。だって、もらえなかった人は悲しいじゃないですか。そして、もし風船をあげることだけが目的なのであれば、クラウンはやはり必要ない。先に作っておいて、普通に配ればいいだけの話なんですから。

風船を作る。風船を人にあげる。そこには、必ずドラマがあるんです。クラウンとお客さんとの間にコミュニケーションが存在して、もらう人も見ている人もワクワクして、笑って、ハッピーになれる。そういうドラマをその場で瞬時に作って、その場にいるお客さん全員を引き立ててゆくのがクラウンなんです。

自分が主役ではなく、人を引き立てる脇役のスペシャリスト。そういう存在だからこそ、子どもたちを主役にして遊ばせてあげることができるし、子どもらしさを引き出してあげることができるんだと思いますね。

Q・ クラウンの世界の問題点があれば教えてください。


んんん〜〜。問題に悩むより、動いちゃう方なので…。
敢えて言うならば、クラウンに対する認識のずれでしょうか。

日本にも、太鼓もちであったり、狂言師であったり、クラウンに似た文化はあったはずなんですが、どうしても間違った形で輸入されてきてるんですよね。だから、次の世代の人たちに、このままの間違った形を教えて欲しくないですね。

顔を白く塗って、バルーンを作ればそれでクラウンだと考える人は多いですし、それで多少の仕事にもなります。でも、先ほど言ったように、クラウンは脇役のスペシャリストでなければいけないと思うんです。そうじゃないと、ただの風船屋さんでしょ。

でもこれって、本当に難しいんですよ。僕たちも、いくら勉強してもし足りないくらいです。海外の芸術大学でも、全ての芸能クラスのトップにクラウンのクラスがあるくらいですからね。

この認識のずれや誤解を解消してゆくためにも、もっともっと精力的に活動してゆきたいですね。

今回の取材をとおして、クラウンに対する認識が変わりました。正直言うと、私もクラウンという存在を誤解していた一人だったんです。でも、クラウンの世界の何と奥深いことか!

「僕、幼稚園で子どもに『もっと真面目にやりなさい!』って叱られたんです」

意気揚々と嬉しそうに語る大棟さん。幼稚園で3つのボールを持とうとして何度も失敗してしまうドジなパフォーマンスを演じていた時、隅のほうで見ていた物静かな女の子がツカツカと歩み寄ってきて、そう言ったのだそうです。

「その子、普段はきっと家でお母さんに『真面目にやりなさい!』って叱られてたんだと思います。で、僕のパフォーマンスを見て、自分がお母さんの役になって、僕を叱ることが出来たんです。これって、最高じゃないですか」

そう語ってくれる大棟さんの笑顔や雰囲気は、まさにクラウン。取材中、たくさんのワクワクと発見と安らぎをもらった気がします。

演劇も、主役は常にお客様。我ら役者は影法師。その謙虚な心の大切さを、改めて感じさせられました。


プレジャーB公式ホームページ
  >>> http://www.pleasure-p.co.jp/index.html

クリニクラウン参考文献(是非ご覧下さい)
  >>> http://takadayoshiko.info/cctomdfspeech.htm


(構成/文・O)2005/8/22