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丁寧に、そして誠実に! 〜劇団桟敷童子〜

日本で活動している劇団は数限りなくあります。しかし、そのほとんどが一般に知られていないのが現状です。日本の演劇業界が、他のエンタテイメント業界、アート業界に比べ、マイナーであり続けているのには、必ず、明確な問題があるはず――――。

このコラムでは、現在活躍している劇団に取材し、劇団の現状やそれぞれが抱えている問題点、演劇全体が広く社会に認識されるにはどうしたらいいのかなどのテーマを共に考え、演劇の魅力をより多くの方々へ知っていただくための方法を考察してゆきます。

第36回目の今回は、「劇団桟敷童子」です。

●「劇団桟敷童子」(げきだん・さじきどうじ)

東憲司と伊原裕次が中心となり、1999年秋に結成。劇団名「桟敷童子」は、日本に古くから伝わる魔物「ざしきわらし」から命名。子供にしか見えないという「ざしきわらし」だが、大人でも純粋な心を持った者は遭遇する事ができるのだという。

しかし、劇団桟敷童子では、何より自分達自身が純粋な信念で芝居をつくり、「劇場を訪れる全ての人々に見え、そして全ての人々の心に存在すること」を目指す。

劇団桟敷童子では、自分達の追い求める風景を実現させるために空間を選び、更に一週間から半月ほどの時間を費やし劇団員が舞台セットをつくる。その舞台・音響・照明の三位一体となった美しさ、そしてパワー溢れる役者陣の演技には定評がある。

●制作の外山博美さんにお話を伺いました

これまで、ビルの屋上やテント公演、廃映画館、専門学校の教室など、既成の劇場にこだわらず眠っている空間や日常的な空間に劇場を創り上げて公演を行ってきた「劇団桟敷童子」。

劇団員全員で創り上げた舞台セットと音響、照明の三位一体となった空間の美しさと、パワーあふれる役者人の演技力には定評があり、さまざまなメディアでの話題をさらっています。

今回は、設営中の飛鳥山公園天幕劇場にお伺いし、劇団桟敷童子の芝居にかける想いをお聞きしました。

Q・ よく「アングラ演劇」という評判がありますが、アングラ演劇を継承しているのですか?


特にアングラ演劇を継承しようというつもりはありません。私たち自らで「アングラ演劇」だと言ったこともないです。ただ、中心の東・伊原・鈴木がもともと梁山泊の同期でしたし、偶然表現したいものやその方法がアングラ演劇に似ていたという程度のものだと思います。

私たちは、とにかくお客さんに面白い芝居を観て欲しいと言う思いだけでやっていますから、特にジャンル分けをする必要はないと思っています。

映画なら同じ作品をいろいろな場所で、日に何回もやっているから、お客さんの都合で自由に観に行けますが、演劇の場合は日程も場所も限定されていて、ある意味こちらの都合に合わせてもらっているわけでしょ。だから、絶対につまらないものを見せる訳にはいかないと思うんです。

特に2〜3年前頃から東の作風もガラリと変わって、よりその思いが強くなってきていると思いますね。

Q・ どういう変化があったのですか?


初期の作品は、東の昔の体験や思いが強いものがほとんどで、彼の持つ世界観が色濃く出たものでした。ただ、第7回目の公演の時、70歳位の年配のお客様に「分からないよ!」と言われたんです。

演劇って、年齢や性別を問わず、誰しもが楽しめるものであるべきだと思うんです。そう思って創っていた中で、「分からない」という一言は大きく響きました。だから、もっと誰にでも分かって、誰にでも楽しめるものを創ろうというふうに変わったんです。

ただ、「誰でも」楽しめる作品というのは本当に難しくて、いつも試行錯誤してます。でも、そういう努力をするようになってから、動員もぐっと伸びましたし、評価も徐々に高くなってきました。

Q・ テントや倉庫などを使って公演を行っていらっしゃいますが、どういうこだわりがあるのですか?


自分たちのやりたいことを思う存分やろうとした時に、普通の劇場だと制約が大きいんです。

私たちは、自分たちの表現したい世界を創り上げるために、立て込みに少なくとも1〜2週間はかけるんです。その間ずっと劇場を借りていては予算がどうやっても追いつきません。それに、公演期間も最低1週間以上、9ステージ以上は取りたいんです。本番は役者の鍛錬の場にもなりますし、お客様にとっても、たった3〜4日しか公演がないのでは都合をつけるのが難しくなってしまうでしょ。

そう思ったとき、1ヶ月とか短期で貸してくれる倉庫はとても条件に合うんです。勿論、チケット代を上げれば劇場でも出来るかもしれませんが、海外のようにふらっと会社帰りに観てもらいたいし、学生さんにもたくさん観てもらいたいので、この形を変えようとは思いません。

でもね、こうやって倉庫やテントでやっていると、面白いことがたくさんあるんですよ。

今まで何もなかった所に、ある日突然若者が集まって舞台セットを作り出すと、ご近所の方々がすごく興味を持ってくれるんです。お散歩中のご老人や買い物帰りの主婦の方たちが、「何するのー?」なんて話しかけてきてくれて仲良くなれるし、チラシを持って帰ってくれるんです。

で、本番が始まると、お友達やご家族を連れて観に来てくれるんです。アンケートでも「この公演を何で知りましたか?」という欄に「通りすがり」というのがあるんですけど、本当にこの“通りすがり”で観て行ってくれる方が本当に多くて。その後の公演は全く別の場所だったりするんですけど、わざわざ追いかけて観に来てくれたりするんですよ。

Q・ これだけの規模のお芝居を長く続けて行く上で経済面の問題が出てくると思うのですが、どのような経営をされているのですか?


公演の際の費用は、旗揚げ当初にメンバーで持ち寄った資金と公演ごとのチケット収入。最近では、助成金を頂くこともありました。舞台装置なのどの規模が大きいので、地方公演というのも現在は考えていません。役者が制作を兼任しているので、法人化したり営業に回ったりというところまで、とても手が回らないと言うのが現状です。

ですから、「この公演が失敗したら終わりだ」という危機感と緊張感、そして「絶対に楽しんでもらえるものにしよう」という責任感を常に持って活動しています。

そんな中で、これだけ長い期間、自分たちがやりたいと思うことを存分にやらせて頂けているのは、倉庫の貸主の方々や地域住民の方々、公演に協力してくださる方々の善意のおかげだと思っています。なので、挨拶はきちんとするとか、ゴミは絶対に出さないとか、当然のことではあるんですけど、そういった些細なことにも気を配って、「芝居をやらせてもらっているんだ」という感謝の気持ちを忘れないようにしています。

そうすると、今まで芝居に触れたことのない人たちと仲良くなったりして、この数年でたくさんの人との繋がりができました。「またこの場でやって欲しい」という声を頂いたり、今まで芝居を観たことのなかった方が「また芝居を観よう」というきっかけにしてもらったり。こういう人との繋がりが、お金には換えられない大きな財産ですし、私たちの活動を支えてくれる大きな大黒柱だと思っています。

Q・ 今の演劇界に必要なものは何だと思いますか?


これは、冗談でよく話しているのですが、アメリカのブロードウェイのように、面白い芝居は観客の要望がある間はずっとロングランをして、面白くない芝居は3日間で打ち切る、というような劇場があれば面白いと思います。

お芝居は、手を抜こうと思えばいくらでも手を抜くことが出来ます。たとえば、舞台セットを簡素にした場合、その抜いた分を他で精一杯補ってゆくだけの力があればいいのですが、そうでなければ手を抜いたままですよね。

そういうお芝居は、こういうシステムでは生き残ってゆけないでしょ。だから、劇団のレベルアップの場になるだろうし、お客さんも観る目を養ってゆける場になるとおもうんです。

劇団としては、背水の陣なるでしょうけど、1つ1つを丁寧に創り上げてゆくことの大切さを、しっかりと理解してゆけるようになるんじゃないでしょうか。


雨が降ったり止んだりと不安定な空の下、劇団員の皆さんは黙々と大きな舞台セットを組み立てていらっしゃいました。表現したいことを表現するためにはどんな労力も惜しまず、妥協することのない姿勢が、その背中から感じられます。

「旗揚げ当時は、3回公演が打てればいいほうだと思っていました。今年で6年になりますが、長く続けるのは難しいことです。自分たちは器用な劇団ではないので、出来ることを精一杯、誠意を込めてやるのみです」

そうおっしゃる外山さんの顔には、芝居をすることへの責任感の強さと、どこよりも誠実にお客様に接しているという誇りが満ち溢れているように感じました。

人の好みはそれぞれで、いろいろな劇団があり、いろいろな表現方法があって当然です。しかし、1つだけ共通していることは、「お客様に誠実に接する」ということ。自分たちのやりたいことをやろうとした時、一番忘れてはいけないものなのに、一番ないがしろにされやすいものでもあります。このことを、一番の柱として活動しているからこそ、長く愛される劇団に育ってきたのでしょうね。


劇団桟敷童子ホームページ
 >>>> http://www8.plala.or.jp/s-douji/

(構成/文・O)2005/10/24