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路上で広げる演劇の輪! 〜劇団鹿殺し〜

日本で活動している劇団は数限りなくあります。しかし、そのほとんどが一般に知られていないのが現状です。日本の演劇業界が、他のエンタテイメント業界、アート業界に比べ、マイナーであり続けているのには、必ず、明確な問題があるはず――――。

このコラムでは、現在活躍している劇団に取材し、劇団の現状やそれぞれが抱えている問題点、演劇全体が広く社会に認識されるにはどうしたらいいのかなどのテーマを共に考え、演劇の魅力をより多くの方々へ知っていただくための方法を考察してゆきます。

第37回目の今回は、「劇団鹿殺し」です。

●「劇団鹿殺し」(げきだん・しかごろし)

2000年、つかこうへい作品を上演するために髭の子チョビン、丸尾丸一郎で旗揚げ。2001年「愛卍情」よりオリジナル作品に転向。

「老若男女をガツンと殴ってギュッと抱きしめる」テーマの下、人間への愛おしさを込めたストーリー、土臭ささと華やかさを併せ持つ鹿殺し独特の演出による作品を作り出す。毎回本編終了後に自らアンコールを求めて行う黒ブリーフにサスペンダーの男優陣が歌い踊るレビューも話題に。

東京、大阪、神戸と路上劇も並行して展開中。学園祭などイベントにも多数出演、独特の劇スタイルを貫いた作品を発表中。

●代表の髭の子チョビンさんにお話を伺いました

劇場での演劇公演以外にも、ライブハウスや路上でのパフォーマンスが話題を呼んでいる「劇団鹿殺し」。2005年4月より、本拠地を神戸から東京に移してからも、週6回の路上劇を敢行し、早くも話題沸騰です。

今回は、路上劇の現場にお邪魔して、代表の髭の子チョビン(ひげのこちょびん)さんに劇団の活動内容についてお伺いしました。

Q・ 大阪で始められた路上劇が東京でもかなりの話題を呼んでいるようですが、このパフォーマンスを始めたきっかけは何ですか?       


もともとは、野外公演とかって好きじゃなかったんです。でも、唐十郎さんのテント公演を観た時、お客さんの層がすっごく厚くて、しかも開演前から客席の雰囲気がワクワクドキドキとした良い緊張感に包まれていて、それに凄く衝撃を受けたんです。

関西の演劇界はとっても狭くて一向に広まらないんです。ある一定の人数の演劇ファンがいて、その人たちの中で人気のある劇団がちょこっと顔を出すくらいなんですよ。だから、少ないお客さんの取り合いになってしまって、公演時期が重なるとガクンと動員数が減っちゃったりするんですよね。

その状況がすごく嫌で、どうにか変えたい!唐十郎さんの公演みたいに幅広い年齢層の方々に演劇を観てもらいたい!って思ったんです。それで、人が行き交う路上で劇をしようってことになったんです。

Q・ 始めてみて変わったことはありますか?


すごくあります。
まず、宣伝効果は絶大です。やっぱり小劇場ってチラシの折り込みとか、ダイレクトメールとかくらいしか宣伝方法ってないでしょ。でも、会社帰りの人とか、ふらっとお買い物に来ただけの人たちに観てもらえて、興味を持ってもらえて、チラシも手渡せて。

お陰で、私たちの劇団の客層も広がりました。20代の同年代以外に、10代の学生さんから50代位の方々まで。特に多いのが20代後半から30代のサラリーマンやOLの方たちですね。会社帰りに劇場に観に来てくださるようになりました。

他にも、演劇を観たことがないないような方々もお客さんになってくれて、リピーター率もかなり高いですよ。路上なんかだと、携帯サイトで当日の開催場所を発表しているんで、それを見て追っかけてくださる方も結構いますね。

Q・ 関西から東京に活動拠点を移されたのは何故ですか?


きっかけとしては、アゴラ劇場の演劇祭です。
関西から東京の演劇祭に出演することに決まって、それはそれで嬉しかったんですけど、やっぱり関西で名前が売れていたとしても東京じゃまだ無名なので、動員数が圧倒的に少なくなるんですよね。それで、東京公演での赤字が大きすぎて、そのまま潰れちゃう関西の劇団もあるんです。

自分たちもそうなる可能性が大きかったので、その対策として、公演の1週間前から上京して路上劇をやったんです。そしたら、すっごくお客さんのノリがよくて!路上で知り合ったたくさんの方々が観に来てくれました。初めて演劇を観るって言う人も多かったです。

それと、東京にはもうなかなか来られないかもしれないぞってことで、午前中や昼の空いている時間を使って、3班くらいに分かれて東京中のあちこちの劇場を下見してまわったんです。そこでも、劇場の人たちといろいろ話して仲良くなって、割と劇場に足を運んで下さったんですよね。おかげで、関西から来た劇団なのに全公演満席で、すっごく楽しかったんです。

公演が終わって大阪に戻ってからもその事が忘れられなくて…。当時は、全員バイトしていたんですけど、こんな生活は嫌だ!演劇だけを考える生活がしたい!ってことで、演劇祭から1ヵ月半で上京を決めました。今は路上劇やイベントの収入で生活できています。

Q・ 作品の内容などを拝見していると、反骨精神のようなものを感じるんですが、今の小劇場界に対して何か思うことはありますか?


同世代の人たちと話していると、演劇をやりながらも音楽や映画に強い憧れを持っているというか、心のどこかで「演劇って格好悪い」って思っているような気がするんです。でも、私は断然演劇って格好良いって思うんですよ。

テレビを見ていてもなかなか面白い番組がないし、お芝居を観ていても外れが多いしで、すごく落ち込んでいた時期があったんです。そんな時に、唐十郎さんのお芝居を観て希望をもらったんです。

日常生活の中で、人間の喜怒哀楽を揺さぶられる瞬間ってなかなかないでしょ。でも唐さんのお芝居の中では、役者さんが発するエネルギーで心を鷲掴みにされて、グングンと揺さぶられたんです。そういう瞬間を自分はとても欲していたし、みんなも欲していると思うんです。そして、演劇だってそれを与えられるんだ、やっぱり格好いいんだって、改めて実感できたんです。

だから、もっと演劇の力を信じて欲しいし、演劇の面白さを広められるように何でもいいからやってゆくべきだと思います。

Q・ 今後は、どのような活動を考えていらっしゃいますか?


劇団を大きくしようという気はあまりなくて、実は個々がビックスターになりたいんです(笑)。

今のお芝居を観ていると、脚本や演出の奇抜さばかりが目立つように思うんです。でも、私たちは個々の人の魅力を打ち出してゆきたいんですよ。この部分が、他の劇団さんとの作り方の違いだと思うんですけど、作品のストーリーの中で個人個人が一番魅力的に見えるように作っているんです。

ビックスターって、私はフレディー・マーキュリーやジョン・レノン、真田浩之さんがすきなんですけど、見ているだけで凄く元気をもらえるでしょ。普通の人には考えられないような人間のエネルギーやオーラを持っていて、それを身体中から放出していて、私もいっぱい元気をもらったんですよね。そんな人間になりたいんです。

だから、ただ格好をつけるとかじゃなくて、作品には自分の足りない部分や悩みや、そのときの自分がかけてもらいたい言葉をどんどんと出していって、お芝居を観た次の日から人生が変わるようなものを創って行きたいです。

そして、そんなお芝居を作るための鍛錬としても、お芝居の魅力を伝える宣伝活動としても、路上はできる限り続けてゆきたいです。


買い物客で賑わう街角に突如翻る「劇団鹿殺し」の旗。遠くで見ると、ちょっと異様な光景に目が留まります。私が取材した日も、多くの通行人が立ち止まり、おじいさんから高校生まで、たくさんの人だかりができました。

わずか10分間のミニパフォーマンスでしたが、普通の大道芸からは感じられない、演劇臭さと人間のエネルギーが溢れていて、お捻りを投げる人やDVD,CDを購入してゆく人、写メールを撮って行く人が後を絶ちません。

「閉鎖的な演劇界は嫌なんです。世界を変えたいんですよね。『あいつら、やってくれたな!』っていう存在を私は求めているし、皆も求めているんじゃないでしょうか」

パフォーマンスの合間を縫っての取材でしたが、疲れも感じさせずに生き生きと語ってくださった髭の子チョビンさん。劇団鹿殺しの生み出すパワーが、演劇の世界を変えてくれるのではないかと期待が膨らみました。


劇団鹿殺しホームページ
 >>>> http://shika564.com/indexpc.html

(構成/文・O)2005/11/28