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現実の壁を乗り越える! 〜絶対王様〜

日本で活動している劇団は数限りなくあります。しかし、そのほとんどが一般に知られていないのが現状です。日本の演劇業界が、他のエンターテイメント業界、アート業界に比べ、マイナーであり続けているのには、必ず、明確な問題があるはず――――。

このコラムでは、現在活躍している劇団に取材し、劇団の現状やそれぞれが抱えている問題点、演劇全体が広く社会に認識されるにはどうしたらいいのかなどのテーマを共に考え、演劇の魅力をより多くの方々へ知っていただくための方法を考察してゆきます。

第39回目の今回は、劇団「絶対王様」です。

●劇団「絶対王様」(げきだん・ぜったいおうさま)

1993年、笹木彰人(ささき・あきひと)のプロデュースユニットとして旗揚げ。1997年、劇団体制となり、数々の演劇フェスティバルに参加。

『絶望職人』と呼ばれる笹木彰人の世界は、駄目人間が自業自得な人生を認める事ができず、もがき苦しむ様子を喜劇タッチで描き続けている。

また、毎回1曲のクラシック音楽をテーマ曲として使用。曲のメロディーや盛り上がりに合うようにシーンを組み立てる独特の手法で構成されている。

●主宰の笹木彰人さんに伺いました
舞台公演以外にも、作品のブロードバンド配信や映像関係への出演等々、活動の幅を広げている「絶対王様」。彼らの活動の原動力はどこから生まれているのでしょうか。主宰の笹木彰人さんにお話を伺いました。

Q・ 立ち上げ当初はプロデュース集団だったのが、劇団という形態に変えたのは何故ですか?       


僕一人でやっている中で、僕の世界観をしっかりと理解してくれる役者さんが増えてきたので、どうしても逃したくなくて、劇団という形にしました。

Q・ 笹木さんの世界観とはどのようなものですか?


劇団名の由来にもなっているんですが、絶対に変えられない運命の中でもがき苦しんでいる様を描きたいんです。

王様って、生まれたときから将来が決められていて、美容師になりたいとか小説家になりたいとかっていう夢を持ったとしても、絶対に叶えられないでしょ。それってすごく可哀想だと思うんです。そういう絶対に変えられない運命の中でもがき苦しんで、でもやっぱり変えられないという絶望的な人生を見て、そこからお客さん自身で何かを考えて欲しいという作り方です。

大団円のハッピーエンドってあんまり好きじゃないので、絶望的な終わり方が多いんですが、誰しもがそうやって苦しみながら生きていると思うんです。もしかしたら何も変わらないかもしれないけれど、そうやって苦しみもがき続けることが大切だと思うんですよね。

自分自身では、その中から「頑張れ、自分!」というテーマが、最近になってなんですが見えてきたように思います。

Q・ 常にクラシック音楽をベースに創っていらっしゃいますが、どういったこだわりがあるのですか?


僕は、中学はブラスバンド部で、高校ではオーケストラ部にいたんです。なので、ポップスなどのほかの音楽を知らなくて、クラシック音楽しか知らないんですよ。

クラシック音楽は、70〜80人のアンサンブルで構成されていて、音の重圧とか、音に込められた念や想い、その強さや厚みにすごく魅力を感じるんです。しかも、何百年もの間延々と奏で続けられる普遍性を持っている。僕は、その力を信じているし、一人のキャストとして捉えているんです。

だから、作品を創る前には何百曲も聴きます。そして、曲のある部分からシーンが浮かんで来て、そこから構成を作ってゆきます。時には秒数を計って、その中に台詞を合わせたりもします。

俳優さんには大変な作業をお願いしていることになるかもしれませんが、曲が芝居を後押ししてくれるし、世界観をしっかりと創って伝えてくれるので、僕の作品から切り離すことは不可能な要素ですね。

Q・ 皆さん、T−ARTISTというプロダクションに所属していらっしゃいますが、きっかけは何ですか?


所属は2003年からです。その前は、各メディアにダイレクトメールを送ったりして、本当に地道な営業活動をしていました。

旗揚げから4年目位から、いろいろなフェスティバルに呼んでいただいたりして、劇団が成長しているという実感はあったんですが、長く続けてゆく中で結婚して家族を持つ者も出てくるだろうし、年齢的にもバイトをしながらの活動に限界を感じ始めていたんです。

そういう折、事務所の社長が観に来てくれていて、共通の知り合いがいたこともあり、俳優がお世話になることになりました。

今は、主に映像関係のお仕事をそちらでさせて頂いて、舞台に関しては絶対王様との共同公演という形をとっています。

Q・ そこから何か変わったことや今後の展望などはあります?


もともと、長く続ける為にも劇団員各自の経済的自立は必須だと思っていたんですが、その目的がより明確になりました。

社長にも言われたのですが、僕たちのような集団は、このままでは演劇好きが寄り集まったサークルでしかないんです。こういう事を言うと、現実的過ぎて嫌な顔をされることもありますが、僕はその現実を直視することは非常に重要だと思うんです。

そして、僕だけではなくカンパニーごと“食える集団”になりたいんです。自分たちがカツカツで心が荒んでいては、お役さんに楽しいものを見せることなんて不可能だと思うんですよね。

なので、作風もよりエンターテイメント性を求めるようになってきました。自分が書いているものが、本当にお客さんが求めているものなのか、これは売れる商品なのかと、常に疑いを持って書くように変わってきたんです。

アーティストはたとえ食えなくても自分の作品の信念を貫くことが大切だ、と諸先輩方や仲間たちに言われる事もあって、それはもちろん納得できるんです。でも、僕はアーティストであると同時に主宰者でもあるので、劇団員全員の生活を支える義務があります。

この「夢と現実」という両極の方向性の中で、時にはジレンマを感じることもありますが、経済観念を度外視した集団から経済的にも作品的にも自立できる集団へと大きくシフトチェンジを始めたばかりなので、この壁を乗り越えることが、まずは最大の目標です。

そして、より多くの方々にお芝居を観ていただくために、世間との垣根を取り払った形を目指したいと思っています。

「絶対王様」というインパクトのある劇団名からは想像もつかない程、とても繊細な印象の笹木さん。「現実的な話ばかりしてしまって、ごめんなさい」と恐縮される一方で、「現実が見えてきたからこそ、夢や希望を持つ力の大切さに、改めて気付いた」とも語ってくださいました。その為、作風も夢でいっぱいだった若い頃の原点に戻ってきたそうです。

「自分たちの背中を見て、若い集団にも育って欲しい。そして、演劇の裾野が広がって欲しい。その為にも、僕らがまずは食える集団にならなければいけないんです」

その言葉に、演劇を本職とすることへの苦悩と、信念、責任を感じました。

良質な作品を創り続け、人々に感動を与え続けてゆくためには、経済的な自立が必須です。1つのビジネスとして成功させてゆかなければいけません。しかし、そのことに気付いていない、もしくは「食えなくて当然」という風に経済的感覚が麻痺してしまっている集団も少なくありません。

その中で、厳しい現実の壁を乗り越えて、次の世代の人たちにとってお手本となれる形態を作ろうとしている。ここに、彼らの活動の原動力があるのです。5年後、10年後がとっても楽しみになってきました。


☆★☆★ 絶対王様 公演情報 ★☆★☆

新宿シアターアプル奇跡の2日間 AppleJAM'06参加作品

   『宇宙人の新選組(ミュージカル風)』

日時:3月11日(土) 19:30〜
     12日(日) 14:00〜
会場:新宿シアターアプル
チケット発売日:2月13日(月)一般発売
  先行発売日:2月12日(日)
料金:前売り3800円 当日4000円 中高生シート1000円
    (当日は全ステージ用意。中高生シートは要学生証)

詳しくは絶対王様ホームページをご覧下さい
  >>> http://www013.upp.so-net.ne.jp/zettai/

(構成/文・O)2006/1/30