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自由な空気が生み出す新しい形〜演劇集団 円〜

日本で活動している劇団は数限りなくあります。しかし、そのほとんどが一般に知られていないのが現状です。日本の演劇業界が、他のエンターテイメント業界、アート業界に比べ、マイナーであり続けているのには、必ず、明確な問題があるはず――――。

このコラムでは、現在活躍している劇団に取材し、劇団の現状やそれぞれが抱えている問題点、演劇全体が広く社会に認識されるにはどうしたらいいのかなどのテーマを共に考え、演劇の魅力をより多くの方々へ知っていただくための方法を考察してゆきます。

第40回目の今回は、演劇集団「円」です。

●演劇集団 円(えんげきしゅうだん・えん)

1975年、現代演劇協会付属劇団「雲」から芥川比呂志を中心に独立。
男優陣には仲谷昇、三谷昇、橋爪功、女優陣では南美江、岸田今日子といったヴェテランをはじめ、舞台やテレビなどで活躍している俳優が多数所属している。

あくまでも演劇をこよなく愛する人々の集団として、それぞれの立場で個人の能力を向上させ、より充実した舞台作りを目指している。

●制作の加藤さんに伺いました

東京メトロ銀座線田原町駅を降りてすぐのところに劇場“ステージ円”を設け、演劇活動を続ける演劇集団円。従来の演劇にとらわれることなく、様々な戯曲を取り入れ、様々なジャンルのお芝居を発信し続けています。

今年で31年目を迎える彼らの活力は、どこから生まれているのでしょうか。今回は制作を長く担当していらっしゃる加藤晶子さんにお話をうかがいました。

Q・ 劇団ではなく、「演劇集団」と名乗っていらっしゃいますが、それはどうしてなんですか?      


もともと、立ち上げのメンバーたちは新劇の劇団に所属していたんです。歴史的に言うと、はじめは文学座に所属していました。そして、1963年に、当時話題になったんですが、文学座から独立して劇団「雲」を立ち上げたんです。そして、1975年に芥川比呂志を中心に独立して発足したのが、現在の演劇集団 円なんです。

彼らは、劇団と言う集団制の弊害をとても嫌っていたようです。劇団の決定であれば、ほとんどのことには従わなければいけないでしょ。そういった束縛から抜け出して自由に作品を創ってゆきたかったようです。ですから、個人の自由を尊重した「集団」という形を選んだんです。

なので、私たちはメンバーを「会員」と呼びます。会員にはノルマはありません。また、拒否権が与えられています。出たくない作品には出なくてもいいわけなんです。

年間のレパートリーも、会員全員が平等に提出することができます。やりたいものがある会員は企画書を提出して、20人会という幹部会で最終決定をしています。かなりの本数が出てきますが、“やりたい!”という気持ちの温度差で決まってしまうことがありますね。

出演して欲しい役者がいるなら、その人に直接交渉して企画に巻き込んでゆくことも出来ますし、使いたい脚本や演出家がいれば、集団以外の人を引っ張ってくることも出来ます。

私たちの集団は、「円」というカラーに縛られることなく、自由な発想を受け入れてゆく器のようなものですね。ですから、発言せずにただぼんやりしていたのでは何も出来ませんが、熱意さえあれば、ここは何でも出来る場所なんです。

Q・ 早い時期から、児童演劇の分野にも進出していらっしゃいますが、どういうきっかけがあったのですか?


これは岸田今日子さんが企画を出したもので、今年で25年目になります。

岸田さんには娘さんがいらっしゃるんですが、娘さんが小さい時に自分がお芝居をしているので、娘にもお芝居を楽しんでもらいたいという思いで、いろいろな児童演劇を観てまわったんですね。でも、子どもは楽しいかもしれないけれど、大人は退屈してしまって、一緒に楽しめる舞台が全くなかったんですって。

それで、子どもも大人も一緒に楽しめる舞台を作りたいということで、別役実さんなどの劇作家にお願いして、作品を書き下ろしてもらったんです。それが、1981年から始まった「円・こどもステージ」シリーズです。

今でこそファミリー向けの舞台は多くありますが、当時は画期的なものでした。谷川俊太郎さん、別役実さんといった日本を代表する劇作家や演出家、役者が、子どもが観たらどうだろうか?という視点を常に持ちながら試行錯誤しながら創り上げてゆきました。

キャスティングも“子ども向け”というこだわりはなく、やって欲しい人に出演依頼をしてゆくわけですから、南美江さんや橋爪功さんなどのヴェテラン俳優も出ていて、とても贅沢なお芝居でしたよ。もちろん、今もこだわりなくキャスティングをして、幅広い年齢の俳優が舞台に立っています。

毎年、様々な賞をいただき、円の大切なレパートリーの一つとなっています。

Q・ 子どもステージ以外にも、次世代の劇作家書き下ろしシリーズなど、様々な企画を展開していらっしゃいますが、今後の展望を教えてください。


私たちの劇場“ステージ円”での活動を充実させてゆきたいですね。

以前は、北新宿に“ステージ円”を持っていたのですが、2002年からここ浅草の地で再スタートを切りました。キャパシティーが98人と小規模ではありますが、ここの観客動員を増やしてゆきたいと考えています。

自分たちの小屋を持つことは、本当に贅沢で幸せなことですね。しかも浅草とあって、昔ながらの文化の発信地ですから、本当に活力を感じます。ここで、落語とのコラボレーションなど、浅草に根を置いた「円」ならではの、たくさんの企画を考えることが出来ると思うんです。

ここでいろいろな実験をしながら、さらに幅の広いお芝居を創り上げてゆきたいですね。

Q・ 今の演劇界で何か問題だと感じることはありますか?


舞台をやっている人全員に共通すると思いますが、私のような制作者にとっては特に観客動員の減少が大きな問題ですね。要因は色々と考えられるんですが、ひとつには演劇を専門に教える学校が今までなかったことが大きな要因だと思います。

ただ、嘆いていてばかりもいられませんから、やはり私たちが動いてゆかないといけないと思います。

制作者が集まる組織があって、その理事会でもよく「演劇業界全体の観客動員を増やす方法はないか」という話題が上がります。そして先日、その話し合いの中で「芝居に関わっている団体で、新たな鑑賞組織を作るのはどうだろう」という話が出ました。

それぞれの団体で、会員制度を設けるなどいろいろな試みと努力をしているとは思うんですが、1つの団体で出来ることは限られているでしょ。だから、皆で手を組んで、大きな鑑賞組織を作るのも面白いと思うんです。

お客さんも、たくさんの団体の情報を一気に得ることが出来ますし、その時の旬な舞台や、今まで観たことのなかった新しいジャンルの舞台にも出会えると思います。そうして、演劇を観ることや選ぶことに楽しみを感じることが出来れば、全体の動員を伸ばすことが出来ると思うんですよね。

まだつい最近上がったばかりのアイディアなので、これからどう展開してゆくかは分かりませんが、そろそろ動き出す時期が来ているんだと思いますね。

私事ですが、以前浅草に住んでいたことがありました。年中お祭りがあり、観光客も多く、活気のあふれる大好きな街です。

ステージ円の最寄り駅である田原町を降りると、道路の向かい側には浅草六区の賑やかな通りの入り口が見え、大きな仏壇店の角を曲がると、上野に通じる大通りが開けます。その大通りを上野方面に向かうと、真新しい「ステージ円」の看板が見えてきます。

  円×浅草=希望

そんな式が頭に浮かびます。何にも縛られることのない自由な空気をもった演劇集団「円」だからこそ出来る“新しい演劇の形”が生まれるのも、そう遠くはないのではないでしょうか。

これからも期待に胸と夢の膨らむ集団です。


今後の活動に関しては、演劇集団 円ホームページをご覧下さい
  >>> http://www.en21.co.jp/
(構成/文・O)2006/2/27