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技術はいらない、心を磨け! 〜劇団TA2〜

日本で活動している劇団は数限りなくあります。しかし、そのほとんどが一般に知られていないのが現状です。日本の演劇業界が、他のエンターテイメント業界、アート業界に比べ、マイナーであり続けているのには、必ず、明確な問題があるはず――――。

このコラムでは、現在活躍している劇団に取材し、劇団の現状やそれぞれが抱えている問題点、演劇全体が広く社会に認識されるにはどうしたらいいのかなどのテーマを共に考え、演劇の魅力をより多くの方々へ知っていただくための方法を考察してゆきます。

第41回目の今回は、劇団「TA2」です。

●劇団TA2(ティー・エー・ツー)

映画映像の分野で活躍してきた赤塚真人(座長)と、俳優業の他、若手教育の現場を多数手がけてきた麻生敬太郎(代表)が2002年に旗揚げした劇団。

現在、東京の小劇場を中心に、可笑しくて悲しい人生の性を人情喜劇として上演し続けている。赤塚真人原作によるオリジナル作品のみを上演し、公演の度に各メディアから注目を集めている。

●座長の赤塚真人さんにお話をうかがいました

「たそがれ清兵衛」「隠し剣 鬼の爪」を始め、映画映像の分野で活躍してきた赤塚真人(あかつか・まこと)さんが、俳優の麻生敬太郎(あそう・けいたろう)さんとタッグを組んで小劇団を結成して、今年で4年になります。

映画の仕事だけでも忙しい赤塚さんが、どうして小劇団を立ち上げたのでしょうか。今回は、演劇の魅力と今後の展望についてお伺いしました。

Q・劇団を立ち上げられたきっかけは何ですか?


昔から何度もオファーはあったんだけど、僕は映像の世界でしかやってきていなかったから、舞台は素人同然だったんです。なので、興味はあったんだけどずっと断ってきていました。それが、「ほんのちょっとだから」と何度も言われて、「じゃあ、ちょっとならいいよ」ということで出演することにしたんです。TA2旗揚げのちょっと前だったね。

そしたらね、台本をもらったら主役だったんですよ。出番は多いし、台詞は多いし、主役が稽古を休むわけにもいかないからね。騙された〜!(笑)なんて言いながら何とかやってみたんです。ウッディーシアター中目黒という、キャパシティーが100席前後の小さな小屋で初舞台を踏んだんですよ。

そしらた、お客さんと目が合っちゃって、僕もじ〜っと見詰め返したら、お客さんが目をそらすんですよ(笑)。僕にとっては初めての経験だから、どうしたらいいのやら分からなくてね。びっくりしましたよ。お客さんの目を凝視しちゃ駄目だよ、なんて教えてもらったりしながら初舞台を終えたんです。

そしたらはまっちゃってね〜。映像にはないライブ感や、お客さんとの一体感、一期一会の毎日が違う世界。そして一番は、やっぱりお客さんがお金を払ってわざわざ観に来てくれることへの喜びが大きかった。

お客さん一人一人に今まで生きてきた生活があって、これから過ごしてゆく生活があって、その中で心を動かす瞬間って少ないって思うんですよ。僕たちは、そのきっかけを作ってあげているというか、活力をあげているんだっていう喜びを感じたんですよね。

この喜びは、かつて自分が藤山寛美さんの舞台を観て感じた喜びと同じだったんですよ。それでね、昔から親交のあった麻生さんと一緒に、2人で何かやろうってことになってTA2を立ち上げたんですよ。

いろいろな表現方法があるだろうけど、僕は生きてゆくための知識って言うのは、人と人とが実際に出会い、触れ合ってこそ得られると思ってるんですよ。だから、大劇場でもない、映像でもない、小劇場でやる演劇にだけある喜びであり、意義だと思ったんですよね。

Q・立ち上げてみて、ご自身で何か変わったことはありますか?


よく、舞台と映像とのきりかえって大変か?って聞かれるけど、それは染み付いているから全く問題はないんです。逆に、舞台での経験が映像の仕事にもとても活かされるようになってきました。

とにかくね、生の舞台をやるようになってから、役や作品への理解が深まってきました。役に根を下ろして演じることが出来るというか、役として本当に生きるということが出来るようになってきたんですよ。

カメラがお客さんたちの目のように思えてきて、そうするとドンドンと僕の中から役自身の生き様が出てくるんです。山田洋次監督の撮影は、とにかく長回しで撮ってゆくんだけど、全く苦じゃないんですよね。そこに生きることが出来ているから、台詞は勿論のこと、アドリブだってどんどんと出てきちゃう。

長年演技をしているけど、この年になってようやくお芝居が面白くなってきましたよ。

Q・ 若手の俳優にとっても、大変勉強になる現場だと思うのですが、どのような指導をされているのですか?


技術って言うのは、経験で補えるものだし、教える必要はないと思うんですよ。ただね、常々色んな俳優さんとも話しているのが、「心がない役者は駄目だ」ってことです。だから、僕たちは稽古場に来る前の時間や生活を大切にするようにしてるんですよ。日々の生活の中での、ものの受け取り方や考え方ですね。

君にとって、悔しいことは何だ?嬉しいことは?何を見て涙するのか?そういうことを、稽古場で聞いたりして、常に心を磨くように言っています。

皆、結局自分が一番可愛いでしょ。自分の親や子どものために尽くすことは出来ても、他人のために尽くすことは本当に難しいですよ。でも、そういう心根って言うのは、必ず行動に現れてきます。だから、人前に立って人の心を揺り動かす俳優になるには、どれだけ相手の人生を大切に思える人になるかどうかってことだと思うんです。

勿論、技術を磨く場をつくってあげることはしますが、何よりも一番大切なものは、人を大切に思える心であり、絆であると伝えています。

Q・今後の展望はありますか?


実は時代劇をやりたいと思ってるんですよ。昔は今のように便利ではないし、いろいろな制約があって、人と人とが関わりあわなければ生きてゆけない時代でした。

何かを伝えようと思っても、メールも電話もないでしょ。手紙を書こうと思っても、文字の読み書きができる人なんてほとんどいなかった。もし手紙を書いたとしても、本当に届いているかどうかも分からない。そういう時代だからこそ、人間の生き様や原点を表現しやすいと思うんですよ。

僕はね、現代のような時間に追われている生活の中で、どこにでも転がっている些細なことに光をあてて、人に優しくなれる瞬間や、人に声をかけたくなる瞬間をつくってあげたいんですよ。

例えば、合格発表の日、結果を見に行くときには気付かなかったのに、“合格”の結果を受けて晴れやかな気持ちで同じ道を歩いていたら、ふと道路の脇の小さな花に気が付いた…。そんなささやかだけど、優しい気持ちになれるような瞬間をね。

時代は変わっても、人の心は変わっていないはずだから、より焦点を絞って表現できる時代劇で、そんな瞬間を創ってゆきたいですね。

やはり、長年映像の世界で活躍されてきただけに、お話も熱く、とても大きなオーラを感じました。それと同時に、次はどんなエンターテイメントを届けようか、というお芝居の面白さを知ったばかりの少年のような輝きも感じました。

ただ楽しいだけではなく、人の心を揺さぶる俳優を育てることで、より多くの人々の心をつかむ集団となってゆくことでしょう。そして、人として忘れてはいけない何かを、私たちに投げかけてくれるに違いありません。

ますます、今後に期待がつのる劇団の一つです。


公演情報、募集情報など、詳しくは劇団TA2 Official WebSiteをご覧下さい。
 >>>http://ta2.pro.tok2.com/
(構成/文・O)2006/3/27