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幸せを祈り続ける 〜TAICHI-KIKAKU〜

日本で活動している劇団は数限りなくあります。しかし、そのほとんどが一般に知られていないのが現状です。日本の演劇業界が、他のエンターテイメント業界、アート業界に比べ、マイナーであり続けているのには、必ず、明確な問題があるはず――――。

このコラムでは、現在活躍している劇団に取材し、劇団の現状やそれぞれが抱えている問題点、演劇全体が広く社会に認識されるにはどうしたらいいのかなどのテーマを共に考え、演劇の魅力をより多くの方々へ知っていただくための方法を考察してゆきます。

第44回目の今回は、「TAICHI-KIKAKU」です。

●TAICHI-KIKAKU

1985年、主宰モリムラルミコと代表オーハシヨースケの2人でTAICHI-KIKAKUを結成。2年間の実験的活動を経て、1988年にパリでの公演を皮切りに海外活動を開始。21世紀の舞台芸術“身体詩”を生み出し、世界20ヶ国以上で公演を続けている。

“身体詩”とは、「言葉を超えた新しい演劇」である。国や文化、言語を超えて、世界中の人間にそなわっているもっとも普遍的なもの〈気エネルギーの発露と交流〉を表現の中心に置いた全く新しい字幕や通訳を必要としない演劇。

死生観、輪廻など精神科学的なものを、宗教ではなく芸術として作品化してゆこうとする演出のモリムラルミコの生み出すTAICHI-KIKAKUの作品世界は、「気エネルギーを使って空間に描かれる身体(からだ)の詩」として、カイロ国際実験演劇祭でオーハシヨースケが最優秀男優賞を受賞するなど、世界各国の演劇祭などで観客を魅了している。

●主宰のモリムラルミコさんと代表のオーハシヨースケさんにお話をうかがいました

宗教とは関係なく、輪廻や死生観など精神科学的なものを芸術として表現してゆくことで、その表現に触れた人が少しでも“愛の心を活性化することのできるような表現”のみを生み出していきたいというモリムラルミコの“祈り”。そこから生まれた「はじめの芸術」を中心軸にして、世界20カ国以上で公演を続けているTAICHI-KIKAKU。

彼らのそのエネルギーは、一体どこから生まれてくるのでしょうか。今回は、主宰であり、作・演出を手がけるモリムラルミコさんと、代表でありプロデューサーでもあるオーハシヨースケさんにお話をうかがいました。

Q・身体詩をもって世界に出ようと思ったきっかけは何ですか?

モリムラ: よく、日本に対するアンチテーゼがあるのではと思われたり、そういう答えを求められたりしましたが、実は全くそういうことはないんです。ただ、私の気質と言うか、登山家が「山があるから登る」というのと同じように、そこに「世界があるから出て行く」。それだけなんです。

1つのところに収まらずに、開かれたところに出てゆきたいという性格なので、演劇をするなら世界に出てゆきたいと、初めから強く思っていました。その考えに賛同してくれたのがオーハシヨースケで、海外に行くんならパリに行きたい!ってことになったんです。

私たちは、もともとはシェイクスピアなどの台詞劇もやっていた演劇畑出身なんです。でも、そういうのだと大掛かりなセットが必要で、世界各国を廻るには荷物が多すぎるでしょ。勿論、言葉の問題もあります。だから、新しくどこにでもすぐに行けるものを作ろうということになったんです。

そこで、舞踏やパントマイムなどの異分野の方々とコラボレートしながら、ボディーランゲージを中心としたフィジカルシアターで東京を拠点として関西や北関東を中心に日本を廻りました。そうやってゆく中で、舞台美術もトランク1つに収まるように余分なものをどんどんと削ぎ落とし、必要最小限で最大限の効果を生み出す実験を繰り返していったんです。

そうして2年経った時、これなら行ける!という確信が出てきました。そこで、公演をする場所を探していたら、パリの日本語学校のギャラリーで企画を募集していたんです。早速応募したら企画が通ったのでパリに出向いき、路上などでパフォーマンスをして宣伝をしました。初めてのパリ公演でしたが、多くの方が集まってくれて大好評でした。

その公演を観てくれていた方が、終演後に楽屋に訪ねてきてくださって、「劇場ディレクターを紹介したい」と言ってくれたんです。勿論、1回きりの記念公演で済ませるつもりなんてありませんでしたから、早速劇場ディレクターにお会いして、パリ200年祭に出演することが決まったんです。これが、私たちの20年以上続く海外公演の幕開けになりました。

Q・“祈り”という理念に辿り着くには、何かきっかけがあったんですか?

モリムラ: これも、演劇を始める時点ですでに私の中にあったものなんです。私は無宗教ですが、必ずどこかに神様がいる、という想いは子どもの頃から持っていました。それは一人に一人ずついるかもしれないし、もっと大きな存在かもしれない、でも、きっとどこかで神様が見ていてくれている。そう思うんです。

そして芸術というのは、目に見えないものを見えるようにするもので、作品というのは、目には見えない普遍的な神様にささげるものだと思っています。演劇というものは、歴史をたどってゆけば神に祈る行為から生まれたものですし、その“神に祈る”という行為は、言い換えれば“人の幸せを祈る”という行為だと思うんです。

このことを、「はじめの芸術」と私たちは言っています。そして、私たちは「はじめの芸術」を通して人々の愛の心を活性化させてゆきたい、それがもともとの原点にあるんです。

20年前、始めたばかりの頃は、正直言って奇異の目で見られました。バブル真っ只中の頃には、「愛の心」なんて言っても理解してもらえなくて、もっと社会に対するアンチテーゼを唱えてもらえないと記事にならない、なんて言われたりもしました。でも、本当にアンチなんてなくて、ただただ祈りの気持ちだけしかなかったので、海外でどれだけ受け入れられたとしても、日本で理解してもらうのには本当に苦労しました。

Q・ ヨーロッパから中東など、さまざまな国に行っていらっしゃいますが、どうやって公演地を選んでいるんですか?

モリムラ: 行く国は自分たちで決めてはいません。私たちの舞台を観た人が、必ず次の国を紹介してくれるんです。縁のあるところに引き寄せられる感じなんです。終演後に、クロアチアの女優さんが訪ねてきて、「あなたたちはサラエボに行くべきだ」と熱く語られて、内戦の間でも続けられた「メス・サラエボ演劇祭」に参加させてもらったりもしました。劇場には、あえて内戦時の弾丸の後も残されているような場所でした。何故か、悲しみの歴史が深いところに導かれているような気がします。

ただし、決して無計画ではないんですよ。行くとなったら、とことん計画を立てて、完璧なまでに準備をして出かけます。ただし、公演をするにあたっては全くの無計算です。無計画と無計算は違うんですよね。

私たちの公演では、人間の持つ「気エネルギー」というものを大切にしているんです。「気エネルギー」というのは、死んだ身体からは決して出てこない、生きた動物体からのみ発せられるもので、感情よりももっともっと奥にあるものなんです。単純な例をあげれば、人と話していても「あれ?この人言っている事と思っていることが違うんじゃないかしら?」なんて思う瞬間ってあるでしょ。あれは気のせいでもなんでもなくて、その人の「気エネルギー」のせいなんですよ。

怒っている人からは、どす黒いエネルギーが発せられているし、笑っている人からは、明るい色のエネルギーが発せられているんです。そして、この「気エネルギー」を舞台に取り込むことで、お客さんと感情よりももっと深い部分でダイレクトに交流が出来るんです。

ただし、何か含みがあったり欲があったりすると絶対に駄目なんです。自分たちを真っ白な状態にまで持っていかないと、奥底から祈りとしての作品をささげることは出来ないし、「気エネルギー」なんてものも取り込むことが出来ません。だから、徹底的に準備し、計画を立て、無計算で舞台に臨むんです。

昔、第三舞台の鴻上尚史さんに「聖地なき巡礼だ」と言われたことがありますが、まさにその通りなんでしょうね。私たちはたった4人のメンバーですが、自分たちのポリシーを崩すことなく祈り続けてきたからこそ、多くの国の方々に共鳴共感していただき、いろいろな国に出向き、さらに新しい作品を生み出し、今もなお活動を続けていられるのだと思います。

Q・世界を巡り、日本に帰ってきたときに何か感じることはありますか?

オーハシ: 先日、モントリオールから帰ってきて思ったんですけど、日本には幸福感の薄さを感じるんです。右脳と左脳のバランスが悪いというか、ふと立ち止まって空を見上げたり、1つのものを大切に使ったり、そういう感覚がなくなってきているように思いますね。

本当の豊かさや美しさを忘れかけているような、人が大切にしなければいけないものの軸がずれてしまっているように感じます。今までが、不安をあおれば人が集まる、というマスコミの戦略の悪いところに乗せられてしまう部分が多かったのかもしれません。

ただ、僕は日本の高校生に芝居を教えたりもしているんですけど、「愛」「祈り」という僕たちのメッセージをとてもまっすぐに受け止めてくれているように感じるんです。大人たちも、徐々に僕たちの言っていることを理解してくれるようになってきました。昔は全く受け入れられなかった「愛の心を活性化したい」という話も、ただ聞いてくれるだけでなく、賛同してくださる方が増えてきているんです。

バブルの時代、そしてバブルがはじけて何かに熱くなることを馬鹿にするような時代を経て、今ようやく大切なものをもう一度取り戻そうという動きになってきているのかもしれません。

20年以上活動をしてきて、今までは日本のマスコミで取り上げられることは少なかったのですが、今年に入ってからは、NHKラジオ放送で4夜連続で僕たちを取り上げていただいたり、取材の依頼を頂くことが多くなってきました。先ほどお話したように、悲しみの深いところに導かれているということから考えると、日本が僕たちを呼んでいるようなそんな気がしてならないです。

勿論、今までも年に1回は日本での公演をしてきましたが、これからも日本での活動に力を注いで行きたいと思います。


人を包み込んでくれるようなモリムラさんの不思議なオーラと、どこまでもまっすぐで澄んだ瞳をしているオーハシさん。お二人と話していると、何だか緊張がほぐれて、心が癒されてゆくような感覚になりました。

人類の歴史と共に発展してきた演劇という芸術の原点に戻り、それを貫き通す強い心と、人々の幸せを祈り続ける清らかな心。これが、TAICHI-KIKAKUが全世界から求められる所以なのでしょう。


☆★☆★ TAICHI-KIKAKU 公演・ワークショップ情報 ★☆★☆

●金色の魚 〜輪廻〜
2006年12月〜2007年3月 NIPPON shinjuku
月1か2 なんとかなるさロングラン公演

会場:新宿 タイニイアリス

●2006年夏の身体詩ワークショップ 開催中
あなたはパフォーマンスをみているだけですか?
僕はこう考えます あなたの人生の主役は 他のだれでもない「あなた」なんだと

  ヨガやウォーキングのようにパフォーマンスもプロになるためだけではなく、
  自分の人生を彩るものとしてとり入れてみたい。

  他者とのコミュニケーションの中で自己表現力や
  自分をアピールさせる力をUPさせたい!!

  こんなよこしまな時代を生きてゆくために
  もっと右脳とイマジネーションを活性化させたい!!

そう考えている方のために、世界20ヶ国以上で公演を続け、エジプト政府主催のカイロ国際実験演劇祭で参加38ヶ国の中から最優秀男優賞を受賞したTAICHI-KIKAKUのオーハシヨースケが特別にプログラムした身体詩ワークショップです。

このプログラムは、すでにフランス・パリ(パリ日本文化会館)や、イギリス、ベルギーなどでも開講され大好評を得ています。初心者も大歓迎です。

日程:7月1、8、15、22、29 毎週土曜日夜 時間 19:15〜21:00くらいまで会場:新中野にある地域センターを使用(東京メトロ・丸の内線 新中野)

  全ての詳細はホームページにて
   >>>http://www2u.biglobe.ne.jp/~TAICHI-K/homepage.htm

(構成/文・O)2006/6/26